目次

看護師が解説!心筋梗塞②急性心筋梗塞の原因と対処方法

この記事では心筋梗塞が起こる原因、そして対処方法についてわかりやすくお話しています。

原因を理解し、同時に対処方法についても一緒に学んでいきましょう。そうすることで心筋梗塞の予防となります。

この記事の目次

1.心筋梗塞ってどんな状態?

心筋梗塞はどんな症状?

心筋梗塞とはどんな状態でしょうか?
1記事目を簡単に振り返ってみますと、一言でいうと、

心臓に酸素を送る血管が詰まり、心筋が壊死する病気」と言えます。

心臓の周りを囲っている「冠動脈」という太い血管を通して心臓に酸素を送り、心臓は動いています。
冠動脈が詰まってしまうと、酸素が急激に途絶えてしまい、心臓を動かしている心筋が壊死(一部が死んでしまう)する病気です。

この冠動脈と呼ばれる血管が完全に塞がってしまうと、心筋梗塞となります。
では、なぜ塞がってしまうのでしょう?

2.なぜ冠動脈が塞がるの

冠動脈

さきほど冠動脈が完全に塞がってしまう状態が心筋梗塞となるとお伝えしました。

では、冠動脈はどうなると塞がってしまうのでしょう?冠動脈は太い血管です。
ホースを想像してもらうとイメージしやすいでしょう

血管は本来やわらかくてしなやかな状態です。しかし様々な原因で、硬くなったり、弾力がなくなったりします。

この状態を動脈硬化といいます。動脈硬化には2つのタイプがあります。

①冠動脈が狭くなる

血管の内側にコレステロール、それも悪玉コレステロール(LDLコレステロールという)が溜まることで血管の内側が物理的に狭くなります。
血液中のLDLコレステロールが多くなりすぎると、プラークとよばれるドロドロの物質になります。
このLDLコレステロールは血管の内側に入り込んでいきます。

本来体にとって不要な物質なため、体の自然な働き(免疫システム)で白血球がその不要な物質を取り除くために集まってきます。お掃除をしているようなイメージです。白血球の中に不要なコレステロールをどんどん取り込んでいきます。しかし、やがて死んでしまいドロドロの物質であるプラークの上にどんどん溜まっていき、結果、血管の中がどんどん狭くなっていきます。

これをアテローム(粥状)性動脈硬化といいます。

この状態になると、血管はとても傷つきやすい状態になっています。
そのため、血栓と呼ばれる血液の塊ができやすく、この血栓ができると、さらに血管の内側が狭くなります。

②冠動脈が固くなる

さきほどのプラークは時間が経過するとカルシウムを主な成分とする石灰に変化し、血管の内側は硬くなっていきます。この状態を石灰化といいます。血管が硬くなると、血管は伸び縮みしにくくなりしなやかさが失われ、血流によるダメージを受けやすくなります。

「心肺機能について」の記事で紹介したように、心臓は1分間に約70回動いています。1日に換算すると10万回になります。1日10万回血液を押し出し、血流を作っています。この血流によって血管の内側が傷つきます。ダメージを受けると、体は修復しようとして①で説明したように白血球が集まってくるので、プラークができやすくなります。

③動脈硬化は老化現象?

以前は、動脈硬化は“老化現象”と考えられていました。

しかし、実際は10歳代から始まり加齢により徐々に進行していき、30歳代からは進行が早くなります。
そして、生活習慣病などが要因で動脈硬化の進行は個人差がでてきます。
近年、40歳代の方での心筋梗塞のリスクは高くなってきています。

それでは動脈硬化の原因と対処方法について見ていきましょう。

3.動脈硬化の原因って?

動脈硬化の原因と対処方法、野菜を食べる、散歩、有酸素運動、バランスのいい食事

動脈硬化は「沈黙の殺人者」などと言われています。
ちょっと怖いですね。

なぜそう言われているかというと「気づきにくい」ことです。

私たちの生活の中に原因があり、気づきにくいのです。
ここでは5大原因因子をお伝えします。それが①高血圧②高脂血症③糖尿病④喫煙⑤肥満です。

多くの方がこの生活習慣を持ちながら生活されています。まず数を見ていきましょう。
厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査」の平成29年(2017年)調査によるとその数は年々上昇しています。

高血圧993万7,000人
高脂血症220万人5,000人
糖尿病1,000万人
喫煙1,400万人
肥満2,300万人

①高血圧

高血圧のほとんどが、塩分の取りすぎと言われています。

塩分が増えると、塩分濃度を一定に保つために、体は水分を溜め込もうとします。
その結果、血液の量が増え、心臓から送り出される血液は血管に高い圧をかけながら全身をめぐるため、高血圧となります。

高血圧の治療開始のガイドラインは診察室血圧140/90mmhg、家庭血圧135/85mmhgが基準となります。

血圧の正しい測り方は、ご自宅では背もたれのある椅子などで5分ほどリラックスしてから測定しましょう。
また2週間ぐらいの平均値が正しい血圧と言われています。
病院受診時など、病院へ到着してすぐ測定すると、高い値が出やすい状態です。
できるだけ自宅で血圧を測定し、病院受診時、主治医へ血圧測定の記録などを見せるとより正しい診察になるでしょう。

一番の原因は塩分過剰摂取ですので、できるだけ塩分をとらないように心がけることが必要です。
味の濃いものには多くの塩分が含まれています。
できるだけ和食中心の食事とする、濃い味のタレをつけすぎないなどがよいでしょう。

またカリウムには水分を排泄する効果がありますので、緑黄色野菜、豆類、海藻などを意識して食べられるとよいでしょう。

②脂質異常症/高脂血症

一般には高脂血症という名前が広く伝わっているかもしれませんね。2007年から脂質異常症と言われるようになっています。脂質異常症は血液検査でわかります。

  1. 高LDLコレステロール血症:LDLコレステロール≧140mg/dL
  2. 低HDLコレステロール血症:HDLコレステロール<40mg/dL
  3. 高中性脂肪血症:トリグリセライド≧150mg/dL

血管の内側に脂質がたまり動脈の壁が厚くなり、動脈硬化が進行します。
対処方法は、高血圧と重なる部分があります。

③糖尿病

糖尿病は、血糖値が高い状態が続き、血液が砂糖水のようにドロドロなります。
そして血流が悪くなり血管の内側が傷つきやすく、やがてプラークが作られ、動脈硬化へと進んでいきます。

糖尿病の方特有の注意点があります。

それは、糖尿病の合併症である”神経障害の影響で痛みを感じにくい”ということです。

糖尿病をお持ちでない方は、例えば胸の急激な痛みがあり病院受診や救急要請をする状態でも、糖尿病の方は痛みを感じにくく「無痛性心筋梗塞」となり、突然意識を失うまで心筋梗塞の状態が進みます。
そして、搬送先の病院で検査をすると冠動脈がすでに詰まっているなど、かなり進行した状態で発見されるケースがあります。

②と③に共通する対処療法としては以下になります。

<食事療法>

  • 高カロリーになりやすい外食を避ける
  • 食物繊維が多い野菜や豆類、海藻類を多く摂る
  • 脂質が多い、マヨネーズ・卵の黄卵・レバーなどを避ける

<運動療法>

運動により、血行が促進され、LDLコレステロールが減り、HDLコレステロールが増えます。
特に有酸素運動がおすすめです。
ハードな運動をする必要はなく、散歩・自転車・水中ウォーキングなどご自身が続けやすい運動を続けることが大切です。

④喫煙

国立循環器病センターでは、心臓の病気をもっていない男女40,000人に対して11年間の追跡調査を行いました。喫煙者・非喫煙者グループにわけると、喫煙者の方が男女ともに心筋梗塞発症リスクが約4倍となることがわかりました。

では、なぜ喫煙が悪いのでしょう。それはタバコの煙には、約4,000種類以上もの化学物質が含まれており、そのうち有害とわかっているものだけで200種類以上あります。
ニコチン・一酸化炭素が心臓の疾患に大きな影響があることがわかっています。

  1. ニコチン(交換神経が刺激される)
    ・血管を強力に収縮させ、血流が悪くなる
    ・心拍数があがり、心臓に負担がかかる
  2. 一酸化炭素 (タバコの煙に1〜3%含まれている)
    ・血液をドロドロに固める作用があり動脈硬化を促進させる
    ・血液の赤血球と結びつき、血液の酸素を運ぶ作用が低くなる

禁煙が簡単にできれば問題ないですが、ニコチン依存というものがあります。
ニコチンは血液から吸収されますが、ほっぺの内側からも吸収され、すぐに脳に行き届きます。
そしてドーパミンという快楽物質が出るので、また吸いたくなるという負のループが形成され、ニコチン依存の状態となりやすいのです。

禁煙外来で保険適応の薬がありますので、一度受診を検討されるのもいいと思います。

4.まとめ

今回は心筋梗塞の原因と対処方法についてお話ししました。キーワードは動脈硬化でしたね。

動脈硬化のリスクを減らすように、毎日の生活の中で食事や運動を改善することが大切です。次回は心筋梗塞の症状とその対処方法についてお伝えします。



この記事を書いた人

看護師山川さちえ

山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」

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