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看護師がわかりやすく解説!心筋梗塞④突然死を防ぐために

前回の記事で、心筋梗塞の症状があればなるべく早く対応する必要性を理由とともにお伝えしました。

今回の記事は、急性心筋梗塞で気をつけるべき突然死についてです。
突然死と聞くと怖いと思いますが、予防方法をお伝えします。

是非生活の中に取り入れてもらいたいと思います。

この記事の目次

1.突然死

突然死について

突然死の定義は、事故や自殺などではなく、何らかの病気によって、発症から24時間以内に死亡した場合をいいます。

日本の死因の第1位はがん(悪性腫瘍)、そして第2位が心臓疾患となっています。
心筋梗塞が癌や他の病気と異なる点は、突然死のリスクがとても高いということです。

(1) 突然死の多くは心臓突然死

突然死の中で6割以上が心筋梗塞、心筋症、弁膜症、心不全など心臓に関連するものです。
心臓突然死と総称します。

突然死ですので、発症しているときに心電図検査で心筋梗塞を見る間もなく、救急要請など早急な対処を行う必要がありますので、心筋梗塞と断定できないところがあります。
病名の断定より早急に治療・救命が優先されるからです。
亡くなったあとに解剖をご家族様が希望すれば行い、心筋梗塞を起こしていたとわかる方もおられます。
(※ご遺体の解剖は事件性がない限り、医師より話があればご家族の同意のもと行われます)

(2) 交通事故との比較

心臓突然死は日本AED財団によると年間7.9万人の方が命を落とされています。

1日に換算すると約200人、7分に1人は突然死で命を落とされています。
警視庁交通局企画課の「令和4年中の交通事故死者数について」によると、交通事故による年間の死者数で24時間以内に亡くなられている方は2,610人となっています。
このように比較すると、心臓突然死がとても多いことがわかります。

(3) なぜ心筋梗塞になると突然死が多くなるのか

なぜ他の病気と違い、突然死が多いのでしょうか。

2記事目の「急性心筋梗塞の原因と対処方法」の「1.心筋梗塞ってどんな状態?」でお伝えしましたが、「心臓に酸素を送る血管が詰まり、心筋が壊死する病気」と言えます。この血管が詰まる病気で狭心症がありますが、こちらは完全に血管が詰まるわけではなく狭くなっている状態なので血液は通常よりは少なくとも心臓へ流れています。しかし、心筋梗塞は完全に血管が詰まっているので、心臓に血液・酸素が送り込まれない状態となります。
そうすると、心臓は全身と脳へ血液を送り出している人間の要の臓器ですが、その機能が停止するため、亡くなられる方が多くなります。

また、心筋梗塞が発症すると致死的(命に早急に関わる)不整脈が起こることがあります。
その中でも心室細動という不整脈がおこると心臓は血液を送り出せなくなり突然死のリスクが上がります。

大切なこと

  • 心臓突然死の予防方法を知り、日常生活の中に取り入れること
  • 万が一発症したときに対応できるようにしておくこと

次に①②についてお伝えしていきます。

2.突然死が起こる3大原因と対策

突然死の三大原因

心筋梗塞の原因は一言でいうと「動脈硬化」でしたね。その原因は様々あります。
2記事目の「急性心筋梗塞の原因と対処方法」に動脈硬化の原因と予防方法についてお伝えしていますので、ご参照いただけたらと思います。
動脈硬化は長年にわたる喫煙や食習慣などの生活習慣の蓄積で起こりますが、本記事では、突然死を防ぐための対処方法に的を絞ってお伝えします。

(1)寒さ

心筋梗塞は冬に多くなります。暖かいところから寒いところへ移動する時、急激な血圧の上昇が原因です。
これを「ヒートショック」と言います。
寒さで血管が収縮しやすく心筋梗塞の発症リスクをあげます。

対策方法

  • 外出時はコート・マフラー・カイロなどで防寒対策を行う。
  • リビングと脱衣所・お風呂場では寒暖差があるため、脱衣所に簡易的な電気ストーブをつける、お風呂場に入る前にシャワーをかけて温めるなど行い、寒暖差を防ぐ。
  • お風呂の温度は38~40度が適温と言われている。42度以上は血圧上昇のリスクがある。
  • 寒いからと急激に入浴すると、寒暖差があり心臓に負担をかけるので、シャワーを浴びる・掛け湯をするなど体をある程度温めてから入浴する。
  • 浴槽から急激に立ち上がると、入浴により血管が広がっており血圧低下がおこるため、一時的な虚血(心臓の酸素不足)状態に陥ることがあるため、ゆっくりと立ち上がる。
  • 入眠時、お布団に湯たんぽや電気あんかなどで保温する。ただし素肌に直接触れると低温やけどのリスクがありますので、注意が必要。

(2)水分不足

水分不足の状態では、血液の粘稠度が濃くなり、血液が固まりやすく血栓と呼ばれる血液の塊ができることがあります。
血管に詰まると心筋梗塞の原因となります。水分不足に陥りやすい高齢者特有の原因、そこから対策をお伝えします。

高齢者が水分不足になりやすい原因3つ

  • 年を重ねるごとに減少する体内水分量
    体内水分量は新生児(生後28日以内)約75%、4~5歳児約70%、成人約60%、高齢者は約50%と人は年を重ねるごとに減少します。若い頃より脱水になりやすいといえます。
  • 喉の渇きを感じにくい理由
    高齢者は「口渇中枢」と呼ばれる喉の渇きを感じる中枢の機能が低下するため、実際は喉が渇いていても感じにくく水分摂取が遅れることがあります。
    意識して水分を摂取する必要があります。
  • 内服や高齢者特有の病気が引き起こす水分不足
    多くの高齢者は血圧を下げる薬を飲まれています。尿をよく出す利尿作用にて血圧を下げる作用の薬がありますが、脱水のリスクもあります。糖尿病の場合は、体内の糖分を排泄しようと尿量が増加しやすくなります。男性に多い前立腺肥大による頻尿、またパーキンソン病や脳卒中など中枢神経の病気では過活動膀胱(急激に尿意を感じ何度もトイレに行く、トイレに間に合わず尿失禁をする病態のこと)により頻尿になりやすくなります。

対策

  1. 入浴前後や就寝前、起床時にコップ一杯のお白湯や水分を摂取しましょう。私たちは汗をかいていないようでも、皮膚や吐く息から水分が蒸発しています。これを不感蒸泄といいます。1日に約1Lの水分が失われています。夜間頻尿の方は、入眠前の水分摂取をあまりされない傾向にあります。夜寝る前まで水分摂取量を少し控え、入眠前にコップ1杯の水を飲むといいでしょう。
  2. 水分ばかりとれないというかたは、食事の時にお味噌汁やスープを飲む・食事前後に一緒にお茶などの水分を摂取するなどを心がけてみましょう。
  3. 飲酒は脱水のリスクがあります。アルコールは肝臓で分解されるとき水分が同時に排泄され脱水傾向となります。瓶ビール1本を分解するのに、約1.5本分の排尿があることがわかっています。適宜アルコールと水分を一緒に摂取する、もしくは入眠前のアルコールは控えましょう。

(3)心臓発作の起こりやすい時間

早朝5時ぐらいから10時ぐらいまでは心筋梗塞が起こりやすい魔の時間と呼ばれています。
理由を、以下にまとめました。

  • 朝体を動かす時に交感神経が働きます。この交感神経は血管を収縮させる働きがあり、血圧が上がりやすい
  • 夜間汗をかきその影響で脱水となり、血液が固まりやすく血栓ができやすい
  • 気温が下がる為、寒さで血管が収縮しやすい

(1)(2)と重なりますが、起床時はゆっくり体を起こす。
コップ一杯の水分を摂取する、暖房などをつける・厚手の寝衣を着て別の部屋へ移動する際の寒暖差を少なくする、などを行い対策しましょう。

3.心臓発作時の対処方法

心臓発作時の対処方法、AED、心臓マッサージ

心臓病による突然死される場所で、約74%は自宅で発生しています。
しかし、救急車が現場に到着する時間は令和4年版、救急・救助の現況によると、全国平均約9.4分です。
更に、冬は他の疾患、脳梗塞、気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎など呼吸器の病気も悪化しやすい時期となり、救急要請件数が増加することは容易に想像できます。

心停止時にできること

  • 119番で救急要請
  • 臓マッサージ(胸骨圧迫)
  • AEDによる電気ショックです

119番通報までにできることは3記事目の「急性心筋梗塞の起こりやすい症状と対処方法」の4.対処方法を参照いただければと思います。

 胸骨圧迫をすることで2倍近くの救命率を伸ばせます。
また、AEDを使用することで突然の心停止の半分以上を救命することができます。家庭用AEDをレンタルできる企業もあります。
またICD(植込み型除細動器)とよばれる、体内に埋め込み常に心臓の動きを探知し、致死性の不整脈が察知されれば電気ショックを行い心臓突然死を防ぐ医療機器があります。
もちろん循環器医師の診療・判断が必要ですが、こういった医療があるということをお伝えしておきます。

4.まとめ

本記事は心筋梗塞により起こりやすい突然死の原因と対策に関してお伝えしました。

生活の中で習慣化することで取り入れやすいと思いますので、是非日常生活の中に取り入れてもらいたいと思います。

※家庭用AEDをレンタルできる会社1例
セコムホームセキュリティ



この記事を書いた人

山川さちえ 看護師経験 15 年(訪問看護2年、管理者1年) がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座(2023 年) 誰でもわかる/退院前から介護利用までの 50 のチェックリスト作成

山川さちえ
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」

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