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家族信託と成年後見制度の違いって何? メリットとデメリットを解説!

これまで家族信託について、基本的な仕組み活用方法を紹介してきました。

しかし認知症対策としては、家族信託の他に成年後見制度が頭に浮かんだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は家族信託と対比させながら、成年後見制度の特徴や財産管理をする視点からのメリット・デメリットについて紹介していきます。

この記事の目次

成年後見制度って何?

まず成年後見制度について、制度の概要を説明します。

成年後見制度とは、すごく簡単に言えば「判断能力が低下した方に代わって、財産の管理をする人を家庭裁判所が選ぶ制度」のことです。

成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、法定後見制度は「判断能力の低下」の程度により、後見・保佐・補助とさらに3つの種類に分けることができます。

家族信託と成年後見制度の違いって何? 任意後見制度と法定後見制度
任意後見制度と法定後見制度

それでは、どのような場合にこの制度を利用することができるのでしょうか。

例えば、お父様が認知症になってしまったとします。

そうすると、お子様などご家族がお父様の代わりに法律行為や財産管理をする人を選んでください、という旨を家庭裁判所に申し立ます。

家庭裁判所の審判があれば、後見人の業務がスタートする、というわけです。

ここで注意しておきたいのは、「認知症等により判断能力が低下してから申し立てをする」という点です。

家族信託は元気なうちに契約を交わしておくものですが、法定成年後見制度は元気なうちに申立てることはできません。

では、どのような人が後見人になることができるのでしょうか。

親族が後見人に立候補して申し立てることも可能です。

令和2年度のデータ(最高裁判所事務総局家庭局)によると、親族による立候補は全体の23.6%であり、現在後見人の80.3%は家庭裁判所が選んだ弁護士などの専門職資格者が就任しています。

令和元年3月18日の最高裁判所の発表によると、後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は、その親族を後見人に選任していく方向にシフトしつつあるようですが、必ず親族が選任されるわけではないようです。

もし、どうしても他人に財産を管理される可能性をなくしたいというのであれば、任意後見制度を利用することができます。

これは自分に何かあった時に親族など「自分の後見人になってほしい人」を後見人にできるように事前に契約をしておく制度になりますが、家族信託と同様、契約を結ぶ仕組みなので、「元気なうち」にしかできない点で注意が必要です。

成年後見制度でできること・メリット

成年後見制度を使うことによって、どんなことができるようになるのでしょうか。

①財産管理

成年後見人は、本人に代わって、預貯金や不動産の管理を行うことができます。

財産が凍結するリスクも回避できるので安心できますね。

家族信託でも同様に預貯金や不動産の管理を行うことができますが、家族信託の場合は受託者の名義に変更する必要があります。

②身の回りのことに関する法律行為

成年後見人は本人に代わって、生活・医療・介護・福祉など、本人の身の回りの事に関する事務(法律行為)を行うことができます。

例えば、施設に入ることになった場合の入退所契約などです。

家族信託は財産管理に関する契約ですので、このような身の回りの契約関係などを代わりに行うことはできません。

後見制度ならではの特徴と言えるでしょう。

③取消権

もし本人が悪質商法の被害に遭い、不当に高額な商品を購入してしまった、または不動産などを売却してしまった場合であっても、成年後見人はその契約を取り消すことができます。

こちらも家族信託の受託者にはできない行為です。もし被害に遭ってしまったとしても安心ですね。

成年後見制度でできないこと・デメリット

一方で、成年後見制度を使うとやりにくくなってしまうことやデメリットもあります。

①財産の運用や処分ができない

成年後見人は本人の財産を「守る」ための制度です。

あくまでも「現状維持」に主眼を置いているため、家族信託をした場合と違い、不動産の購入や積極的な資産運用などを行うことが難しいと考えていただければと思います。

もし生前贈与などの相続税対策を引き続き行っていきたいと考えていたとしても、相続税対策は本人の財産を減らす行為になるため、後見人が就任するとそれができなくなってしまいます。

②家族以外の第三者(専門職後見人)が就任する可能性があります

これはご家族の皆様の心情的なお話となります。

家族内で財産を守っていきたいと考えているのに、専門職後見人がその管理に加わってしまった、家族の財産に関与していると嫌がる方もいらっしゃいます。

実際にこの点が受け入れられず家族信託を選択されるお客様も多くいらっしゃいます。

③後見人報酬(ランニングコスト)

後見人が就任すること自体も無料ではありません。

専門職後見人が就任した場合には、その後見人に対して月額の報酬を支払わなければなりません。

財産状況等によってその金額は変動しますが、おおよそ月々2万円~5万円と言われています(報酬額は家庭裁判所が決定します)。

また後見人は一度就任すると、原則途中でやめることはできません。

つまり本人が亡くなるまでずっと続くわけです。

亡くなるまでの期間にもよりますが、仮に月3万円の報酬で10年間続いた場合、後見報酬だけで総額360万円となります。

一方、家族信託では受託者に対する報酬については原則自由に定めることができます。

報酬を無償にしておけば、このような継続的な費用の発生を抑えることができます。

いかがでしたでしょうか。

家族信託と成年後見制度ではそれぞれできることとできないことがあります。

どちらが良いのかは、各ご家族のご状況によると言えます。

ご家族の想いを実現していくために必要なことは何かを検討された上で、具体的な対策に進んでいくのが良いのではないでしょうか。

家族信託、成年後見制度、どちらにもいいところがあります。
また、デメリットに感じる部分はその方の家族構成などによってさまざまです。


この記事を書いた人

髙橋 祥一朗 みつ葉グループの東京オフィスにおいて、相続事業部に所属

髙橋 祥一朗(たかはし しょういちろう)

<プロフィール>
東京・札幌・大阪・広島・福岡・沖縄に拠点を展開するみつ葉グループの東京オフィスにおいて、相続事業部に所属。
これまで多数の相続・家族信託案件に携わってきた経験から、煩雑な相続手続きや複雑な家族信託の手続き関係を得意としています。
相続、家族信託の手続きについて是非お気軽にご相談ください!

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