目次

軽度認知症⑤軽度認知症MCIのうちにできること

軽度認知症⑤軽度認知症MCIのうちにできること

認知症には誰もなりたくないものです。

しかし認知症になる原因や過程は様々で、予防や治療の手段は確立されていません。
現在研究が進み、軽度認知症の段階で進行を食い止められる可能性があることが分かってきました。

軽度認知症のうちに対策をとることで、今後認知症に進行した場合でもより良い生活を送れるようにしていくことができます。

自分や家族が軽度認知症と診断された時、認知症になる前にできる対策をお伝えします。

この記事の目次

1. 持病や生活習慣に向きあう

以前「認知症MCIになる前におこる事」で基礎疾患が認知症発症リスクを高める事をお伝えしました。

認知症の原因になる糖尿病・高血圧・高脂血症等の治療を行うことが大切です。
また生活習慣を見直すことで、認知症リスクを下げることができます。
飲酒・喫煙・睡眠不足・食生活を見直しましょう。

肥満は数多くの疾患の増悪因子となりますので、適度な運動をこころがけるのも大切です。ストレス原因を見直し改善を図り、日々できるだけ穏やかに過ごせるようにするのが良いでしょう。

2. 生活環境を整える

介護費用、家

高齢になると、様々な環境の変化に適応する能力は低下していきます。

環境適応能力は低下すると、軽度認知症から認知症へ進行するリスクは高くなります。

そのため、転居等の自身を取り巻く環境が大きく変化する場面は、負担になることがあります。

できるだけ自分が長く過ごす環境をあらかじめ選択しておき、変化が起きても適応できる範囲に収まるよう環境を整えておくのが望ましいです。人生の変化は意図しない時におこる事があり、やむを得ない場合もあります。

今後の生活を長期的な視点で考え、どう過ごすかを交通手段や買い物に行くこと等現実的な手段を踏まえて計画していくのが良いでしょう。

住む場所だけではなく、住環境の内容も整理しておく事をお勧めします。

住環境で気をつける点を例に挙げると以下のようなものがあります。

台所の場合

  • 火の元栓の位置と、事故が起きた際、スムーズに自力で開閉できるかどうか
  • 火が消えた時やガスが漏れた時に自動的に検知できるか
  • 棚に手が届きやすいか、物が落ちてくることが無いか
  • 包丁等刃物の管理場所は適切か

風呂・トイレの場合

  • 段差の高さは適切か
  • 便座に座った後立ち上がる際に手すり等はあるか、手すりの位置は適切か
  • 浴槽は跨ぎやすい高さか、浴槽から出る際に不都合は無いか

家の中で障害になりそうな物を整理し、何を導入すべきか、変更するべき点は何かを考慮し、それに慣れるようにしていくと良いでしょう。

例えば、ガスコンロを事故になるリスクが低い、火の始末等管理が簡単な器具に変更するとします。

IHコンロ

IHコンロ

火を使用しないので、消し忘れ防止や引火防止に優れています。清掃も簡単な場合が多いです。鍋やフライパン等はIH対応の製品を使用する必要があります。

ガスコンロ

ガスコンロ

火を使用するため、消し忘れや引火のリスクがあります。高齢者向けのガスコンロでは、自動消火等の機能・引火しにくく鍋が安定して置ける構造・使用中である事を伝える音声案内・分かりやすいカラーリングの製品があります。従来の鍋やフライパンを使用することができます。状況に合わせて選択すると良いでしょう。

コストを考慮し、何時頃、どんな種類を購入するか検討します。
使用方法と、メンテナンス方法も考慮します。実際導入した後は、使用方法に慣れる必要があります。

認知症になってから新しい使用方法を習得するのは困難ですが、使い慣れた器具であれば比較的安定して使用し続けられます。長期的に使いやすい環境に少しずつ整えていくのは、怪我や事故を防ぐ有効な手段です。

段差解消のため、玄関などにステップやスロープを設置する場合。
認知症になると、せっかく設置しても、新しく設置したステップを使おうとしなかったり、スロープの傾斜に慣れていないため、転倒してしまったりする場合があります。認知症が進行する前に設置し、利用する感覚を体で覚えている場合は認知症になっても比較的有効に使用できる場合があるので、転倒リスクが軽減されます。

3. ITに慣れる

スマホ操作

現在のIT分野の発展には目を見張るものがあります。その進化は生活の中にも及んでおり、認知症対策にも大きな力となっています。スマートホンやPCの操作に慣れることで、様々な機能を利用することができるようになります。

日々の生活の中での活用例

  • 買い物の際決済方法がシンプルになりお金を間違えるリスクが減る
  • 家計の収支を計算するのが簡単になる
  • 交通手段を利用する際アプリでの決済可能なため、乗り換えなどの際複雑な支払いをしなくて良い
  • 検索機能により新しい情報に触れやすくなる
  • ネット上で買いものができ、配達ボックス等を活用することで、受け取りのタイミングが調整できる
  • ヘルパー等の導入と併用することで、食材等の必要な物資を受け取りやすくなる
  • 情報伝達か簡単になって、連絡が取りやすい
  • カメラツールを駆使すると、健康状態の管理や見守りがしやすい
  • オンライン受診なども拡大しているので、外出することなく受診できるので、医師に相談しやすい
  • 位置情報ツールの活用の活用により、貴重品の紛失や徘徊による行方不明を防ぐ事ができる

位置情報ツールとは、スマホやパソコンなどの端末を利用し、人や車の位置情報を把握できるシステムのことです。様々な業務の効率化に活用されています。認知症による徘徊を防ぐためにも活用されるようになってきました。最近は小型化が進み、キーホルダー型だけでなく、靴に埋め込む事もできるようになってきました。
各携帯電話会社で取り扱っています。

単に紛失を防ぎたい場合は、紛失防止タグを利用することができます。キーファインダー、スマートタグ等と呼ばれることもあります。キーホルダー型、カード型、シールのように貼り付けるものがあります。大切な物に取り付けてスマホと連携し音を出したり、接続が途切れた場所を記録したりできます。置き忘れの防止や探し物に役立ちますので。家の鍵や、貴重品に取り付けておくのをお勧めします。

4. 楽しめる事を増やす

施設の仲間とゲームをする

楽しいと感じられる活動をすることでストレスを減少させ、活動性を高めることにより、認知症へ進行するリスクを低下させることができます。自分が楽しいと感じられる活動を探してみると良いでしょう。

ボードゲーム(麻雀将棋チェス等) 

一部のボードゲームには認知機能を改善する効果があると言われています。相手の動きを予測する高度な思考や、指先を使う感覚が求められるためです。

現在はネットを通じて自宅でも、世界中の人々と対戦することができるようになってきたため、身近に相手が居なくても行うことができます。

音楽活動

楽器の演奏や、歌を歌う活動は認知機能を改善する効果があります。音楽を聴くことに併せて体を動かす・声を出して歌う等の、音に合わせて動く行為がより効果的という研究結果が報告されています。演奏会や合唱等に興味がある方は、グループ活動に参加すると良いでしょう。

絵をかく、書道を行う

創作活動を行うことは、記憶機能や実行機能等の脳の働きを活性化させ認知機能を改善する効果があります。鑑賞を行い、教室に参加し、他の参加者と話し合うことでより効果が高まることが分かってきました。

体を動かす

運動不足な人は少しずつ体を動かすようにすると良いです。今まで運動習慣が無かった人はなかなか習慣になりにくいものです。そのため、自分の好きな事を関係づけるのが良いでしょう。絵が好きな人は絵の教室に通うために、少し歩いて通ってみるといった事や、買い物に出かける時に少し歩くルートを変える等といった事から始めても良いかもしれません。

思い切ってジムに通ってみると、自分の身体の傾向(筋肉量やおすすめの運動など)を知ることができます。

5. 利用できるケアを探す

ケアプラン、訪問看護、リハビリテーション、介護保険、要支援、要介護、介護福祉士、デイサービス、ケアマネージャー

介護予防や認知症予防を目的とした社会資源を活用するため、介護保険制度を活用するとよいでしょう。介護保険制度は各市区町村に窓口がありますので、気軽に相談してみることをお勧めします。

要介護認定を受けていない方でも受けられるサービスがありますので、お近くの地域包括センターへ相談するのが良いでしょう。地域包括センターが分からない場合は、お住まいの市区町村に相談窓口が設置されています。

6. まとめ

自分の特性を理解し、対策を取ることで軽度認知症と診断された後でも、認知症へと進行することを食い止めたり、今までの生活を維持することができたりします。

自分の特性を整理し、どう生活したいか考えることで、どのように対策するかが見えてきます。

旅行に行きたい、体力をつけたい。のんびりしたい等漠然とした事でもかまいません。楽しく過ごすために何が必要かを考えることが、軽度認知症の対策になっていきます。楽しい体験は生きるための力になります。この記事がその手がかりになると幸いです。

参考文献
◆「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
◆「認知症高齢者ケアにおける生活安定の変容過程に関わるなじみの検討」 浪花美穂子
◆「認知症高齢者の自己効力感が高まる過程の分析とその支援」畑野相子 筒井裕子
◆「認知症に対する運動および身体活動の効果」長屋政博

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この記事を書いた人

内田好音

<プロフィール>

介護福祉士5年、看護師9年。

整形外科急性期、回復期病棟、療養病棟を経験。

認知症高齢者や障害児者のケアを通じ、生活に根差したケアの大切さを知る。

自分も癌になった経験から心と体両方のケアを行いたいと思っている。

現在は認知症ケアと障害児の生活援助についての活動を行っている。

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