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看護師がわかりやすく解説! 精神疾患⑤精神疾患をもつ方とご家族の生活を支える社会資源

「社会資源」と聞くと公的なサービスをイメージされる方もいれば、利用手続きが大変ではないかと不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

多種多様な社会資源の中でまずは何が必要か、どうしたら利用できるかを知りたい方に向けてご案内します。

精神疾患をもつ方とご家族の生活を支える社会資源
この記事の目次

はじめに

前回の「精神疾患をもつ方のご家族が抱える問題と解決方法について」の記事で、精神疾患をもつ方とご家族が、現在そして将来に向け第三者の支援を受け安心した生活を送れるよう社会資源の活用をご提案しました。

具体的に、社会資源にはどのような種類があり、利用するにはどこに相談したらよいのか、どんなサービスが暮らしに必要なのか等の疑問があるのではないでしょうか。

この記事ではそのような疑問を解消し、精神疾患をもつ方とご家族がご家庭や社会の生活において必要な支援が受けられるようにご説明します。

社会資源の活用

「社会資源」とは、精神疾患をもつ方やご家族が、生活の中で望むことを満たしたり、困りごとを解決したりするために活用できる制度や施設、お金、情報、人などを総称しています。

精神疾患をもつ方を支援する社会資源の中から、今回は代表的なものを、医療・経済・福祉・就労の4つの利用目的に分けてご紹介します。

精神疾患をもつ方とご家族の生活を支える社会資源

医療の支援

①自立支援医療(精神通院)制度

精神疾患は再発を予防するためにも、通院による精神療法や薬物療法を継続的に受けることが必要です。

医療費の負担を減らし、継続的な通院治療を受けるための制度です。

【制度の内容】

・保険診療に関わる自己負担が原則1割
・所得・疾患等に応じて月額上限が設定

【申請方法】

診断書(精神医療を行う主治医に書いてもらう)、保険証、申請書等を揃えて提出

※詳しくは受診している病院や、お住まいの地域の役所に確認してください

【申請場所】

役所の保健福祉課等

【有効期限】

・1年(2年に1回診断書の提出が必要)

②自立支援医療制度で利用できるサービス(自己負担が1割で利用可能)

健康状態の把握、家族支援、自立支援、再入院予防をする為のサービスです。

・外来診察
・お薬代
・訪問看護
・デイケア

③医療の場で相談できる人

医療の場には医師や看護師、薬剤師、作業療法士、理学療法士のほかに、精神科ソーシャルワーカーやカウンセラーを配置している病院やクリニックがあります。

精神科ソーシャルワーカーは精神疾患をもつ方が適切な治療を受けられるよう相談に応じたり、精神科医療に関する情報提供を行ったりしています。

カウンセラーは精神疾患をもつ方に1回30分~1時間のカウンセリングを行っています。

経済の支援 

①障害年金

心や体の病気やけがのために、長期間十分に働けないような場合に、その方の日常生活を支援するための社会保障制度です。

就労支援施設等を利用しながら、症状に配慮を受けながら働ける、障害者雇用等での就職することができれば、給与と障害年金で生活を送ることも可能です。

【申請窓口】

※初診日(病気やケガで初めて医師の診断を受けた日)に加入していた年金制度により変わります

・国民年金加入者・・・役所の国民年金課等

・厚生年金加入者・・・年金事務所

【年金の額】

障害基礎年金 ※令和5年

1級 993,750円/年
2級 795,000円/年

障害厚生年金  

障害基礎年金に上乗せして年金をもらうことができます。
年金額は給料や加入期間を基準として計算されます。

【相談窓口】

各申請窓口や、精神科ソーシャルワーカー、生活支援相談員に相談することができます。

②生活保護

憲法第25条に基づき、高齢、病気、離婚や失業など様々な事情で生活が困窮した場合に、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、自立を支援する制度です。

生活保護は精神疾患をもつ方も利用できます。働く意欲があっても働けない場合、収入が得られず生活が苦しくなります。生活が困った時に最低限の生活を保障し、自立した生活を援助します。

生活保護の受給中でも障害年金を申請することは可能です。障害年金は収入に該当するため、生活保護費から受け取った障害年金の額が差し引かれて支給されます。

【申請窓口】

役所の生活保護課や生活支援課

※原則として生活をともにしている世帯を単位としての利用となります

【相談窓口】

相談は福祉事務所のケースワーカーにします。詳しくは厚生労働省HP「生活保護を申請したい方へ」をご覧ください。申請が受理され、生活保護を受給するようになると、担当のケースワーカーがつきます。

福祉の支援

①精神障害者保健福祉手帳

精神障害のための日常生活または社会生活に困難が生じている方が、一定の障害があることを証明するものです。

精神疾患をもつ方の自立と社会への参加を促進するための支援策が用意されています。

【利用できるサービス】

1級2級3級
所得税、住民税、相続税の控除
重度障害者医療制度×
タクシー利用または燃料費補助×
公的施設などの利用料免除

障害の等級により控除額や補助の額が変わります。

税金の控除については国税庁HPの障害者と税を参照してください。

補助の内容や利用できるサービスについては役所の保健福祉課や各交通機関、施設でご確認ください。

【申請方法】

診断書(作成所は精神障害に係る初診日から6か月経過している必要があります)もしくは、障害年金証書、申請書等をそろえて提出

【申請場所】

役所の保健福祉課等

【有効期限】

2年

精神疾患をもつ方とご家族の生活を支える社会資源

②障害福祉サービス

国では、障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指しており、障害をもつ方の自立と社会参加の促進を図っています。

自立と社会参加の促進のための支援の1つが障害福祉サービスです。

障害福祉サービスは、障害のある方の支援などについて定めた法律である「障害者総合支援法」に基づいて提供されるサービスです。

障害福祉サービスには日常生活に必要な介護の提供をする「介護給付」と日常生活や社会生活を営むために必要な訓練などの支援を提供する「訓練等給付」の2種類が中心となります。

介護給付

・居宅介護:家事支援、通院等介助

・短期入所

訓練等給付 

・自立訓練

・就労移行支援

・就労定着支援

・就労継続支援(A型・B型)

・共同生活支援(グループホーム)

障害福祉サービス利用までの流れ

福祉サービスの申請は役所の窓口で行いますが、様々な種類があり申請手続きも複雑です。ひとりで進めるには難しい場面もあると思います。そのような時に活用できるのが「相談支援事業所」です。

相談支援事業所では障害についての困りごとや障害福祉サービスについての相談をすることができます。

ここでは相談支援事業所に相談をする場合も合わせて、利用までの流れをご紹介します。

STEP
相談・申請

役所や相談支援事業所に相談します。
利用したいサービスが決まったら、役所の福祉担当窓口にサービスの利用申請をします。

STEP
サービス等利用計画案の作成と提出

計画案は利用する本人が作成することもできますが、作成が難しい場合は、指定相談支援事業所に作成を依頼するのが一般的です。

作成できたら、申請をした役所の窓口に提出します。

STEP
障害支援区分の認定

サービス利用のために認定調査員が必要な調査(心身の状況や介護者の状況、日中の生活状況、居住について)を行います。

STEP
支給決定・受給者証の交付

役所はサービス等利用計画案などを踏まえてサービスの支給量等を決定し、申請者に通知します。

STEP
サービス等利用計画の作成

決定した内容に基づき、サービス等利用計画を作成し役所に提出します。

STEP
事業所と契約後、サービス利用開始

利用したいサービスを提供する事業所を選んで、サービス利用契約を行います。

【申請に必要な書類】

印鑑、申請者の氏名や住所が確認できるもの、身体障害者手帳、医師の診断書もしくは意見書

③相談支援事業所について

相談支援事業所には「一般相談支援事業所」と「特定相談支援事業所」があります。

福祉サービスを利用するにはサービス利用等計画案の作成が必要なため、特定相談支援事業所を利用します。

利用するサービスで悩んでいる方は一般相談支援事業所へ相談することをお勧めします。

相談支援事業所の利用は役所の福祉窓口へのお問い合わせください。

精神疾患をもつ方とご家族の生活を支える社会資源

就労の支援

精神疾患をもつ方が、その個性に応じて誇りと生きがいをもって働き、社会的・経済的自立を果たし、豊かな地域生活が送れるよう支援します。

ハローワーク

たくさんの障害者雇用の求人があり希望や条件にあったものを見つけやすく、適正な職のアドバイスも受けられます。

雇用者への理解の促しや、雇用者との窓口にもなっています。

地域障害者職業センター

就業相談・職業能力評価に基づき、就労までの支援及び就労後のフォローを受けられます

障害者能力開発校

職業に必要な基礎知識と技術取得のための職業訓練を受けられます。

その他就労支援

障害者就業・生活支援センター、在宅支援団体などがあります。

詳しくは厚生労働省HP「障害者の方への施策」mhiw.go.jpをご覧ください。

ご家族が利用する社会資源

ここまでご紹介した医療、経済、福祉、就労についてはそれぞれの場所で、ご家族が相談することも勿論可能です。

ご家族の困りごとや悩みを、役所や病院、訪問看護、相談支援事業所、利用している福祉サービスの事業所などに相談していただくことで、必要な提案やアドバイスをすることが可能です。

ご家族が集まりご自身の体験や気持ちを共有するために家族会、コミュニティサイトがあります。探し方はインターネットで検索する方法が主流となっています(「お住いの都道府県 家族会」で検索してください)。もしご自身で調べることが難しければ、お住いの地域にある保健所に電話で確認することも1つの方法です。

前回投稿した「精神疾患をもつ方のご家族が抱える問題と解決方法について」の中で、精神疾患をもつ方の治療や生活の支援は第三者である専門職に任せ、ご家族は最も身近な協力者であると割り切ることも必要です、とお伝えしました。

第三者の支援を受けることは、ご家族の苦しい気持ちを楽にし、ご家族の体の負担を減らすことや、ゆとりをもつことにつながります。

精神疾患をもつ方とご家族の生活を支える社会資源

おわりに

精神疾患をもつ方が安心して受診・治療継続、社会参加が可能なように、様々な社会資源が用意されています。

その社会資源を、精神疾患をもつ方の悩みや困りごとに合わせて提案や支援を受けられるよう、第三者に相談をすることをお勧めします。

今回ご紹介した医療や福祉のサービスにはそれぞれ特徴や特色があります。

詳しくはお住いの地域の役所や、受診先の病院、もしくは相談室や福祉サービスの事業所でご確認をお願いします。

精神疾患をもつ方とご家族が社会の中で安心して暮らすために、社会資源を積極的に利用しましょう。


この記事を書いた人

清水明日香 プロフィール 看護師経験23年。総合病院(消化器外科・内科、整形外科)、リハビリテーション病院(地域包括支援病棟)、老人施設で勤務。 現在は精神科訪問看護師として月に約100件の訪問をしている。 精神科訪問看護では、薬物療法などの治療が継続して受けられるようにする支援、ご利用者様やご家族の悩みや困りごとを一緒に明確にし、解決する方法を考え、行動できるように支援している。 ウェルネスナースとして女性が健康でいるための情報を発信している。 執筆・講座 「いつも疲れを感じている40代女性がセルフケアを身につけ元気を取り戻すためのお話会」/ウェルネス講座 「自分で心とからだを元気にするためのブログ」/note

清水明日香

プロフィール

看護師経験23年。総合病院(消化器外科・内科、整形外科)、リハビリテーション病院(地域包括支援病棟)、老人施設で勤務。

現在は精神科訪問看護師として月に約100件の訪問をしている。

精神科訪問看護では、薬物療法などの治療が継続して受けられるようにする支援、ご利用者様やご家族の悩みや困りごとを一緒に明確にし、解決する方法を考え、行動できるように支援している。

ウェルネスナースとして女性が健康でいるための情報を発信している。

執筆・講座
「いつも疲れを感じている40代女性がセルフケアを身につけ元気を取り戻すためのお話会」/ウェルネス講座
「自分で心とからだを元気にするためのブログ」/note

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