なんでこんな時に!と夜間や休日に体調不良や不慮の事故を経験したことはありませんか?
平日の日中であれば多くの病院が診察していますが、急な体調不良や不慮の事故などは時間や曜日を選ばないものでいつ起こるのかわかりません。
また、このような時は焦り、不安、恐怖が押し寄せるので、冷静な判断が難しくなることがあります。
私の勤務するコールセンターでの健康相談では、
―受診したほうが良いですか?
―どこの病院にいった方が良いですか?
―救急車呼んだ方がいいですか?
という相談をよく耳にします。
ご自身が辛い、もしくはご家族様や身近な方が辛いと言っている中、どうしたらいいかわからない状況はより不安が強くなります。
この「病院選び」シリーズでは、受診が必要な時に備えられるようなポイントをお伝えできればと思っております。
今回のコラムでは、意外と知られていない病院ごとの役割や緊急度・重症度についてまとめています。
急な体調不良や不慮の事故など万が一の時に受診先のご参考になれれば幸いでございます。
この記事の目次
医療現場は「重症度」と「緊急度」の2つで判断する
「重症」や「緊急」という言葉を聞いたらどのようなイメージがありますか?
医療のドラマでもよく使われている通り、実際の医療現場でもよく使われています。
実際の医療現場では、簡単な問診で患者様の「重症度」と「緊急度」を評価し、診察や看護の優先順位を決めています。
重症度と緊急度の基準を知れば、急ぎで受診すべきか、翌日の受診でもよいかと悩まれた場合、受診するタイミングの参考になるかと思います。
「重症度」
重症度とは、症状や怪我の状態がどのくらい生命に影響するかを示しています。
大きく分けて重篤・重症・中等度・非緊急の4種類に分類されています。
重症度 | 定義 | 目安 |
---|
重篤 | 生命の危険が切迫しているもの | 直ちに診察、治療が必要 |
重症 | 生命の危険の可能性があるもの | 3週間以上の入院が必要 |
中等度 | 生命の危険はないが入院を要するもの | 症状があるも具合はよさそう |
非緊急 | 入院を要しないもの | |
傷病者重症度分類表より抜粋 一部編集
「緊急度」
重症度と併せて評価しているのは緊急度です。
緊急度とは、病状の進むスピードを指します。
つまり、これから重症化していくかどうか、どのくらい時間をかけて重症化していくかを評価します。
緊急度は大きく分けて緊急、準緊急、低緊急、非緊急の4種類あります。
重症度 | 目安 | 例 |
---|
緊急 | すでに生命危険に瀕している状況 | 胸痛・激しい頭痛、激しい腹痛、自殺行為、中等度の意識障害など |
準緊急 | 時間経過によって生命予後に影響する状況 | 症状のない高血圧、手足の変形、中等度の頭痛、中等度の腹痛、けいれん後(意識が回復したもの)など |
低緊急 | 上記には該当しないが受診が必要な状況 | 縫合を要する傷(止血できた傷)、尿路感染症、不穏状態など |
非緊急 | 医療が必要ではない状況 | 軽度のアレルギー反応、縫合を要さない傷、処方・検査希望など |
緊急度判定支援システムより抜粋 一部編集
今の症状はどのくらい重症なのか、どのくらい緊急なのか。
急な体調不良や不慮の事故の場合、これらの表を参考に一度立ち止まって状況の評価してみましょう。
症状の重症度と緊急度を検討していただくと、客観的に状況が見えるようになります。
状況が客観的に見えるようになると、少し冷静さを取り戻すことができます。
ご自身の状況が大体わかったところで、次の表をご覧ください。
受診の目安について下記のように定義されています。
重症度 | 定義 | 目安 |
---|
赤 | 直ちに受診が必要です。 今すぐ救急車等で病院に受診してください。 | |
黄色 | 受診が必要です。 | |
緑 | 緊急ではないが、医療機関に受診してください。 夜間でしたら翌日の診療でもかまいません。 | |
白 | 家庭内での経過観察、または通常診療時間内での受診を勧めます。 | |
緊急度判定プロトコルver3緊急受診ガイド(家庭自己判断)P2より抜粋
重症度と緊急度、受診の目安を知っていただいたところで、次に病院の役割についてお伝えいたします。
病院は大きく分けて3種類ある
皆様のお住まいの地域には、かかりつけの診療所、近所のクリニック、大学病院、総合病院、夜間診療所など様々な病院があるかと思います。
実は各病院にはそれぞれ役割があることをごご存知でしょうか?
病院は、一次救急、二次救急、三次救急の3つに分類されます。
主に重症度・緊急度で分類されており、時には来院方法や対応している診療科目・治療内容によっても異なる場合があります。
一次(初期)救急の病院
自力で通院できて入院や手術が不要の重症度・緊急度の方を受け入れ対応する病院です。
つまり、重症度・緊急度がそれほど高くない場合に受診するところです。
一般的な近所にあるクリニックや診療所などがこれに該当します。
町のかかりつけの役割があります。
また、夜間や休日・祝日に診療している「休日夜間急患センター」も含まれます。
施設の数は二次救急や三次救急と比べて多く、患者様を多く受け入れられます。
病院の規模は小さく、入院病床や処置器具も限られており、医療スタッフも少ないです。
二次救急の病院
都道府県から二次救急の指定を受けた病院を指します。
特徴としては、緊急の入院や手術が必要な重症度・緊急度の方を受け入れ、必要な医療を提供できるという点です。
休日や夜間でも重症もしくは準緊急以上の症状がある方を受け入れられる体制を整えています。
基本的には24時間365日体制で入院や手術の対応も可能ですが、地域によっては複数の病院が当番制となっている場合があります。
診療時間内であれば紹介状が必要な病院もあります。
休日や夜間だと救急車もしくは救急外来への受診となります。
三次救急の病院
先ほどご紹介した一次救急の病院や二次救急の病院でも対応困難な高緊急・高重症の方に医療を提供する病院です。
三次救急を請け負うのは救命救急センターです。
そのなかでも高度救命救急センターという特に高度な診療機能と設備を備えている病院があります。
ここでは広範囲のやけどなど特殊な治療が必要な方も受け入れています。
2019年の統計では医療施設は約18万施設あると発表されています。
救命救急センターと認定を受けている病院の数は2022年4月1日時点では299施設あります。
この数値からもわかるように、三次救急の病院はかなり貴重な医療資源なのです。
まとめ
今回のコラムでお伝えした内容は、
- 重症度と緊急度で受診する病院が変わる
- 低緊急や非緊急の方は一次(初期)救急へ
- 重篤もしくは重症な方、高緊急や準緊急の方は二次・三次救急へ
です。
どんな重症度や緊急度の方でも適切な医療を受けられるように病院それぞれに役割があります。
急な体調不良や不慮の事故の場合、痛みや苦しみが押し寄せ、心の余裕がなくなり、適切な判断が難しくなります。
実際に二次救急や三次救急の救急外来を受診する約50%以上が非緊急以下の方、いわゆる軽症者が占めていると統計で出ています。
また、救急要請についても同じことが起こっており、今一度必要かどうかを検討してほしいと呼びかけられています。
結果的に重篤・重症な方への対応に遅れが生じてしまい、適切な医療を受けられず重症化・命の危機まで晒されてしまう場合もあります。
ひとりひとりが適切なタイミングで適切な病院の受診をしていただくことで、どこかの本当に重篤・高緊急の方を助けることができます。
知っているか知らないかで急な体調不良や不慮の事故の時でも心の余裕が生まれてきます。
ご自身の身の回りで万が一の時に思い出していただき、少しでも不安や恐怖が軽減し、適切な病院に受診できることを願っております。
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【参考】
・東京消防庁
・厚生労働省 救急医療体制の現状と課題について
・厚生労働省 初期救急医療体制の現状
・厚生労働省 救命救急センター及び二次救急病院の現状
・厚生労働省 重症度と緊急度
この記事を書いた人
冨永美紀
母親の入院で関わった看護師に心を打たれ、看護師資格を取得。
看護師の現場で、臨場の場に立ち会うことで『生死』について興味が沸く。
恩師の紹介でお寺とのご縁が結ばれ、2020年から密教塾生となり修行の世界へ。
現在は仕事と修行を両立するため岐阜県へ移住し、夫と犬2匹と自然豊かな場所で暮らす。
<経歴>
看護師歴10年
・腎臓内科、糖尿病内科、内分泌科病棟
・救急救命センター
・自由診療のクリニック
・コールセンター
・訪問看護ステーション
・家事代行業