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仕事を辞めれば介護はラクになる?介護バーンアウトの真実

「仕事を辞めて、介護だけに集中すれば私も家族も幸せになれるのかも」

仕事をしながら家族の介護をしている人は、一度は頭をよぎるのではないでしょうか。

仕事をして帰宅すれば家族の介護。家事と介護で家に居る間も目まぐるしく動いて朝が来れば仕事へ行く。職場での役割も責任感もあり、自分が休むことで同僚や後輩にも迷惑をかけてしまうから、休めない・・・。

でも、確実に心と身体は介護で疲れている。

それが容易に想像できるのは、私が看護師としてたくさんの患者さんや利用者さんの人生を垣間見て、両祖母の在宅介護を見てきた経験がベースにあるからだと思います。介護のために離職する場合のリスクについて、ご紹介していきます。

この記事の目次

①介護者にのしかかる経済的な問題

家族の介護で仕事を辞めてしまうと収入源がなくなるため、多くの人が不安を感じます。仕事を辞めると「経済的困窮」に必ず直面します。そこで考えるのは、「親の年金があるから、自分が仕事を辞めてもなんとかなるのでは?」という考えです。あなた自身もそう思っていらっしゃるかもしれませんね。

しかしながら、介護は想像以上にお金がかかります。おむつ代、医療費、光熱費の増加、介護ベッドや住宅改修費用。何事もない日常を願うばかりですが、突然の怪我、新たな病気の発生、治療費、入院費など、高齢者には予想外の医療費がかかるものです。

更に深刻な問題となるのは「介護者自身の生活費と将来の資金」が途絶えてしまうことです。また、経済的不安に伴って精神的負担が顕著になっていくことが少なくありません。

・毎月の給与がなくなる

・厚生年金の加入期間が減り、自分の将来の年金受給額が減る。

・収入がないため貯金を切り崩す生活になり、精神的な余裕がなくなる

もしデイサービスを利用している場合、支払いを考えてデイサービスの回数を減らさなければならなくなるかもしれません。そうした場合、さらに介護する時間や疲労が増して(あれ?こんなはずじゃなかったのに)という事態になることが想像できます。

お金の余裕は、心の余裕と直結しています。経済的な行き詰まりは、徐々に介護する人を追い詰めていくことになります。実際に、母親の介護に追われて家族は仕事が出来ず、生活が行き詰って親子ともに餓死してしまったという痛ましい事件がありました

②介護で喪失する3つ人間関係

仕事を辞めるということは、単に収入を失うだけではありません。「社会人としての自分」や「自分を取り巻く人間関係」も失っていくことが容易に想像できます。

仕事(キャリア)の喪失

職場は、大変な場所であると同時に、「〇〇さんの介護をしている人」ではなく、一人の「自立した大人」として扱ってくれる場所です。その職場から離れることで、自らの社会的役割や、これまで築いてきたキャリアを捨ててしまうことになり得ます。

友人の喪失

介護中心の生活になると、友人からの誘いを断らざるを得ない状況になります。断り続けているうちに「誘っても、介護があるから無理なのだろう」と気を使わせてしまい、次第に連絡が途絶えていきます。愚痴を言い合える友人がいなくなることは、心の安全弁を失うことを意味します。

パートナー(恋愛・結婚)の喪失

24時間介護に追われる生活を送る中で、新しい出会いを探したり、パートナーとの関係を維持したりすることは極めて困難です。「自分には人を幸せにする余裕なんてない」「相手に迷惑をかけてしまう」と自ら心を閉ざし、恋愛や結婚の機会を諦めてしまう人も少なくありません。

結果として周りから人が去り、仕事もない、友人もいない、パートナーもいない…という、極めて小さな狭い世界に取り残されることになっていくのです。

筆者の知り合いに、親の介護のため地元に帰ってきた人がいました。親の介護に懸命になっているうちにパートナーとの間に溝ができてしまい、離婚に至りました。その後、新しい出会いがあっても(親の介護があるから…)と恋愛も結婚も諦め、親が亡くなった今も無職のまま一人で生活しています。

③介護一色になることの危険性

仕事を辞め、人間関係が途絶えた介護者を待っているのは、「社会から切り離されている感覚(社会的孤立)」と「介護する人と介護される人の濃密な時間」です。

朝起きてから夜寝るまで、会話をする相手は認知症や身体の不自由な親(あるいは家族)だけになります。そういった日が繰り返されていると、ある日急に「自分はいったい今、何をしているのだろう」「社会の歯車から完全に外れてしまった」という疎外感に包まれることがあります。

家の中で介護する人と介護される人が二人きりで居ると、その関係性が徐々にゆがみ、悪くなっていくことがあります。どれだけ尽くしても感謝されることは無く、時に暴力や暴言、理不尽な要求を突き付けられる。逃げ場のない密室の中で、大切なはずの家族が、自分を縛り付ける「敵」のようなものに見えてくる瞬間が来るかもしれません

「二人きりの孤独」は、介護者の精神をじわじわと追い詰め、正常な判断を奪っていくのです。

④真面目な人ほどバーンアウトする

介護の現場では、よく「やりがい」という言葉が使われます。「親孝行が出来て嬉しい」「自分が看取ってあげたい」という気持ちは尊いものです。しかし、その尊い思いだけで24時間365日の介護はできません。

介護には、育児のような「成長していく喜び」や「いつか終わる(自立する)」というゴールがありません。多くの場合、被介護者の状態は緩やかに、あるいは急速に悪化していきます。よって、ゴールのないマラソンを休憩もご褒美もなく、たった一人で走り続けるようなものなのです。

真面目で責任感が強い人ほど「もっと頑張らないと」「自分がやらなければ」「完璧な状態に介護しなければ」と自分を追い込みます。そしてある日突然緊張の糸が切れ、心身が完全に機能しなくなってしまう「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を引き起こします。

  

バーンアウトした先にあるのは、うつ病の発症、介護放棄(ネグレクト)、最悪の場合「介護殺人」や「心中」という悲劇です。楽になるために選んだ離職が、最悪の結果を招く引き金になってしまう、これが介護離職で起こる最も怖い事態です。

⑤退職を決める前のアクション

仕事を辞めれば、確かに「時間のゆとり」は一時的に手に入ります。しかし、それと引き換えに失う「お金」「人間関係」「社会との繋がり」「心の健康」の代償が大きすぎるのです。介護で最も大切なことは『介護する人が自分の人生を諦めないこと』です。

もし今、介護と仕事の両立に限界を感じているなら、退職を決める前に次のアクションを起こしてみてください。

1.ケアマネージャーに「もう限界です」と正直に伝える

ショートステイや施設入所の検討をし、公的補助金やサービスを導入する。

2.ビジネスケアラーとしての権利を行使する

介護休業制度や短時間勤務を活用し、職場の協力を得る。

3.介護のプロに実務を委ね、自分は家族としての愛を注ぐ役割に回る

基本的な介護はサービスを利用し、家族として本人に関わる。自分の時間に余白を作ることで、介護者である親との時間で声掛けやスキンシップを図る。

介護は一人で背負うものではありません。社会のシステム(介護保険)を使い、外の世界との繋がりを維持し続ける事こそが、結果として介護者とご自身を守りお互いの人生を歩み、育んでいく方法です。

この記事を読んでくださってる方が、ご自身の人生のバランスを上手にとることができるよう、さまざまな制度やシステムを活用できるようになることを願っています。


この記事を書いた人

看護師:栗巣正子 <経歴> 看護師歴 23年  大阪府堺市で、50床~2000床の病院勤務(内科、外科、手術室、整形外科、療養病棟)。 離婚後、鹿児島県鹿屋市にて、老人保健施設、透析専門クリニックに勤務 大手生命保険会社に、営業主任として3年勤めた後、地域密着型の内科総合病院に17年(介護保険病棟、療養病棟、急性期病棟、心臓内科、腎臓内科、肝臓内科、消化器内科、呼吸器内科、腹膜透析、血液透析、外来、救急外来、訪問看護)勤める。 現在は、派遣ナース、非常勤での健診スタッフ、訪問看護指示書作成等の委託業務、ナース家政婦登録 <資格> 正看護師/普通自動車免許/大型自動車免許/けん引免許/たん吸引指導者/ペットセーバー/労災ホームヘルパー(A)

看護師:栗巣正子

<経歴>
看護師歴 23年 
大阪府堺市で、50床~2000床の病院勤務(内科、外科、手術室、整形外科、療養病棟)。

離婚後、鹿児島県鹿屋市にて、老人保健施設、透析専門クリニックに勤務

大手生命保険会社に、営業主任として3年勤めた後、地域密着型の内科総合病院に17年(介護保険病棟、療養病棟、急性期病棟、心臓内科、腎臓内科、肝臓内科、消化器内科、呼吸器内科、腹膜透析、血液透析、外来、救急外来、訪問看護)勤める。

現在は、派遣ナース、非常勤での健診スタッフ、訪問看護指示書作成等の委託業務、ナース家政婦登録

<資格>
正看護師/普通自動車免許/大型自動車免許/けん引免許/たん吸引指導者/ペットセーバー/労災ホームヘルパー(A)

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