消化器内科病棟で勤務している頃
「明日、大腸ポリープを採るので入院になりました。よろしくお願いします。」
と言って入院し全てお任せという状態でした。
この経験から、検査、手術をする際に必要な心構えや、気付きについてお話したいと思います。
この記事の目次
1. 大腸カメラ検査についての心構え
(1)外来で、検査についての事前準備について看護師が説明を行います。
- 前日の食事の内容
- 下剤の服用方法、時間やタイミング
- 当日の食事について
- 検査日の下剤の服用方法と排便状況の観察について
- 検査後の注意点、帰宅方法について(日帰りの場合もある)
- 万が一の場合についての説明・それも含めた同意書をとる
上記の流れを経て、検査になります。
(2)同意書について
簡単に言うと
【検査してポリープがあったら、とれるサイズの場合は取ります。取れないサイズだったら取りません、それでよろしいですか?】という内容の同意書を事前に取ります。
検査が始まってからでは、麻酔によって本人に意思を確認できない場合もあるので、事前に同意を頂いてから始めます。
医師が大腸内をカメラで見て、取れるポリープはサイズや形状(掴みやすい隆起性の病変もあれば、掴みにくい陥没した腺腫もあり、陥凸型(かんぼつがた)のがんもある)によって採れるものは取ります。
そのポリープが癌であるのか、そうではないのかを早期に判断できた方が良いという事です。
実際の同意書は、もっと丁寧に細かく説明と共に検査について書かれていますので、よく読んで納得して検査を受けましょう。分からないことは、その時に質問して不安なことが無いようにしておくと安心です。
検査を受けなければ、ポリープがあるのか、切除しなければいけないものなのか、検査に出した方が良いものなのか、などの不安を解消することはできません。そのため、検査を受けることが前提となります。
「検査を受ける」=「まな板の上の鯉」の状態です。
なぜなら自分自身ではどうにもできない事なのですから。私自身、検査を受ける段階になるにつれて
ああ、もう、あとは医師に任せるしかない。大腸カメラの扱いが上手で、ポリープがあったらしっかりと採ってくれて、もしがん細胞があっても、それを取りこぼすことの無いよう、そして無事に終わりますように・・・・
神様仏様に祈る前に、検査を行う医師に願うしかないのです。
これが、患者さんの立場ですね。ですから、個人的には「まな板の上の鯉」なのだと、思いこむくらいの心構えで検査に挑むとよいと思います。
2. 採った場合と採らなかった場合の違い
ポリープは、自覚症状がほぼありません。
そのため検査をして「ポリープがありますよ」と言われても目で見るまでは信じられないものです。
もし検査してポリープを採らなかった場合はどうなるのでしょうか。
将来的にがん化する可能性がある腫瘍性ポリープ(大腸腺腫)を切除しなかったら、大腸がんになるのを防ぐことが出来ないかもしれません。
という事は、採れば「がん化を防げる」わけですから採れるようなら、がんになる前に取ってしまった方が良いですね。
- 病変の下の粘膜下層に生理食塩水などを注入して、病変を浮かび上がらせる。
- 電気メスで周囲の粘膜を全周切開後に、少し剥離を加える。
- 切開・剥離部分にスネアをかける。
- 高周波の電流を流し、病変を切除する。
※病変をメスで剥離するESDと、スネアをかけて電流で切除するEMRを組み合わせた治療方法
3. 採った後の注意点
入院中の方は、検査終了後は指示に従いましょう
麻酔が切れて返答がはっきりできた後、飲水開始になる時間は医師の指示通りに行われます。
<一般的には>
ポリープを切除した場合、もちろん出血します。
切除方法もいろいろありますが、大腸内に付いていたものを切り取るわけですから大なり小なり出血はあります。そのため、切除当日から1~2日は排便に血液が混じることがあります。
切除したポリープの大きさや出血の状況によって、個人差はありますが一般的には検査終了後から、飲水・食事は可能な場合が多いです。
しかし、アルコールや刺激の強い香辛料の入ったものはしばらく控えた方が良いです。
大腸内に刺激を与えて出血を促す原因になることがあるからです。
日常の生活動作や家事は問題ないですが、下腹部に力の入るような動作や運動、重いものを持つような力仕事、遠出も控えましょう。
切除後、1~2日は血便があることがありますが、数日たっても血便が続いたり、多量の血便が出た場合や、ふらついたり、動悸や貧血症状がある場合は異常事態なので、すぐに検査を受けた医師へ相談してください。出血が止まらずにいる可能性が考えられるからです。
稀に、ポリープを切除した後に大腸に穴が開くことがあります。これを穿孔(せんこう)と言いますが、検査後に強い腹痛があって、おならが出てもその痛みが改善しない場合や、翌日になっても腹痛が続く場合は医師に相談してください。
私が勤務していた間には穿孔(せんこう)を起こした方は居ませんでしたが、念のため知っておくと良いでしょう。
4. まとめ
虫歯にしても、大腸ポリープにしてもですが、自分自身で治すことの出来ないものは、任せて治してもらうしかないと思います。
日頃から生活習慣を見直して防ぐことが大切です。
気を付けていても、思いがけず病気になることもあります。
大腸ポリープも早期発見し腫瘍性では無かった場合、ポリープ切除のみで済むこともありますが、定期的に検査は必要になります。
経験豊富な医師がいる病院だと不安も軽減でいますね。
大腸カメラを使いこなし、大腸内の病変を見逃すことなく検査をしてくれる医師。そんな先生に出会いたいですね。
先日80歳以上のご年齢に見える医師に大腸カメラ検査をしてもらいました。麻酔をしてもらったのもありますが、あっという間に検査は終了していました。昔その医師の介助についていた看護師が言っていましたが「神の域」だと。
どこの病院に行っても、そんな医師がいてくれたら安心ですね。
この記事を書いた人
看護師:栗巣正子
<経歴>
看護師歴 23年
大阪府堺市で、50床~2000床の病院勤務(内科、外科、手術室、整形外科、療養病棟)。
離婚後、鹿児島県鹿屋市にて、老人保健施設、透析専門クリニックに勤務
大手生命保険会社に、営業主任として3年勤めた後、地域密着型の内科総合病院に17年(介護保険病棟、療養病棟、急性期病棟、心臓内科、腎臓内科、肝臓内科、消化器内科、呼吸器内科、腹膜透析、血液透析、外来、救急外来、訪問看護)勤める。
現在は、派遣ナース、非常勤での健診スタッフ、訪問看護指示書作成等の委託業務、ナース家政婦登録
<資格>
正看護師/普通自動車免許/大型自動車免許/けん引免許/たん吸引指導者/ペットセーバー/労災ホームヘルパー(A)