ズキンズキンと繰り返す頭痛を感じたり、「最近、頭が痛くて」と家族や友人の声を聴いた時、まず思い浮かべることは「脳に何か、悪い病気があるのではないか」という心配ではありませんか?
前回の記事でお伝えしたように、頭痛の多くは「緊張型頭痛」や「片頭痛」などの一次性頭痛とくも膜下出血や髄膜炎など、脳の病気が原因で起こる二次性頭痛があります。
今、感じる頭痛は怖い病気がある頭痛なのか、そうではないのか。
第2回目となる頭痛トリセツでは、「脳の病気じゃないですか?頭痛持ちの人が気になる検査、診断について」をお伝えいたします。
この記事の目次
1. 頭痛の診察を受ける前にできる準備
頭痛の多くが、「緊張型頭痛」や「片頭痛」などで、命に関わるような病気は少ない場合がほとんどです。
しかし、中には「くも膜下出血」や「髄膜炎」などといった命に関わる病気の場合もありますので、どういった症状が怖い頭痛なのかを一緒に知っていきましょう。
頭痛があり、病院へ行くとまず「問診票」の記入をします。
最近では、受診の前に記載できるようホームページに問診票ダウンロードが出来る医療機関も増えてきました。診察前にあなたが感じている症状を正確にお伝えいただくことは、診断の助けになります。
【頭痛に対する問診票の記載内容】
- 初めての頭痛か
- いつからか
- 突然か、徐々に
- どんな時に:何をしている時?
- どこが:頭のどのあたり?片側?
- どんな風に:ガンガン、締め付けられる、殴られたような
- どの程度か:活動の制限はない、動けないほど、寝込むほど
- どのくらい続いているか:数分、何時間も、何日も
- 頭痛の前に他の症状はあったかどうか:光や匂い過敏、めまい、しびれ、肩こりなど
頭痛の中でも、診断されたらすぐに入院、手術が必要となる場合がある病気があります。
それは「くも膜下出血」や「動脈解離」、「脳腫瘍」といいます。
特に代表的な脳の疾患であり最も死亡率が高いくも膜下出血は、「脳の怖い病気」としてご存知の方も多いと思います。
「突然起きた、今まで感じたことのない強い頭痛」、「ハンマーで殴られたような頭痛」と表現され「テレビ番組が始まった時」や「車に乗ろうとした時」など発症時間が特定できるのも特徴です。
これらの症状を感じた時には、迷わずにMRIやCT検査が可能な医療機関を受診または救急車を要請してください。くも膜下出血や動脈解離は放置してしまった場合、再出血を繰り返し命を落としてしまう可能性が高いです。
2. 危険な頭痛を疑う症状10選
多くの頭痛は緊張型頭痛や片頭痛であり、そのほとんどは緊急性が低いといわれています。
それでも中には、緊急で医療機関を受診しなければいけない危険な症状もあります。
以下の頭痛の場合、早めに医療機関を受診しましょう。
- 5歳以下、または50歳以上の方
- 6か月以内の発症
- 突然始まり、5分以内に最も強く感じる痛みになった
- どんどんひどくなる頭痛
- 高血圧、感染症に罹患している
- 片方の手足がしびれるや力が入りにくい、しゃべりにくいなど
- 触れる感覚、周囲への認知、意識が悪いなどの症状に改善がない
- がんの既往がある方
- 頭を強くぶつけ、怪我をしている
- 高熱や、意識がもうろうとしている状態
3. 頭痛を診察する時に受ける検査とは
①頭部CT
頭部にX線を照射し、コンピューター処理をした頭の輪切り画像です。
くも膜下出血や脳内出血などの出血性病変の診断に役立ちます。
検査時間が数十秒おと〜数分と短く、ペースメーカーなど体内に埋め込まれている金属があっても撮影可能です。
②頭部MRI/MRA
強力な磁力と電磁波によって脳の断層写真を撮影します。
そのため、体内に金属がある方には不向きな検査となります。(金属のある部位、種類によります) また、工事現場のようなカンカンとした音、閉鎖的な空間の機械がほとんどなので、閉所恐怖症の方は撮影が難しいことがあります。
③髄液検査
発熱や意識障害があると、髄膜炎を疑い腰椎穿刺(腰椎に針を刺し、髄液を採取する)を行い髄液の検査をします。
④血液検査
炎症反応(CRP)検査、甲状腺の異常などのホルモン検査、薬剤投与に問題がない肝機能かなどを調べられます。ほとんどが、頭部CTやMRIと組み合わせての検査となります。
4. 頭痛の診断
辛い頭痛で病院を受診すると、画像検査上での異常はなく、医師から「脳自体に異常がないので、鎮痛剤での経過観察を」といわれました。
悪いところがなかったと聞いて一安心したものの、「一向に痛みが取れず、、頭痛の原因もわからないままで、モヤモヤする」というようなケースがよくあるようです。
片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛は、検査で脳に異常がないことを確認してからが「頭痛治療のスタート」です。
頭痛治療に使用する薬剤には、予防薬や急性期薬、頓服薬など種類も多様にあるため、頭痛を専門に診察している頭痛外来がある医療機関への受診をお勧めします。
また、痛みの程度をどう評価するのかといえば、「頭痛があるとき・ないときチェックシート」や「頭痛ダイアリー」というものを使用します。
痛みは、評価がとても難しいものです。そこで、頭痛診療を行っている多くの医療機関で採用している「頭痛インパクトテスト:HIT6(ヒットシックス)」(Headacke Inpact Test-6)があります。
仕事、学校、社会生活において、どのくらい頭痛が影響しているのかを測定するツールとなります。
こちらは、インターネットで、ご自身でも自宅で簡単にできますので頭痛がある方にはぜひトライしてみてください。頭痛外来の受診時、多くの施設で導入されており、この点数を元に治療方針、内服薬の選択をすることが多くあります。
5. まとめ
頭痛は、よく聞く身近な症状のひとつです。身近なだけに、「頭痛くらいで」と軽視されてしまいますが、少なからず怖い病気の可能性もあるため、まずは画像検査も可能な医療機関を受診してみることをお勧めします。
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参考資料:頭痛ガイドライン(頭痛学会)
頭痛診療ガイドライン2021(日本神経学会)
神経治療33:357〜361,2016(難治性頭痛の診断と治療:平田幸一)
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この記事を書いた人
看護師:工藤 巳知子
北海道出身、看護師歴21年。
新卒で一般病棟勤務中、急変対応の経験不足を痛感したため手術室・救急外来へ部署移動。
上京後は大学病院の高度救命救急センター、民間病院の集中治療室(ICU /CCU)で12年。
その後、命を救う現場から病院と在宅を結ぶ訪問看護ステーションへ転向。営業やマネジメント、国際医療搬送を経験。
21年間、脳神経外科領域に関わり、現在は開業メンバーとして脳神経外科のクリニックに勤務中。
脳と意識、こころの探求を学びながら、フリーランスナースとして活動中。