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血糖値が高いと言われてから、何度血液検査を受けてきたでしょうか。
あなたの大切な検査結果、上手に活用できていますか?
この記事を読むことで難しいと感じていた検査値が身近になり、上手な見方が分かるようになります。
この記事の目次
検査の目的
検査は大きく分けると健康診断と病院受診時の2つの場面で行われます。それぞれの場面での検査の目的はこのように異なります。
①健康診断
生活習慣病をはじめとした病気の予防のために、からだの健康状態を総合的に確認しています。病気を見つけるというよりも、その人の健康状態をチェックし、病気になりそうな危険因子を早期に発見することが目的です。そのため、この健康診断で「要指導」となった場合は、病気予防のために生活習慣を改善していくことが大切です。「要精密検査」や「要医療」となった場合は病気になっている場合があり、追加検査や治療、生活習慣の改善が必要です。
②病院での定期検査
病気になっている人に対して、早期治療を行い病気の改善や悪化予防をすることが目的です。検査では現在のからだの状態や治療効果を判定しています。
検査値をみるポイントと相談者の実例
①基準値が全てではないことを理解する
検査値には「基準値」があります。これは統計上定められたもので、健康な人の95%がこの範囲内にあるといわれています。逆に言えば、5%の人は健康でも基準値外になる人もいるということです。検査値だけで、ここからが病気であると境界がひけるものではないのです。
また、人間に体質があるように、検査値も個人差があります。もともと少し高めの人、低めの人もいます。日ごろから健康時の『自分の基準値』を意識しておくとよいでしょう。そして、基準値との比較だけでなく、自分の基準値と比較し、体調の変化と合わせてみていきましょう。
【実例】
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は特定健診では5.6%以上から血糖高値と診断されます。
65歳の男性Iさんは若い頃から健康に気遣う生活を送っており、HbA1cは40代の頃から5.3~5.5%とほぼ変わらずキープしていました。
それが65歳の健診で5.6%となり検査結果では「血糖高値・要指導」と記載されました。
この変化は本来なら許容範囲であり、生活習慣を見直す程度で来年には5.6%未満に戻っている可能性が十分ありました。
しかし、ご本人は「糖尿病予備軍になってしまった」と焦って過度な減量を行い、体調を崩してしまうことになりました。
このように、検査値や基準値との差異に一喜一憂することなく、自分の体調や生活習慣と合わせた検査値の評価が大切です。
見方に迷う場合は、主治医や市役所保健センターなど身近な健康相談窓口にお問い合わせください。
②1日の変化をみる
検査は通常、その時の定点の状態を測定しています。
血圧なら起床後安静時、血糖値なら空腹時と、血液検査をしたその時の状態を表しています。
本来なら検査値は人間の活動に伴い毎分毎秒変化しています。
血糖値や血圧など自分で測定できるものであれば、定められたタイミング以外でも測定する機会を設けると新たな発見があるかもしれません。
最近では「持続皮下グルコース測定」という新しい測定技術が開発されました。
血液を採取しなくても腕に専用シールを張り機器を装着するだけで、簡単に24時間の血糖値をモニタリングすることができます。
自分の血糖値の変動がどのように起こっているのか可視化できるようになったのです。
これにより、効果的に生活習慣の改善や薬物治療が行えるようになりました。
この検査は糖尿病のインスリン療法を受けている人は保険適応になります。
それ以外でも自費診療で1万2千円ほどで受けることが可能です。
このように、検査値は1日の中でも変化しています。定点以外の変化も意識しながら、ご自身の生活を見直してみましょう。
【実例】
持続皮下グルコース測定を行ったEさん。
今までは血糖値が上がらないようにご飯量に気を付けていました。
しかし、ご飯を食べた時よりも間食時のほうが血糖値を急上昇させていたことが分かりました。
さらに、納期に追われた仕事をしている時間帯も食事をとる以上に血糖値を上げていることが分かりました。
納期をマネジメントし、ストレスケアをするようになると、日中の血糖値の推移が緩やかになりました。
また、運動時の血糖降下を目の当たりにし、週3回ジョギングをするようになりました。
③毎年の変化をみる
健康診断や定期検査での血液結果では年次推移をみることも大切です。
からだの老化にともない検査値は高くなりやすいというお話は「①血糖値が高いと言われたら~やることリスト3つ」の記事でご紹介しました。
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少しずつ検査値が高くなってきたら、からだの処理能力が落ちていることがわかります。
なるべく検査値をキープできるように自分の処理能力に合った生活を整えていくとよいでしょう。
【実例】
55歳の女性。
健康診断で毎年の結果をファイリングしていました。
健診後の面談で徐々に血糖値が上がってきていることを相談しにきました。
年次推移をみると少しずつの変化で老化の影響かと思われましたが、4年前に一気に体重が増えた時期がありました。
それ以降、体重・血糖値・中性脂肪が徐々に増えていることがわかりました。
一緒に振りかえると、4年前に趣味の水泳サークルをやめていたことに気が付きました。
再び水泳を始めたことで、体重が減り血糖値・中性脂肪ともに改善することができました。
まとめ
検査値をみるポイントは3つありました。
①基準値が全てでないことを理解すること
②1日の変化をみること
③毎年の変化を見ること
この3つの大切さについて実例とともにお伝えしました。
検査値は血糖ケアをする上で、大切な伴走パートナーです。
時に好奇心を持って、時に愛情を持って、検査値の推移と自分自身の生活習慣をみつめてみてはいかがでしょうか?
記事を読んでいただいたこの機会をチャンスとし、健康生活を築いていきましょう。
この記事を書いた人
安富由紀子
<プロフィール>
看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。
現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。
<クレド>
①指導をしない
②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり
③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり
<経歴>
看護師・保健師 専門は生活習慣病予防
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
(一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ
<講座・執筆>
・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 )
「もしもあなたが乳がんになったら」
・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様)
「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」
・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)