目次

看護師がわかりやすく解説!透析治療の導入③透析と言われる基準値って何?

  • 透析が必要になる病気は何がある?
  • 透析が必要と言われるまでには、だいだい何年かかるの?
  • 定期検診で気を付けたい検査データーと数値

『からだと検査値の関係』
『透析と聞くと、たくさんの不安が押し寄せる』

  • 知りたい事。知っておきたい事。
  • あなたの体で起こっていることをわかりやすくお伝えします。
この記事の目次

1.透析導入が必要になる病気

透析導入患者の原疾患

透析導入の原因となる「3大疾患」

  • 糖尿病性腎臓病
  • 腎硬化症
  • 慢性糸球体腎炎

それぞれ腎臓の働きが悪くなる原因があり、そのことについて、少し詳しくお話しましょう。

①糖尿病性腎症 

糖尿病には、1型糖尿病と、2型糖尿病があります。

1型糖尿病

膵臓にあるインスリンを分泌する細胞が破壊され、インスリンが出なくなるため、慢性的に高血糖状態となることで発症

2型糖尿病

食べ過ぎや飲みすぎ、運動不足やストレスなどが原因となり、膵臓の働きが弱まることや、インスリンの働きを阻害する物質が、身体に蓄積することで発症

糖尿病を発症後、血糖値が高い状態が続くことによって、腎臓にある尿をろ過する糸球体という部分が傷つき、腎臓が働けなくなり、糖尿病の合併症の一つである、糖尿病性腎症を発症します。

糖尿病は、その名の通り、糖が身体に蓄積され、色んな血管を傷つけ、尿を作る腎臓まで影響を及ぼします。

しかし、最近では、健康寿命という言葉が浸透したことや、治療効果も上がったことにより、糖尿病を発症しても、透析が必要になるまでに食事療法や運動療法などを積極的に取り入れるなど、身体を整えることによって、透析導入に至らずに過ごされる方も増えてきています。

また、国レベルで「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定するなどの取り組みが行われ、一般市民も病気に対する意識がどんどん変化しています。

食事療法や運動療法が効果的で、どちらも継続して行うことが大切です。

②腎硬化症

2019年より、慢性糸球体腎炎に代わって第2位となった、あまり聞きなれない腎硬化症とは、どんな病気でしょうか?

腎硬化症は、高血圧が原因となり、腎臓の血管が硬くなります。
それにより、腎臓で動脈硬化を起こし、老廃物などがろ過されにくくなる病気です。

血管は加齢とともに弾力性を失い、硬くなりやすくなります。高齢者人口が増えたことにより、腎硬化症を発症する人が増えたとも考えられています。

そのため、発症年齢も70歳前後と遅く、高齢期に差し掛かったあたりからリスクが上がります。

動脈硬化を予防するには、日本食がよいと言われています。
朝食をパンからご飯に変えてみませんか。 

日本食、和食、お茶漬け、鮭茶漬け

③慢性糸球体腎炎

慢性糸球体腎炎は、腎臓の中にある糸球体が持続的に炎症を生じている状態を指します。

慢性糸球体腎炎は、急性糸球体腎炎の原因となるIgA腎症や膜性増殖性糸球体腎炎などが原因で発症すると考えられています。また、遺伝性腎炎の場合も、慢性糸球体腎炎になる可能性があるため注意が必要です。

症状として、たんぱく尿や血尿が、少なくても一年以上続く状態をいいます。

慢性糸球体腎炎は、一つの病気ではなく、様々な病気の総称です。
タイプによっては、症状が進行しにくいものもあることが分かってきています。

学校や職場の健診によっては、発見されることが多く、異常があれば、速やかに受診をおすすめします。

2.透析が必要となるまでの平均年数

カルテ、問診票

透析導入となる、慢性腎不全=CKD

導入の原因となる3大疾患ついてお話しました。
では、これらの病気になってから、どの程度の期間で透析導入の可能性が高くなるのでしょうか?

① 糖尿病性腎症

1型糖尿病は発症年齢が10代と低く、2型糖尿病とは少し期間の差はあるようですが、だいたい20~30年、早い場合だと6~7年程度で透析が必要になるといわれています。

② 腎硬化症

高血圧が原因であることも関与し、発症年齢の平均年齢が70歳前後と高いのが特徴です。
腎硬化症発症から5年程度(だいたい75歳以上になると)透析が必要といわれています。

③ 慢性糸球体腎炎

健診などの普及や、治療法の進歩、生活習慣の改善により、透析導入を回避することが多くなってきています。
様々な原因で発症する慢性糸球体腎炎の発症年齢は20~30代と若く、日常生活の改善や治療によって完治も可能です。
しかし、全員が治るとは限らず、2~10パーセント前後は腎不全に陥り、透析が必要となります。また、慢性糸球体腎炎は、腎臓の状態によって導入期間が異なり、早い場合は数年で透析が必要になる場合もあります。

近年ではこれらの病気を発症しても、治療効果や生活習慣を見直すことにより透析導入までの期間を延ばす事が可能になってきています。しかし、これらの病気が原因となり、持続的に腎臓がダメージを受けると、慢性腎不全を招き、人工透析が必要となります。

前回記事、「透析と言われる前に起こる身体の変化」でもお話したように、腎臓は主にからだの中の【老廃物】や、余分な【水分】【塩分】をおしっことしてからだの外に出してくれる役割があります。糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎などは、食事や運動などにより、腎臓に与えるダメージを回避する方法がたくさんあるので、それらを参照にして、人工透析を受けずに済むよう、心掛けては如何でしょうか。

3.透析導入前の検査値の目安

腎臓の機能、eGNR、BUN、CCR、Cre、尿検査

「腎機能のeGFRって何?』

皆さんは、透析導入に至るまで、原因となる病気の進行状況を、定期的に受診し検査や血液検査を受けていると思います。しかし、血液検査や尿検査は、腎臓の状態を知るだけではありません。

「前回の検査結果です。」と手渡された用紙を見ても、たくさんのローマ字と数字が並び、医師の説明を受けても、帰る頃には、「どの数値が腎臓の状態を表す数値かわからなくなってしまった。」なんて事はありませんか?

検査用紙によっては、英語の略語で表示されていることが多く、何の検査だったかしら?と看護師の私でも戸惑うことがあります。

では、簡単に、どの検査値が重要か、お話していきたいと思います。

検査用紙に以下の①~④検査値を探してみてください。
検査表によって、ローマ字で記載している場合と、日本語で記載している場合あるので、どちらかの表示で書かれています。

①eGFR(推算糸球体ろ過量)

腎臓の糸球体が不要な老廃物を1分間にどれくい処理できるかを示しています。

また、eGFRの値で、腎臓の機能を5段階に分け、どの程度悪くなっているかを知ることで

きます。

②BUN(血中尿素窒素)正常値は、20㎎/dl以下

血液中にある窒素量を調べる検査です。

尿素窒素は、たんぱく質が使われた後にできる老廃物です。
本来は、糸球体でろ過され尿に排泄されますが、腎臓の機能が低下するとろ過できなくなり、血液の中に溜まってしまします。

③Cre(血清クレアチニン)正常値は、男性1.2㎎/dl以下、女性1.0㎎/dl以下

クレアチニンは、筋肉に含まれているたんぱく質の老廃物です。

クレアチニンも、本来は腎臓の糸球体でろ過され尿中に排泄されますが、腎臓の機能が低下すると、尿から排泄されなくなり、血液中に溜まってしまいます。

8.0㎎/dl以上となると、人工透析が検討されます。

④Crr(クレアチニン・クリアランス)正常値は、100~120㎖/分

糸球体でろ過される血液の量を調べます。

測定には、1日24時間の尿を溜めておき、その中にどの程度クレアチニンが排泄されているかを調べます。クレアチニン・クリアランスは、腎臓の機能を最も正確に把握することができます。

このほかにも、腎生検や超音波などと呼ばれる画像診断があります。

このように、尿や血液検査を定期的に行い、必要時には、画像診断や腎生検を行い、透析が必要か、腎臓の状態を総合的に判断します。

4.透析導入前に起こる体調の変化

ハート、思い、想い

腎臓は自覚症状を感じにくい臓器と言われますが、体調の変化が全く無いわけではありません。

たとえば、なんとなく、朝が起きにくい、朝起きたら目が腫れている、夜中に何度もおしっこに行く、などは、腎臓の働きが悪くなっている可能性があります。

また、むくみは、足などにも現れやすく、足の甲を手の指で押すと指の形が残るようになります。
胃とはあまり関係ないと思いがちですが、むかむかする、吐き気や食欲が落ちる、下痢が続くなどの症状も現れます。
更に、睡眠障害やかゆみ、記憶力の低下や意識障害などがあるようでしたら、早めに主治医に相談することをおすすめします。

5.まとめ

前回の記事、「腎臓とおしっこの話②」でもお話したように、日本腎臓学会の調査によると、国内で約1330万人と推定されている慢性腎不全(CKD)患者のうち、1年間で約3万8000人が末期腎不全に陥り、透析療法を受けています。

慢性腎不全に至る前に、原疾患となる「3大疾患」

  • 糖尿病性腎症
  • 腎硬化症
  • 慢性糸球体腎炎

これらを知ることで、慢性腎不全を早期に予防することが大切です。

予防の方法として、日常生活の過ごし方、特にお食事が大切です。

腎臓を一日でも長く良い状態に維持するために、たんぱく質や塩分の摂り方を工夫し、慢性腎不全を予防しませんか。
具体的な内容は「透析と言われる前に起こる身体の変化①」でお話していますので、参考にされてみてください。



この記事を書いた人

看護師:渡辺ひとみ <経歴> 看護師歴36年 (ICU・CCU・重度心身障障碍者病棟・透析病棟・訪問入浴・地域包括支援センター等) 2021年 寄心合同会社設立 2022年 保育士資格習得 2023年 CIAA認定資格習得 現在 社会福祉士資格チャレンジ中 【きしんコーポレーション事業内容】 ・保険外看護(個別レジリエンスサポート、外出・旅行支援等) ・居宅保育 ・ヨガインストラクターによるヨガ講座・音浴療法  他 ひかりハートケア登録ナース・ <執筆・講座実績> ・地域福祉会館ヨガ講座&看護・介護相談 ・区民センター健康講座 ・某友の会健康講座 等

看護師:渡辺ひとみ

<経歴>

看護師歴36年
ICU・CCU・重度心身障障碍者病棟・透析病棟・訪問入浴・地域包括支援センター等

2021年 寄心合同会社設立
2022年 保育士資格習得
2023年 CIAA認定資格習得

現在 社会福祉士資格チャレンジ中

【きしんコーポレーション事業内容】

・保険外看護(個別レジリエンスサポート、外出・旅行支援等)
・居宅保育
・ヨガインストラクターによるヨガ講座・音浴療法  他

ひかりハートケア登録ナース

<執筆・講座実績>

・地域福祉会館ヨガ講座&看護・介護相談

・区民センター健康講座

・某友の会健康講座 等

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