みなさんは、自宅や外出先で転倒して大けがをしそうになった経験はありますか?厚生労働省の調査によると、高齢者が不慮の事故で無くなる原因で最も多いのは「転倒・転落」で令和元年の死亡者数は8,774人にものぼるそうです。この数は交通事故の死亡者数の3倍以上であることからも、暮らしの中での転倒の危険性が多く潜んでいることがわかります。
では、自宅の中でどのような場所での事故が多いでしょうか?転倒事故が多く発生しやすい場所としては「浴室・脱衣所、居間・寝室、玄関、階段など」でした。住み慣れた自宅でもちょっとした不注意で大けがになることがあります。
この記事では、自宅環境で転倒を予防するために気を付けてほしい5つのポイントを紹介します。
出所)消費者庁
この記事の目次
自宅環境のポイントその1:転倒しやすい場所をさがして、転倒予防の工夫をする。
住み慣れた自宅だからこそ、ふとした不注意で事故につながる危険性が数多くあります。自分が気づかないうちに、筋力やバランス能力が低下していることをしっかりと理解して、事故を未然に防ぐ対策をしましょう!
高齢者の転倒は、骨折により寝たきりになってしまう場合もあります。転倒を未然に防止するためにも、この機会に自宅のどの場所に転倒の危険が潜んでいるかを見直してみましょう!
<浴室・脱衣所>
- 着替えるときは、立ったままだと、バランスを崩したり、服が足に引っかかるなどで転倒する危険があります。椅子に座って着替えると良いでしょう。
- 床材は滑りにくい素材になっていますか?
もし、滑りやすい場合は床材を変更するか、滑り止めのマットを敷きましょう。
- 浴槽の出入りの際は特に注意が必要です。手すりを付けるなどして転倒を予防しましょう。
<居間>
- カーペットに引っかかってしまい、つまずかないように、めくれやすいカーペットの下には滑り止めを敷きましょう。
- 床に物が置かれていると、踏むなどして転倒の危険がありますので、できるだけ床に物を置かないようにしましょう。
- コードなどの配線は壁ぎわにまとめるなどして、歩く導線上にコードが横切らないようにしましょう。
<階段・廊下>
- 手すりを付けましょう。
- 家の中では滑りやすい靴下やスリッパを使用するのは控えましょう。
- 階段に滑り止めを付けましょう。
- 足元がよく見えるように照明を明るくしましょう。
このように、意外と自宅にも転倒の危険がある場所が数多くあります。少しの工夫で大きな事故を未然に防ぐこともできますので、自分の自宅のリスクチェックから始めてみましょう。
手すり設置や段差解消は場合によっては高額となってしまいますが、カーペットの固定や人感センサーの照明は比較的安価で準備することができます。
実際に転倒の恐怖を感じない人にとっては変化が分からない程度のものですが、簡単に取り組めるものとして実践してみましょう。
自宅環境のポイントその2:生活しやすい導線をつくる
家具や物置の位置を変更することでも、体への負担を軽減させることができます。
自宅内での体への負担は、普段何気なく使っている家具や物置による影響を大きく受けます。当たり前に使用しているためになかなか不便だと気付かず、気付いたとしても変えることの負担を考えて我慢しながら使い続けているケースも多くあります。また、「昔から同じ場所に置いているから」という理由だけで変更がなされていないこともあります。
具体的に、自宅環境で注意してほしいポイントをご紹介します。
- よく使う衣類や食器の収納場所は立ちしゃがみをしなくても出し入れできる場所を選びましょう。
- 低すぎず、高すぎず、目線の高さにある収納スペースを増しましょう。
- 使っていない家具や物置の処分を検討しましょう。
生活のなかでの体への負担を軽減させることができれば、予防のための運動など他の身体活動を行う余力を作ることができます。
体を動かすことと体に負担をかけることは分けて考えることが重要です。
さらに、家具の移動や処分は人手が必要です。地方自治体に問い合わせてみると、安価で請け負ってくれる業者を紹介してくれることもあります。
自宅環境のポイントその3:あえて不便も残す
意外かもしれませんが、階段や段差といった不便が自宅にあることで、高齢者が筋力を維持できている場合もあります。
これまでお伝えしたことと矛盾するかもしれませんが、自宅内を完全に安全にするのではなく、危険性が低く、体にとって負担になっていない程度に自宅の不便があることで、筋力などの身体機能の維持を図ることに繋がることがあります。
自宅から出ると多くの段差や平たんではない道などに遭遇することもあるので、自宅内を完全にフラットにするのではなく、少々の不便があることが介護予防の運動になる場合もあります。
では、どのように自宅内の不便を活用すればよいのでしょうか?
- 毎日階段を昇り降りすることで下半身の筋力を鍛えている
- 洗濯物を干す際に上の方に手を伸ばすことが体のストレッチになっている
もちろん、段差や階段をなくしたバリアフリーによって動きが行いやすくなり、それによって身体活動量が高まることも多いものです。
自宅環境のポイントその4:食事や水分補給は行いやすく
介護が必要な状態にある高齢者が陥りやすいのは栄養不足や栄養バランスの悪化、水分補給の問題です。
特に一人暮らしの高齢者の場合には、食事を自分で準備することが難しくなったり、準備しても食卓まで運ぶことが難しくなっていることがあります。
また、自宅内で歩くことが難しいために冷蔵庫まで行くことを控え、水分補給が十分でない場合もあります。食事と水分補給が整っていないと運動を満足にすることはできません。
栄養は運動と同じくらい体を作るためには重要な要素になってきます。
特に注意したいのが「低栄養」といわれる状態です。
加齢に伴い「胃腸などの内臓機能の低下」「嚙む力や飲み込む力の衰え」などが原因となり、必要なエネルギーの摂取量が足りない状態になってしまいます。
「低栄養」によって起こる代表的な症状を紹介します。
少しでも当てはまる項目があれば改善の対策を行いましょう!
- 体重が減った
- 筋肉量が落ちて転びやすくなった
- 疲れやすく元気がない
- 風邪などにかかりやすく、治りにくい
- けがの傷が治りにくい
- 食事を残すことが増えた
高齢者の低栄養を予防改善するための方法として重要なのは、バランスの取れた栄養を摂取することになります。エネルギーとなる主食や筋肉の栄養になるたんぱく質(肉、魚、豆腐など)、ビタミン・ミネラルとしてのサラダ(温野菜)、カルシウムとして乳製品や小魚など栄養が偏らないように、食事に上手に取り入れていくとよいでしょう。
朝食を面倒なのでパンだけですませるのではなく、目玉焼きやチーズを加えたり、牛乳をプラスするなど普段の食事に足りない栄養素を加えていくだけでも効果が期待できます。
どうしても準備が大変という方には、高齢者向けの宅配弁当もあるので、低栄養になる前に宅配弁当などを活用することもおすすめです。
自宅環境のポイントその5:自宅内の明るさの確認をしましょう
年齢とともに筋力だけでなく視力も低下してくるため、年齢に合わせた部屋の明るさ(必要照度)の設定が必要になってきます。
一般的に必要な照度として
40代 → 400ルクス
50代 → 500ルクス
60代 → 600ルクス
80代 → 800ルクス
上記のような照度が必要になります。
勉強や読書をするのに適した明るさが500~1000ルクスといわれていますので、明るい勉強机の明るさが高齢者に最適な明るさのイメージになります。
高齢者が長年暮らしている自宅では、日光があまり室内に入り込まなかったり、物が多すぎて光を遮断していたりすることが少なくありません。
そのため、部屋の行き来をすると極端に暗い空間に入り込んだような状態になることがあります。
高齢者ではこのような空間に入るとしばらく周囲が見えにくい状況になってしまうため、少しでも光を取り入れておくことが大切です。
一方、極端に明るい空間ではまぶしさによって不快感を生じてしまいます。
真っ白でぴかぴかとしたライトを使うのではなく、あたたかみがあるような色を選ぶなどの工夫をしましょう。
おわりに
この記事では、自宅環境で気を付けたい5つのポイントを紹介しました。自宅環境は介護を必要とする前からこれらを意識してみてもよいのかもしれませんね。
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この記事の監修
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