【発達障害に気づくきっかけと診断までの流れ】の記事内で、発達障害とは脳の発達がアンバランスで得意な部分と苦手な部分が出るために、人間関係や日常生活上で困りごとが生じてしまう状態のこととお伝えしました。
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発達障害とは困りごとが生じている状態であり、どちらかというとネガティブなイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
短所は長所の裏返しと言うように、表裏一体の存在です。発達障害の困りごとも見方を変えれば、長所になり得ます。しかし、どうしても長所よりも困りごとの方が目立ってしまうことが多いです。
この記事では発達障害のある子供の長所の目を向けられるよう強みの発掘と、どのように困りごとを少なくし強みを増やしていく方法である発達支援についてお伝えします。
この記事の目次
1.それぞれの発達障害の困りごとと強み
(1)自閉症スペクトラム障害(ASD)
①自閉症スペクトラム障害の困りごと
自閉症スペクトラム障害の3つの特徴
コミュニケーションに関して、周りとコミュニケーションを取り、人間関係を築いていくことが苦手です。
相手の立場になって考えることが苦手で空気を読めずに一方的に話し続けてしまうこともあります。
またこだわりの強さから、状況に合わせ臨機応変に対応することが難しい場合があります。
②自閉症スペクトラム障害の強み
コミュニケーションに関して、自閉症スペクトラム障害の特徴は幼稚園・保育園や小学校という場では困りごとに映ってしまうかもしれません。しかし困りごとは長所になります。
空気を読めない
相手の立場を考えたり、周囲の状況を判断したりすることが苦手とされています。
皆さんは、初対面の人や初めての場所で緊張せずに話すことは出来ますか?
人見知りの人であれば難しいかもしれません。緊張して初対面の人と話すこと出来なかったり、人前で何か発表することを避けてしまったりすることもあるでしょう。
相手や状況をあまり考えずに自分の気のままに話すことは実は強みになり得ます。
誰かにプレゼンをするという状況では、緊張することなく自分自身の力を100%発揮出来る可能性があります。
一方的に話し続けてしまう
皆さんは自分の好きなこと、興味あることについて話続けることは出来ますか?
話を続けることが出来るということは実は長所です。
好きなことでも、言葉が出てこなかったり、詰まったりすることは不思議なことではありません。
こだわりの強さ
好きなことや興味のあることに対して、一旦スイッチが入ると並外れた集中力で熱中することがあります。
好きなことや興味のある分野に対して、知識が増えていき、造詣が深くなっていき、中にはその分野の第一人者になる人もいます。またルーティン作業など単調だけど正確さを求められるようなことも得意です。
コミュニケーションを苦手とする自閉症スペクトラム障害ですが、意外にも営業の仕事が合っていることもあります。営業とは会社の商品やサービスを売るという仕事です。
「自分が好きな商品やサービス」を紹介する時、この強みが活きます。
熱く語ることでとクライアントの心を動かすことも出来るかもしれません。
③サヴァン症候群
サヴァン症候群とは、“精神障害や知能障害を持ちながら、ごく特定の分野に突出した能力を発揮する人や症状を言う”と記されています。【厚生労働省 | e-ヘルスネット サヴァン症候群
自閉症スペクトラム障害の10~25%がサヴァン症候群と言われています。
サヴァン症候群の人たちは一般の人にはない凄まじい能力を持っています。
1番多いとされている能力はカレンダー計算です。
「2000年1月2日は何曜日?」と質問すると、「日曜日」と瞬時に答えることが出来ます。
他にも、聞いたピアノの演奏をそのまま再現出来たり、何万桁の計算を暗算したり、読んだ本を全て記憶したりなどずば抜けた能力があります。
芸術面や数学的な能力を持っている人が多いです。
(2)注意欠陥多動性障害(ADHD)
①注意欠陥多動性障害の困りごと
注意欠陥多動性障害の3つの特性
集中したり、何かに注意を向け続けたりすること、じっとしていることが苦手です。
また立ち止まって考えることが苦手で、思いついたことをすぐ行動に移してしまうことがあります。
また注意欠陥の特性において、注意を適宜必要な方へ向けるという注意の切り替えが苦手な人もいます。
この特性が強いと一旦集中するとずっと集中してしまう「過集中」という状態になることもあります。
②注意欠陥多動性障害の強み
じっとしていることが苦手、思いついたことを行動に移してしまう
行動的と言えます。自分のやりたいことを思いつくままに実現していくということは大人になった時に役に立ちます。
集中することが苦手
注意欠陥多動性障害の人の頭の中では様々なことが頭の中で生まれているようです。
その中から革新的なアイデアや面白いアイデアを生み出せる人もいます。
小説家やアーティストで注意欠陥多動性障害を公言している人も多いです。
過集中
何かに集中する状態を長時間維持出来ることは強みです。
2.発達障害のある偉人や有名人
(1)モーツァルト
人生で800もの曲を作曲したそうです。モーツァルトは5歳から作曲を始め、一度聞いた曲を楽譜に起こすことも出来たそうです。
(2)トーマス・エジソン
発明王と言われるエジソンですが、子供のころから好奇心旺盛でした。
中でも、火が燃える様子を見たいと家の納屋に火をつけた結果、納屋を全焼させたことがあります。
(3)スティーブ・ジョブズ
Apple社を創業し、スマートフォンという世界を変える発明をした人です。
自分の興味のあることに対し、衝動的に行動してしまうことが多かったようです。
こだわりが強く、体臭をさせないようにベジタリアンの食事をしてお風呂にも入らなかったそうです。
服を決める時間がもったいないという理由から、同じ黒のタートルネックを買い、毎日同じ服装をしていたそうです。
3.発達支援を受けるには
厚生労働省より、“児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。”と記されています。
【児童発達支援ガイドライン | 厚生労働省
(1)発達支援を受けられる場所
個々の発達の状態や障害特性に応じて、今の困りごとの解決と、将来の自立と社会参加を目指し支援をすることです。
療育を受けられる場所は3種類あり、年齢によって分けられています。児童発達支援センター、児童発達支援事業所という施設は0~6歳までの未就学児が通える施設でいわゆる療育と呼ばれています。
小学生以上が通える施設は放課後等デイサービスと言われています。
(2)どんな発達支援を受けられるのか
①運動や感覚を鍛える
バランスボールやトランポリンを使用して、バランス感覚を養い、体幹を鍛えていきます。
②人間関係やコミュニケーションのスキルを身に付ける
SST(ソーシャルスキルトレーニング)を行い、起きてしまったトラブルの解決法を考えたり、未然にトラブルを防いだりします。友達とケンカしてしまう、先生に上手く言えないなどの困りごとをロールプレイング上で「どうしたらいいのか?」一緒に考えていきます。
③社会性を身に付ける
順番を守る、規則を守るなど社会生活を営む時に必要なスキルを身に付けていきます。そして相手のことを理解したり、自分の気持ちをコントロールしたりするためのスキルを獲得していきます。
④生活に関するスキルを身に付ける
基本的なあいさつや身だしなみから、お金の管理など大人になった時に自立して生活出来るようなスキルを身に付けます。
4.まとめ
発達障害を持つ子供は定型発達の子供に比べ、困りごとが多く、育てにくさがあるかもしれません。
長所と短所は表裏一体です。
困りごとも転じれば強みになります。
強みを活かせるように子供のうちから発達支援をしていくことは大切です。
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この記事を書いた人
山本みどり
【プロフィール】
看護師経験。大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。
現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。発達ケアを通して、子どもとご家族が安心して過ごせるように支援をしている。
食から身体のことを整えたいと思い、プライベートでは中医学・薬膳を学んでいる。
【経歴】
看護師/Webライター
看護師歴6年 NICU、精神科、訪問看護(成人・精神特化・小児発達ケア)
家政婦やベビーシッターとしても働いている