脳卒中記事シリーズ、第4回目となりました。第1回目の脳卒中とは?の概論から、症状、脳卒中になった時の入院から退院までをお伝えさせて頂きました。
- 「健康診断は毎年受けているけど、結果は読み流してるだけ…」
- 「結果に再検査、と書いてあったけど、仕事が忙しいし、病院に行っていない。」
なんていうこと、ありませんか?
実際に、外来で頭痛やめまい症状がある方に健診を受けているか尋ねると
「そういえば、去年の健診で血圧が160以上あったけど、そのままにしていました。」
「毎年、中性脂肪で引っ掛かるけど、気にしていませんでした」など。
健康診断を「受けただけ」で終わってしまう方の声、実はよく耳にします。
気になる症状が出るまでは、自分は健康だ、と思えてしまいます。
しかし、生活習慣病という病は症状が出るまで年月をかけて進行していきます。
年に1度の健康診断を、あなたにとって役立つものにしたい。
生活習慣病を予防して、将来起こるかもしれない脳卒中予備軍を少しでも減らしたい。
看護師として、切なる願いがあります。
今回の記事では「健康診断を受けたら、ココをチェック!」について、お伝えさせて頂きますね。
この記事の目次
1.そもそも、健康診断って?
健康診断とは、あなたの健康状態を確認し、病気になりかけていないかの兆候を早期にみつけるために実施されます。もちろん、すべての病気に対してわかるものではありません。
しかし、生活習慣病と呼ばれる高血圧、高脂血症、糖尿病などを発見するためには有効な手段といえます。
中高年の方に特に気を付けてほしい生活習慣病のサインは、血圧や血液検査が基準値より「どのくらい」オーバーしているか、です。
みなさんが驚くほどに、血液には体の状態がびっくりするほど反映されます。
企業にお勤めの方が受ける健康診断、個人事業主や専業主婦の方が受ける市町村の健康診断では、「一般健康診断」と呼ばれ、身体計測・血圧測定・血液検査・尿検査・胸部レントゲンなどが中心となります。
2.血液検査の結果・・・ココをチェック!
血液検査の結果では、何をみてるのでしょう?
働き盛りの方達だと、ファストフードや丼物、菓子パンなどの食生活だと血糖値や脂質、飲酒の機会が多ければ肝臓の機能が大丈夫かは注目しやすいですね。
実は、健康診断で最も注目しているのは、「動脈硬化を引き起こす要因はないか?」なんです。
動脈硬化は、長い年月をかけて進行するもので、一度なってしまうと改善が困難と言われています。
動脈硬化を促進させるものを危険因子と呼び、高血圧、脂質異常症、糖尿病や喫煙があげられます。
人間の体は、呼吸、循環、体温維持で生きていますが、血液の質が悪いと、あっという間に全身に影響します。
①脂質
脂質異常症(高脂血症)とは、LDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪が増えた状態、またはHDLコレステロール(善玉)が少ない状態の事を指します。
名称 | 危険数値 | 状態 |
中性脂肪 (TG:トリグリセライド) | 150㎎/dl以上(空腹時)
| LDLコレステロール、HDLコレステロールの原料で、肝臓に蓄積すると、脂肪肝になりやすい。 ※空腹時:カロリーのない水分摂取(水、お茶など)を除いた10時間以上の絶食を指します。 |
LDLコレステロール(LDL-cho) | 140mg/dl以上の値が継続しているとき | よく聞く「悪玉」のこと。余ると、血管の壁にこびりつきます。 |
HDLコレステロール(HDL-cho) | 40mg/dl 以下の値が継続しているとき | 「善玉」のこと。悪玉コレステロールの運搬をする。血管掃除をしてくれます。 |
②血糖 / HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
空腹時血糖が110mg/dl以上、HbA1cが5,9%以上が継続すると、糖尿病予備軍になっている可能性があります。
血糖は、血液中のブドウ糖、HbA1cは赤血球に結びついたブドウ糖のことです。
赤血球は、作り出されてからその寿命は28日間。
そのため、HbA1cは過去1か月間の血糖を反映しています。
血糖値が高い状態が続くと、全身の血管が傷ついてしまうのです。
人間の体は、血液に流れる成分で栄養補給をしているため、「血液そのものが高血糖状態」だと脳卒中や心筋梗塞を始め、あらゆる病気の引き金となる怖い状態といえます。
③尿酸(UA)
尿酸とは、肝臓でつくられる代謝産物のひとつ。
7.0㎎/㎗以上の結果が出たら要注意!尿酸が高い値なのに、放っておくと動脈硬化、痛風や腎機能障害、尿路結石などの原因となります。
痛風にかかるのは、99%は中高年男性、最近だと30歳代も急増しているといわれています。
また、高尿酸血症が数年継続すると、脳卒中発生率はなんと2,5倍!
特に、ビール好きな方。ビールは蒸留酒の約500倍のプリン体が含まれます。飲みすぎ、要注意ですね。
④尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)
こちらは両方とも腎臓の機能をみるためのものです。慢性的に腎臓のはたらきが悪くなることは、脳卒中だけでなく心筋梗塞、心不全のリスクを高くすることがわかっています。
BUN(尿素窒素)20㎎/㎗ 以上、クレアチニン 2.0/㎎以上、の継続は要注意です。
3.血液検査以外の数値
①身長体重、BMI
多目的コホート研究によると、男女共にBMI 30㎏/m2 以上のグループはBMI23㎏/m2に比べ、心臓で出来た血栓が詰まる心原性脳梗塞の発症リスクが、約2倍高くなったとのこと。
同様の条件でラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクがさらに2倍高いという報告があります。
(※多目的コホート研究とは:生活習慣と病気の関係を調べるための大規模な疫学調査)
②血圧
血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が血管の壁を押すときの圧力のことで、心臓が縮んだり広がったりすることで発生します。血圧の値は、心臓から押し出される血液量(心拍出量)と、血管の収縮の程度やしなやかさ(血管抵抗)によって決まります。
血圧コントロールの目標数値は、日本高血圧学会によると130/80mmHg。
正常数値、でみると家庭で測定する値では115/75mmHg未満です。
高血圧は、非常に多くの方がかかる病気で、日本には高血圧患者が約4300万人いると言われています。
高血圧は、脳卒中発症の最大の危険因子といわれており、脳卒中の最大の予防は、血圧の数値を正常に保つことです。
高血圧が続くと、動脈硬化も進行させ、いずれ脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中の引き金となります。
4,まとめ
いかがでしたでしょうか?脳卒中の原因は、遺伝的要素も否定できませんがそのほとんどが動脈硬化によるものです。
次回は、最終章、今回の記事をふまえて「脳卒中予防の10か条」をお届け致します。
この記事を書いた人
看護師:工藤 巳知子
北海道出身、看護師歴21年。
新卒で一般病棟勤務中、急変対応の経験不足を痛感したため手術室・救急外来へ部署移動。
上京後は大学病院の高度救命救急センター、民間病院の集中治療室(ICU /CCU)で12年。
その後、命を救う現場から病院と在宅を結ぶ訪問看護ステーションへ転向。営業やマネジメント、国際医療搬送を経験。
21年間、脳神経外科領域に関わり、現在は開業メンバーとして脳神経外科のクリニックに勤務中。
脳と意識、こころの探求を学びながら、フリーランスナースとして活動中。