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看護師が解説!適応障害①ストレス社会で急増する適応障害ってどんな病気

適応障害①ストレス社会で急増する適応障害ってどんな病気

インターネットの普及により情報処理やデータの解析が簡単になり、業務の効率化が可能になり、同時に仕事量が増加し時間に追われるようになりました。

超多忙を極める現代、ストレスが原因で起こる病気が増えているのをご存じでしょうか。

ストレスが原因でおこる代表的な病気のひとつに適応障害があります。

適応障害は、ストレスが原因で発症する病気です。
別名ストレス性障害とも言われています。

今回の記事では、ストレスが原因で引き起こされる適応障害とは、どのような病気かについて解説していきます。

この記事の目次

1. ストレス社会と適応障害

現代社会が、ストレス時代と呼ばれるようになったのは1980年のバブル期以降です。

冒頭にも記したように、インターネットの普及や公共交通機関の発展により経済的にも技術的にも社会は、便利で暮らしやすい生活を実現しました。

その一方で、企業間や会社内での競争や時間に追われ抱えきれないほどの仕事量をこなすことも求められるようになりました。
高度成長期を支えた社会は、人々の絶え間ない努力と創意工夫があって成り立ってきましたが引き換えにストレスを抱える人も多く、その影響は現代にも影響を及ぼしているのではないでしょうか。

ストレスの積み重ねで今では、ストレス社会と呼ばれるようになりました。

近年、「適応障害」と診断を受ける人が急増しています。
適応障害は、ストレスが原因で精神面や身体面でさまざまな症状を引き起こす病気です。
2018年~2022年の適応障害患者数を年別に算出したデータでは、この5年間に患者数は1.7倍に増えています。

ストレスが、人々の心や身体に影響を及ぼし続けていることを表しているといえます。

5年間の適応障害の患者数推移
Jastlabより引用

2. ストレスが原因で起こる適応障害のメカニズム

適応障害は、特定のストレスが原因で発症する病気のため、別名ストレス性障害とも言われています。
特定の原因のほとんどが、職場環境友好関係環境の変化だといわれています。

適応障害はどのようにして引き起こされるのでしょうか。

ストレスに晒されたとき、ストレスを解消するとともにストレスに立ち向かおうと努力をします。
間の身体には、ストレスに立ち向かうシステムが存在します。

ストレスを感じた時、ストレスに対抗するための抗ストレスホルモンを脳や副腎から分泌します。
抗ストレスホルモンはストレスを感じると、興奮を促す交感神経を刺激して血圧脈拍上昇させることで脳を覚醒させて身体の緊張状態を維持させます。

しかし、身体を興奮した状態をずっと持続させることはできません。

過度の緊張状態は、反動を引き起こすため

  • 疲れ
  • だるさ
  • 食欲不振
  • 不眠
  • めまい
  • 気分の落ち込み
  • 集中力の低下
  • 憂鬱

といった症状が出るようになってきます。

つまり、適応障害はストレスに立ち向かうために必要以上に緊張状態を繰り返した結果、引き起こされると言われています。

この過程を【ストレス反応の3段階】と言います。

身体のストレス反応

適応障害では特に、仕事や恋愛や人間関係といった自身を取り巻く環境の変化によってストレスを感じ、その状況に適応しようと頑張った結果、「気分」や「行動面」に症状が現れ、生活に支障をきたした状態を適応障害と言います。

3. 適応障害になりやすい人の特徴と症状

1. 適応障害になりやすい人の特徴

ストレスが原因で適応障害になりやすい人には、特徴があります。

どのような人が適応障害になるのでしょうか。

適応障害になりやすい人の特徴

  • 頼まれごとを断れない
  • まじめで責任感が強い
  • 他人を優先しがち
  • 自分に自信がない
  • 周囲の環境に不安や不満を抱えやすい
  • 繊細でイライラする
  • 仕事でミスすると落ち込みやすい
  • 几帳面で完璧主義

そのなかでも、自分の感情や行動をうまく調整できない人や、自分の感情を抑えて相手を優先してしまう人の場合、ストレスが溜まりやすく適応障害になりやすいと言われています。

特に、自分を抑えて「いい人」を演じている人は周りの人から少し強い言葉を言っても大丈夫と思われがちです。
反論しないことが多いため、ストレスが溜まりやすく適応障害になりやすいのが特徴です。

2. 適応障害の代表的な症状

個人によって症状の出方はさまざまですが、消化管や自律神経に不調をきたすことが多く、日常生活に影響を及ぼすことが報告されています。

不眠

適応障害でもっとも発症の頻度が高いのが不眠です。

不眠の主な症状

  • 寝つきが悪い
  • 眠りが浅く途中で目覚めてしまう
  • 朝早く目が覚めてしまう

適応障害では「寝つきが悪い」ことが最も多く、次に「眠りが浅く途中で目覚めてしまう」が主な症状です。

原因のひとつに、自律神経の乱れがありON/OFFがうまくいかずに引き起こされる場合があります。

不眠
喉の違和感や咳が止まらない

主な症状

  • 喉になにか詰まったような感覚がする。
  • 喉に違和感がある
  • 咳が出たら止まらない

実際は、食べ物を飲み込めない、引っかかるといったことはなく検査でも異常は見つからないことがほとんどです。

喉の違和感や咳が止まらない
胸の圧迫感や息苦しさ

胸やみぞおちにかけて、締め付けられるように感じることがあります。

息苦しさに関しては「いくら息を吸っても身体の酸素が足りない」や「意識しないと呼吸ができない」といった症状を訴える人が多くみられます。

悪化すると、過換気症候群(過呼吸)を引き起こすこともあります。

胸の圧迫感や息苦しさ
動悸

強いストレスに晒される、苦手な人が目の前に現れる、つらい過去を思い出したときや不安や怒りの感情が強い時に現れやすい症状です。

主に「心臓がどきどきする」という言葉で表現されます。

心臓が止まってしまいそうという恐怖感が伴うほどの動機を引き起こしパニック障害に移行する場合もあります。

動悸、脈を測る
食欲がなくなる、または暴食する

ストレスにさらされ続けると、自律神経のバランスが崩れて食欲のコントロールができなくなる場合もあります。

適応障害の初期段階ではストレスを発散するために、食欲が増します。

症状が進むにつれて、次第に食欲が低下をしていく場合があります。

食事

4. 適応障害とうつ病のちがい

ストレス性障害と言われている適応障害ですが、同じ精神疾患のうつ病との違いはご存じでしょうか。

症状は類似していますが、発症のきっかけや症状の重さ、改善の経過は違ってくるため治療方針も変わってきます。

悩み

適応障害とうつ病を見分ける3つのポイント

  • きっかけとなる原因
  • ストレスから離れた時の症状
  • 症状があらわれる期間

1. きっかけとなる原因

適応障害とうつ病ではきっかけとなる原因が異なります。

適応障害は職場の環境や人間関係、生活環境の変化などの特定できるストレスが原因で発症

うつ病では適応障害ほどストレスとの関係は明らかではなく、脳内の神経伝達物質の分泌の減少が原因であることが有力視されています。

ストレスが原因でうつ病になる場合もありますが、多くの場合はご家族や親しい人の死や離別・大切なもの(仕事や財産・健康)を失ったときに発症しやすいとされています。

ストレスがきっかけで発症する分類で適応障害とうつ病を分けた場合、

  • 適応障害は日々のストレスの積み重ねで発症
  • うつ病では人生という大きな枠組みの中で起こる変化や喪失で発症

2. ストレスから離れた時の症状

適応障害とうつ病では、ストレスから離れた時に憂鬱な気分や、何もする気が起きないといった抑うつ状態が続くかにも違いがあります。

適応障害はストレスが原因で発症するため、ストレスとなった環境から離れると症状は改善します。

例えば、仕事で憂鬱な気分が晴れず落ち込んでしまうのに対し、休日になると仕事の環境から離れるため、症状は改善します。

心を治す、癒す

一方、うつ病は神経伝達物質の分泌量が減少することが発症の原因となるため、ストレスから離れても症状は変わらないことが多くみられます。

3. 症状があらわれる期間

適応障害とうつ病を見分けるのに症状の発症と改善する期間にも違いがあります。

もし、適応障害と診断されても症状が続く期間や改善する時期がわかれば、ある程度の見通しを付けて過ごすことができるため社会復帰や休暇を取りやすくなります。

適応障害は、ストレスの原因となる出来事から3か月以内に発症し、ストレスとなる環境や原因を取り除くことで6ヶ月以内に回復します。

長引いたとしても、2年以上は続かないとされています。

また、適応障害の症状は一過性で症状も軽い場合も多く、症状に気付かず病院にかかるまでもなく日常生活を送っているうちに改善する人もいます。

一方、うつ病は憂鬱な気分ややる気が起きないなどの抑うつ状態の症状がほとんど1日中続き、2週間以上にわたって続き身体にも不調が出てくるため適応障害以上に大きく影響を及ぼしていきます。

悩み

5. まとめ

適応障害は、社会生活をしていくうえで誰もが遭遇するストレスから発症する可能性があります。

気付かないうちに改善する場合もありますが、放っておくとうつ病やパニック障害といった日常生活に支障をきたす精神疾患に移行する場合もある病気です。

特に適応障害になりやすい人は真面目で他人を優先する心優しい人が多く、自分のことを後回しにする傾向があります。

適応障害の症状は、自分からのSOSのサインです。

症状が軽いうちに、適切な治療や自分を取り巻く環境を調整することが予防と対策の第一歩です。

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この記事を書いた人

看護師大竹加代子

大竹 加代子

大阪在住。身内の死をきっかけに、よりよい生き方を社会に広めたいと思い看護師となる。

整形外科・外科・脳外科・内科・循環器の急性期病棟を経て、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟へ勤務・現在に至る。

現役看護師として医療に携わる一方、こころの健康が身体の健康に及ぼす影響を実感し、こころと身体の健康を取り扱う看護師Wellnessナースとしてメンタルケア・認知科学の学びをすすめながら、適応障害の人のための電話相談やセミナー開催に向け取り組んでいる。

《経歴》
看護師歴25年
プロコミュニケーター
NLPマスタープラクティショナー
一般社団法人 日本ナースオーブ所属 Wellnessナース
保険外訪問看護 看取り対話師

《執筆》
株式会社 ELAN 様 
看護師が解説!高齢者の骨折予防
看護師監修 介護側の食事指導
note 女性の適応障害に適応するブログ

《講座》
Wellnessチャートで賢くやせる/ウェルネス講座

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