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看護師が解説!肝臓がん②肝臓がんの原因とリスク因子

肝臓がん②肝臓がんの原因とリスク因子

前回の記事では、肝臓の機能について紹介しました。

今回からは連載のテーマである肝臓がんに関連する内容をお伝えします。
令和4年(2022年)人口動態統計によると、日本人の死因のトップは男女ともに、がん(悪性腫瘍)です。
死亡者数のおよそ25%ががんで亡くなっています。

主な死因の構成割合

令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況

その中でも肝臓がんで亡くなる人は、肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がんに次いで5番目に多く、さらに肝臓がんで亡くなる人の多くがB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染していたということが分かっています。

肝臓がんは何が原因でどのようにして発症するのでしょうか。
肝臓の病気と肝臓がんはどのような関連があるのでしょうか。

今回は、肝臓がんの原因とリスク因子について詳しく説明します。

この記事の目次

1. 肝臓がんの主な原因

肝臓?

肝臓がんの発生には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響していると言われています。
肝臓の炎症が慢性的になることで、肝臓がんを引き起こす可能性が高くなります。

肝臓がんの主な原因となる肝臓病

  • B型肝炎
  • C型肝炎
  • アルコール性肝障害
  • 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
  • 肝硬変

それでは1つずつ詳しく説明していきます。

(1) B型肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)への感染は、HBVの含まれる血液や体液が体内に入ることにより起こります。
輸血による感染や出産の際の母子感染が多くありましたが、現在は輸血のHBV検査がされており、輸血による感染はほぼありません。
母子感染も、現在ではワクチンなどが普及しているため激減しています。
しかし、現在でも新規の感染者は年間10,000人いると言われています。
大人のHBVの感染は、HBVに感染したパートナーとの性交渉の際に起こることが一般的です。

B型肝炎ウイルスは感染しても、ウイルスが直接肝臓を攻撃することはなく、B型肝炎に感染した人の70~80%は症状がないまま鎮静化します。ところがウイルスを異物と認識し、免疫反応が起こると、ウイルスへの攻撃が始まり、ウイルスと一緒に肝細胞が破壊され炎症が起こります。これがB型肝炎です。

B型肝炎を発症した人のうち、約10%は慢性肝炎に移行し、放置すれば肝硬変、肝がんに移行する可能性があります。肝がんの原因の約15%はB型肝炎と言われています。

(2) C型肝炎

C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することで発症する肝炎です。
日本でC型肝炎ウイルスに感染している人は、症状のないキャリア(持続感染者)を含めると150~200万人と推定されています。そのうち医療機関で治療を受けている人は約16万人程です。

C型肝炎はHCVに感染した血液が体内に入ることで感染します。C型肝炎を発症している方は、過去の輸血や注射の使いまわしが原因と考えられます。
現在は一般的な生活の中では感染の機会はほとんどないと言われています。

C型肝炎ウイルスに感染すると、60~70%の人は慢性化し、放置すれば約40%が数十年という時間をかけて肝硬変になり、さらにそのうちの8%の人が肝がんになるといわれています。

肝がんの原因の約60%はC型肝炎ウイルスの持続感染によるものとされています。


一方で、適切な治療を受けることで病気の進行を止める、遅らせることができると言われています。

健康な肝臓、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん

(3) アルコール性肝障害

アルコール性肝障害は、アルコールが原因で起こる様々な肝臓疾患の総称です。
具体的には、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝線維症、アルコール性肝硬変などです。

脂肪肝とは、肝細胞の中に脂肪が過剰にたまった状態をいいます。
健康な肝細胞でも5%程度の脂肪を含んでいますが、30%以上が脂肪化していると脂肪肝と診断されます。
アルコール性脂肪肝はアルコ―ルを常習的に大量摂取することによって肝細胞に脂肪が蓄積した状態です。

アルコール性脂肪肝は自覚症状がほとんどないため、多量飲酒を続けると30%~40%が肝線維症に、10~20%がアルコール性肝炎に進行し、やがて肝硬変などや肝がんに移行するリスクが高くなります。
治療の基本は断酒で、アルコールをやめると状態が改善する可能性が高いと言われています。

(4) 非アルコ―ル性脂肪肝炎(NASH)

脂肪肝の原因はアルコール性のものと、非アルコール性のものに分けられます。
アルコールが原因でない脂肪肝を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」といい、その中で炎症や線維化(長期間の炎症で肝臓が硬くなること)をともなうものを「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と言います。

日本人は成人の30%が脂肪肝と言われており、日本のNAFLDの患者数は1000~2000万人と推計されています。そのうちNASHに移行するのは200~400万人と考えられています。
NASHを放置すると、10年後には肝硬変や肝がんに進むリスクが高くなります。
近年、肝炎ウイルスに感染していない肝がんが増加しており、NASHとの関連が指摘されています。

現時点ではNASHを治療する薬はないと言われていますが、肥満や糖尿病、脂質異常症との関連も指摘されており食事療法や運動療法で改善する可能性があります。

(5) 肝硬変

肝臓は再生能力が高いため、細胞が壊されても修復し機能を回復する能力があります。
しかし慢性的な炎症で細胞の破壊と修復を繰り替えしていると、修復したときにできる「線維」というタンパク質が肝臓を覆っていきます。その結果、肝臓はだんだん硬く小さくなります。この状態が肝硬変です。

そして、長期間の炎症の結果、肝細胞の遺伝子に傷がつき肝がんが生じるリスクが高くなります。

肝硬変の原因はC型肝炎ウイルスによるものが多いですが、最近は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)による肝硬変も増えています。

2. 肝臓がんに繋がる生活習慣とリスク因子

看護師、ナース

肝臓がんの発症には、生活習慣やその他の要因も肝臓がんの発症に関係があると言われています。

(1) アルコールの摂取

アルコールは肝臓で分解されるため、アルコールの過剰摂取は肝臓に負担を掛けます。
アルコールが原因で起こる脂肪肝や肝障害は断酒以外に治療法はありません。
また量は少なくても、肝臓に疾患がある場合は肝臓の負担を減らすためにアルコール摂取は控えた方がよいでしょう。

(2) 肥満

非アルコール性脂肪肝の原因として肥満が挙げられます。
肥満と診断された人の20~30%に脂肪肝が認められており、メタボリックシンドロームと肝臓疾患も関連が深いと言われています。

(3) 糖尿病

糖尿病がある人は肝がんの発生リスクが高いと指摘されています。
糖尿病も生活習慣と深く関連のある疾患です。

3. 早期発見の重要性

健康診断、血液検査

肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、肝臓に炎症や疾患があってもあまり症状が表れません。

そのため、定期的に健康診断を受け肝機能のチェックしておくことが大切です。

血液検査で肝臓の状態をある程度知ることができます。血液検査の結果でさらに詳しい検査が必要となった場合は、画像検査などを行うことでより正しく状態を調べることができます。

またエランオンラインショップでもご自宅で気軽に検査できる、検査キットを販売しております。
詳細は以下のボタンからご確認ください。

4. まとめ

肝臓

肝臓がんの主な原因とリスク因子について解説をしました。

肝臓がんの主な原因その他の関連する主な生活習慣やリスク因子
B型肝炎飲酒
C型肝炎肥満
アルコール性肝障害糖尿病
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
肝硬変

普段の生活の中で肝臓を意識することはあまりないでしょう。

しかし、肝臓はがまん強い臓器で、炎症があってもあまり症状がないため、知らない間に肝臓がダメージを受けていたということもあるかもしれません。

健診などで定期的に肝臓の状態を調べることや、生活の中で肝臓に負担をかけない予防策を知っておくことが大切です。

この記事が、肝臓がんを理解するきっかけになれば幸いです。
次回は肝臓がんと肝臓がんの症状について解説します。

<参考文献>
厚生労働省,令和4年(2022年)人口動態統計(確定数)の概況、第7表
 (2024年5月18日利用)
国立研究開発法人国立国際医療研究センター 肝炎情報センター
 (2024年5月18日利用)
日本肝臓学会,肝がん白書令和4年度
 (2024年5月18日利用)
④阪本良弘、山本夏代(2022)『解剖生理も、最新の治療も、患者ケアも 決定版!ぜんぶ知りたい肝・胆・膵』株式会社メディカ出版
⑤高橋秀雄(2022)『患者のための最新医学 肝炎・肝硬変・肝がん』株式会社高橋書店



この記事を書いた人

清水千夏
<プロフィール>

看護師経験15年(大学病院9年、訪問看護4年)
大学病院で、急性期(消化器外科、心臓血管外科、HCU)から退院支援部門まで幅広く経験を積む。その後、訪問看護ステーションに転職。

現在は立ち上げから関わっている訪問看護ステーションで勤務。0歳から100歳まで様々な年齢の方を対象に、住み慣れた自宅で暮らし続けるための支援を提供している。

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