目次

看護師がわかりやすく解説! 精神疾患③ 精神疾患をもつ方とのコミュニケーション

精神疾患を持つ方の関わり方について困ったことがある、または悩んでいる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

精神疾患をもつ方は人との関わり合いやコミュニケーションが苦手であるといった特徴があります。
この記事では精神疾患をもつ方とのとコミュニケーション方法のポイントを理解し、ご家族が精神疾患をもつ方に安心して関わる方法をお伝えします。

この記事の目次

1.はじめに

2022年にうつ病患者の家族向けコミュニティサイト「encourage(エンカレッジ)」を利用するユーザーを対象に、うつ病や双極性障害を抱えるご家族への接し方・治療のサポートに関する調査を行っています。

その結果はご家族の7割以上が「コミュニケーションに起因すること」を困りごととしてあげています

具体的には、

精神疾患をもつ方の自己否定や家族を罵倒するような言葉でご家族がネガティブな影響を受け
・ご家族の回復を急かす言葉や否定するような言葉で精神疾患をもつ方の症状が悪化する

上記を懸念する回答が多くなっています。

この結果は、多くのご家族が精神疾患をもつ方と会話をする時に、お互いの「言葉」によって「怒り」や「不安」「「悲しみ」などの感情を抱えたり、抱える可能性を心配したりしているということです。

しかしコミュニケーションとは「言葉」のやりとりだけではありません。

ご家族が安心して関わるコミュニケーションとはどのような方法があるのでしょうか。

精神疾患 コミュニケーションを考える
精神疾患 コミュニケーションを考える

2.コミュニケーションが円滑になるとどうなるのか

コミュニケーションとは「伝達」を意味する言葉です。

自分の頭や心の中にある感情や情報、意見などを整理し他者へと伝えることがコミュニケーションの本質です。

コミュニケーションの手段はさまざまなものがあり、言葉だけでなく、身振りや表情などで意思・情報を伝えることもコミュニケーションの1つです。

コミュニケーションがスムーズにできれば、精神疾患をもつ方とご家族の関係は今より良好になります。

精神疾患をもつ方がコミュニケーションをとる時に、

・何に困っているのか
・どんな説明をしてもらったらわかりやすいのか


について、ご家族が理解していると、コミュニケーションで迷わない、つまりスムーズになります。

また、ご家族がコミュニケーションの方法やその方法の理由を理解していれば、精神疾患をもつ方から受けるネガティブな影響や、症状が悪化することを懸念する問題の解決につながります。
これはコミュニケーションによって関係が良好になることにつながります。

3.精神疾患を持つ方のコミュニケーションの特徴

精神疾患をもつ方は、自分の気持ちや考えを表現するのが苦手な場合があります。

また、病気の影響で警戒心が強かったり、関係ないことも自分に関連づけて考えたりすることがあり、他人とうまく人間関係を築くことが難しい場合もあります。

精神疾患をもつ方のコミュニケーションをとる時の代表的な特徴

  • 自分からうまく話せない
  • 話がうまくまとまらない
  • 思っていることをうまく伝えられない
  • 一度にたくさんのことを言われるとわからなくなってしまう
  • 聞いたことを全て覚えることができない

4.コミュニケーションで心がけること

ご家族がコミュニケーションをとる時に心がけたい10のこと

①声は前からかける

後ろから声をかけると、精神疾患をもつ方は非常に驚いてしまう場合があるため。

②ゆっくり優しい口調で話しかける。強い口調や相手をとがめるような表情・口調はしない
 
③声量の調節がつきにくく大きな声を出している時には、小さめの声で話しかけるとよい場合がある
 
④話すのに時間がかかる場合でも、ゆっくり待って応対する

精神疾患をもつ方が安心して話ができるように、リラックスした雰囲気を作るため。

⑤言葉が出ずに困っている様子の時は、「はい」「いいえ」で答えられる質問をする

精神疾患をもつ方が、簡単に答えらえるようにするため。

⑥ゆっくり・はっきり・短く・具体的に話す

精神疾患をもつ方は、たくさんのことを一度に言われるとわからなくなってしまう場合があるため。

⑦伝わっていないと感じたら、ポイントをくりかえして伝える

精神疾患をもつ方は、伝わっていないのに相槌(あいづち)をうってしまう場合があるため。

⑧視覚的にわかる方法で伝える

精神疾患をもつ方は、メモやホワイトボードの使用や、絵や図を用いたり、実物を見せたりすると、言葉だけの時より理解をしやすいため。

⑨幻覚や妄想だと思われる話は、まずは耳を傾ける
 
⑩注意をする時は「〇〇してはいけない」という否定的な言葉を使わず、「〇〇しましょう」いう肯定的な言葉でやさしく注意する。

精神疾患をもつ方の話や行動を尊重することが、ご家族との信頼関係を深めるため。

5.まとめ

コミュニケーションには言葉のやりとりと言葉以外のやりとりがあるのは先ほどお伝えしました。

普段の会話では、話の内容を重視することが多いと思いますが、同時に話している時の声の大きさや、速さ、表情やしぐさからも気持ちを読み取ることができます。

今回お伝えした内容は、ご家族が精神疾患をもつ方とコミュニケーションをとる際、無意識的に、あるいは直感的に行っていることを文章にまとめています。

精神疾患をもつ方のコミュニケーションの特徴は理解が必要ですが、何となくしている・できていることを意識的にすると、相手を理解し、より信頼を深められるためコミュニケーションが円滑になります。

結果として、ご家族が精神疾患をもつ方に安心して関わることができます。

精神疾患③ 精神疾患をもつ方とのコミュニケーション

6.おわりに

これまで病気について、体調確認、コミュニケーションについてご家族が安心して生活するための情報をお伝えしてきました。

しかし精神疾患をもつ方と生活を共にしていると、頑張りすぎて心と身体が疲れているご家族もいらっしゃるのではないでしょうか。精神疾患をもつ方を支えるにはご自身の体調を整えることも大切です。

次回はご家族が健康に生活できる情報をお伝えします。


この記事を書いた人

清水明日香 プロフィール 看護師経験23年。総合病院(消化器外科・内科、整形外科)、リハビリテーション病院(地域包括支援病棟)、老人施設で勤務。 現在は精神科訪問看護師として月に約100件の訪問をしている。 精神科訪問看護では、薬物療法などの治療が継続して受けられるようにする支援、ご利用者様やご家族の悩みや困りごとを一緒に明確にし、解決する方法を考え、行動できるように支援している。 ウェルネスナースとして女性が健康でいるための情報を発信している。 執筆・講座 「いつも疲れを感じている40代女性がセルフケアを身につけ元気を取り戻すためのお話会」/ウェルネス講座 「自分で心とからだを元気にするためのブログ」/note

清水明日香

プロフィール

看護師経験23年。総合病院(消化器外科・内科、整形外科)、リハビリテーション病院(地域包括支援病棟)、老人施設で勤務。

現在は精神科訪問看護師として月に約100件の訪問をしている。

精神科訪問看護では、薬物療法などの治療が継続して受けられるようにする支援、ご利用者様やご家族の悩みや困りごとを一緒に明確にし、解決する方法を考え、行動できるように支援している。

ウェルネスナースとして女性が健康でいるための情報を発信している。

執筆・講座
「いつも疲れを感じている40代女性がセルフケアを身につけ元気を取り戻すためのお話会」/ウェルネス講座
「自分で心とからだを元気にするためのブログ」/note

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