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看護師が教える高齢者の食支援①高齢者の食支援とは、どんな支援?

食支援というと、食事(栄養)の支援だけと捉える方もいるかもしれませんが、食支援にはもっと奥深い意味があります。

特に高齢者の場合、生活や健康状態などを支援することから始まる場合も少なくありません。

実際に「高齢者の食支援」とはどんな支援でしょうか。

高齢者の食支援①高齢者の食支援とは、どんな支援?
この記事の目次

住まいを中心とした環境の支援

食支援は生活支援から始まる場合もあります。

食べるまでの支援:食材の調達

買物難民とは?

買い物難民という言葉があります。

買物難民とは、店舗まで500m以上かつ自動車利用困難な65歳以上の高齢者を指します。

農林水産政策研究所によれば、この定義に当てはまる買い物難民は2015年時点で全国に824万6千人。
高齢者全体に占める割合は24.6%と高く、およそ4人に1人が買い物難民に当てはまります。
10年前(2005年)の678万4千人と比較すると21.6%の増加です。

また、人口の減少や高齢化、少子化の影響を受けて路線バスなどの公共交通機関が廃止となり、自動車以外の交通手段が乏しくなっている現状の中で、高齢独居者や老夫婦世帯などが買い物など外出困難になっている状況も少なくないようです。

そういう現状を交通難民、買い物難民と呼んでいます。

あなたのまわりにいる高齢者には、食材を確保できるお店がありますか
その人はそのお店まで買い物に行けますか
そして買い物した商品を持って帰宅できる体力がありますか。

外出して買い物して、買った品物を持ち帰る。

これら一連の行為ができるためにも日ごろの食生活が大事です。

高齢者の食支援①高齢者の食支援とは、どんな支援?

欧米には「あなたはあなたの食べたものでできている」ということわざがあります。

私は訪問看護ステーションの管理者になる以前に、地元のショッピングセンターの中で「みんなの保健室わじま」という地域の保健室を開設していました。

買い物帰りに気軽に足を運べる居場所として日替わりランチも提供していました。
そして、ショッピングセンターで買い物をされた方が重い食材を購入されても安心して帰宅できるように、ご自宅までお送りするなどの工夫がされていました。

このようなスーパー等による送迎サービスだけではなく、移動販売車、乗り合いタクシー、買い物支援バスの運行など、各市町村や商店街等で様々な工夫がされています。

お店に出かけて食べたいものを探したい場合

・スーパー等による送迎サービス
・乗り合いタクシー
・買い物支援バス

買い物に行きたいけど介助が必要な場合

・訪問介護
・シルバー人材センター
・(有償)ボランティア
・便利屋

買い物に行くことが困難で誰かに届けてほしい場合

・宅配サービス
・移動販売車
・ネット販売
・配食サービス

以上のように、その人のニーズによって選択肢はたくさんあります

詳しく知りたい場合は、皆さんの地域にある「地域包括支援センター」や「社会福祉協議会」にお問い合わせください。

高齢者の食支援①高齢者の食支援とは、どんな支援?

食べるまでの支援:調理・配膳・そして食べた後の片づけ

さて、いろんな手段で食材を調達できたとして、実際に調理ができるでしょうか。

調理できれば調達してきたものを調理しておいしく食べることができますね。
調理できなければ、調理しなくてもいい買い物が多くなります。

塩分や保存料が多く使用されているお惣菜や、パン、カップラーメン、白いご飯ではなく、おにぎりやお寿司などを選ぶことが多くなります。
つまり、糖質や塩分量が多い食べ物を選びがちになるかもしれません。

健康な高齢者であっても日々の栄養管理は重要です。

最近では毎日届ける宅配弁当や、冷凍で定期便として届くお弁当などもあります。
その内容も体に優しい減塩食や低糖質、低脂肪のものも増えてきました。

また、食材を調理して盛り付けて配膳できても、食べた後の片付けをすることが難しい場合もあるかもしれません。

訪問看護の利用者さんにも、料理は好きだけど片付けられない方がいました。
後片付けをせずに放置しておくと「ゴミ屋敷」になってしまう可能性もあります。

家事代行サービスや、介護保険を申請されて要介護状態であれば訪問介護サービスなどを利用することで調理から盛り付け、後片付けまでもお願いできるかもしれません。
    
食べた後の片づけやごみ処理なども食支援として考慮すべきだと思います。

日ごろの食生活を振り返り、ご自身に何ができて何ができないか、そしてできない部分を誰に担ってもらうかを考えて、助けてもらう方法が見つかると精神的にも楽になりますね。

疾患を抱える高齢者の食支援

基本的には誰もがバランスの良い食生活が必要です。
前述のような買い物難民となり、食べたいものも食べられず低栄養に陥る高齢者もいる一方で、 外食産業やコンビニエンスストアなどが急増し、いつでも食べたいものが手に入ることから飽食の時代となり、摂取カロリーは満たされていてもたんぱく質やビタミン、ミネラルなど1部の栄養素が極端に不足して栄養失調になっている現状もあります。

その結果、5大生活習慣病(がん・糖尿病・心疾患・高血圧性疾患・脳血管疾患)にかかってしまう可能性も高くなります。
原因として、糖質が高い食事、塩分の多い食事をとる習慣が多かったり、アルコールの多飲、喫煙などがあげられます。
こういった疾患を抱える高齢者の食支援も重要な課題です。

最近では病院だけではなく地域で働く管理栄養士さんも増えてきました。
医師からの指示があれば在宅訪問栄養食事指導を受けることも可能です。
また、地域によっては「認定栄養ケア・ステーション」が開設されているところや、管理栄養士さんが在籍している調剤薬局さんやクリニックもあります。

<在宅訪問栄養指導とは>
通院などが困難な方のために、管理栄養士がご家庭に定期的に訪問し、療養上必要な栄養や食事の管理および指導を行うものです。

<認定栄養ケア・ステーションとは>
地域の皆さまが栄養ケアの支援・指導を受けることができる地域密着型の拠点として日本栄養士会から認定されている施設のことです。

まとめ

高齢者の食支援とはどんな支援なのかをお伝えしました。
食支援は食生活を整えるだけではなく、生活環境を整えることから始まります。
健康な高齢者も、疾患を持つ高齢者も、それぞれの課題がクリアできる食支援を受けられることが理想です。

次は実際に「食べたいものが食べられるお口になっているのか」を考えていきたいと思います。

<参考文献・関連リンク>
江頭 文江:訪問看護のための栄養アセスメント・食支援ガイド 
島根県歯科医師会:食支援マニュアル
新宿食支援研究会
全国食支援活動協力会 
 


この記事を書いた人

看護師 中村悦子 大学病院での勤務を経て、地元の公立病院で訪問看護に従事しながら地域医療連携室で退院調整に関わる。 病院内のNST(栄養サポートチーム)の立ち上げと同時に、能登NST研究会事務局として活動する。 その後、新設された栄養サポート室の専従看護師として、病院に通院していない住民の皆さんからも「何を食べたらいいかわからない」などの相談を受けるようになり、病院の外で気軽に集えて何でも相談できる居場所を作りたいと考え55歳で退職。 地元のショッピングセンターの中に「一般社団法人みんなの健康サロン海凪(みなぎ)」を立ち上げた。 そこでは、地域栄養ケアを学び、伝え、実践できる環境を作りたいと考え、無料相談以外に指先セルフの血液検査、ワンコインで利用できる日替わりランチを提供する「みんなのカフェわじま」、保険外サービスの訪問看護である有償ボランティアナース「キャンナスわじま」、口腔ケア製品からおむつまで「必要なものを必要なだけお届けする」物販事業などに関わる。 その後、現職場である「社会福祉法人弘和会」で「訪問看護ステーションみなぎ」の管理者となり現在に至る。 社会福祉法人弘和会  訪問看護ステーションみなぎ  管理者 コミュニティナース虹いろケア 管理者 一般社団法人 みんなの健康サロン海凪 理事   キャンナスわじま 代表 さわやか福祉財団 さわやかインストラクター 輪島鳳珠地区保護司 能登町一層協議体委員 輪島市第2層生活支援コーディネーター 介護職員のための医療的ケア研修ならびに指導看護師研修 講師

中村悦子

大学病院での勤務を経て、地元の公立病院で訪問看護に従事しながら地域医療連携室で退院調整に関わる。

病院内のNST(栄養サポートチーム)の立ち上げと同時に、能登NST研究会事務局として活動する。

その後、新設された栄養サポート室の専従看護師として、病院に通院していない住民の皆さんからも「何を食べたらいいかわからない」などの相談を受けるようになり、病院の外で気軽に集えて何でも相談できる居場所を作りたいと考え55歳で退職。

地元のショッピングセンターの中に「一般社団法人みんなの健康サロン海凪(みなぎ)」を立ち上げた。

そこでは、地域栄養ケアを学び、伝え、実践できる環境を作りたいと考え、無料相談以外に指先セルフの血液検査、ワンコインで利用できる日替わりランチを提供する「みんなのカフェわじま」、保険外サービスの訪問看護である有償ボランティアナース「キャンナスわじま」、口腔ケア製品からおむつまで「必要なものを必要なだけお届けする」物販事業などに関わる。

その後、現職場である「社会福祉法人弘和会」で「訪問看護ステーションみなぎ」の管理者となり現在に至る。

社会福祉法人弘和会 
訪問看護ステーションみなぎ  管理者
コミュニティナース虹いろケア 管理者
一般社団法人 みんなの健康サロン海凪 理事
  キャンナスわじま 代表
さわやか福祉財団 さわやかインストラクター
輪島鳳珠地区保護司
能登町一層協議体委員
輪島市第2層生活支援コーディネーター
介護職員のための医療的ケア研修ならびに指導看護師研修 講師

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