脳卒中に関する記事も、最終章5本目となりました。
前回の記事
看護師が解説!脳卒中④脳卒中予防-健康診断を受けたらココをチェック!
脳卒中記事シリーズ、第4回目となりました。第1回目の脳卒中とは?の概論から、症状、脳卒中になった時の入院から退院までをお伝えさせて頂きました。 「健康診断は毎…
日本人の死因第4位、介護が必要になる病気第2位である脳卒中。
第1回目の記事から本記事まで、
「脳卒中は、命に直結する病気であるということ」
「家族を含めた、日常生活に大きな影響を与える病気だということ」
を知って頂けたのではないかと思います。
自分が脳卒中に罹ることももちろん避けたいですが、ご家族が脳卒中になった場合もまた大変なことです。
総務省の発表によると、2022年10月1日時点の日本の総人口(外国人を含む)は1億2494万7,000人と、2021年10月と比べて55万6,000人減少したとのことです。
2022年の死亡数は、156万8,961人。脳卒中での死亡は、6.8%である10万7,473人。
死亡数第一位の悪性新生物(がん)は24.6%である38万5,787人。
死亡数だけで比較すると、脳卒中は悪性新生物の1/3以下です。
しかし、「就業構造基本調査」によると、介護をしている者は239万9,000人。
厚生労働省の「介護が必要になった主な原因」の最新版(2022年)によると、要介護・要支援の総数第1位は認知症、第2位が脳卒中となります。
経済産業省によると、生産年齢人口の減少が続く中で、ビジネスケアラー(仕事をしながら家族等の介護に従事する者)の数は増加傾向であり2030年時点で270万人、経済損失額は2030年時点で9兆円に迫ると推計しています。介護に起因した労働総量や生産性の減少が日本の労働損失に有する影響は甚大です。
脳卒中を予防し、ご自身も、ご家族も心身ともに健康で社会生活を送れるようにしたいものです。
脳卒中を予防することは、心筋梗塞や大動脈瘤などの怖い血管病変の予防にもつながります。
この最終章では、どうしたら脳卒中を予防できるのかについてお伝えしたいと思います。
この記事の目次
1. 脳卒中予防十10か条
「脳卒中予防10か条」をご存知ですか?
これは、日本の脳卒中予防の知識を普及するために日本脳卒中協会が2003年に作成したものです。
脳卒中予防は、生活習慣の改善、生活習慣病の治療が中心となってきます。
脳卒中予防10か条(公益社団法人日本脳卒中協会)
- 手始めに 高血圧から 治しましょう
- 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
- 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
- 予防には タバコを止める 意志を持て
- アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
- 高すぎる コレステロールも 見逃すな
- お食事の 塩分・脂肪 控えめに
- 体力に 合った運動 続けよう
- 万病の 引き金になる 太りすぎ
- 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
耳に残りやすい、5・7・5の俳句リズムになっています。
では、一つずつ説明します。
①手始めに 高血圧から 治しましょう
「血圧を正常値に保つこと」が、脳卒中予防の肝心要となります。
頭痛やしびれ、めまいなどの症状で脳神経外科に受診した患者さんの血圧を測ると、20代、30代でも140/80を超えている方がしばしばいらっしゃいます。(病院で血圧測定すると、高値となる白衣高血圧を除く)
たとえば健康診断で「高血圧の疑い。要精密検査」という結果になったとしても、二次検査に進む方はどれくらいいるのでしょうか。
自覚症状がでないため、放置されてしまう高血圧。しかし、高血圧は立派な「病気」です。
高血圧とは、血管の弾力が失われた状態になる動脈硬化を引き起こします。
② 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
糖尿病も自覚症状がないことが多く、症状が出た時には糖尿病となっているケースもよくあります。
空腹時の血糖値が140mg/dlを超える高血糖が長く続く状態や口が乾く、異常な水分摂取量、排尿が多い(尿量が1日3ℓ以上)、体重減少などの症状は要注意です。
③ 不整脈 みつかり次第 すぐ受診
脈が速く感じる、心臓がドキドキしたりめまいなどを感じたことはありませんか?不整脈には種類がありますが、脳卒中と関係のある不整脈は「心房細動」と呼ばれています。
心臓が小刻みに震える状態のため、血液が滞留しやすくなった結果、血栓が出来やすくなる。
それが脳まで運ばれ、脳血管を詰まらせると心原性脳塞栓症になります。
④ 予防には たばこをやめる 意志を持て
ヒット商品となった、加熱式タバコや電子タバコ。
紙タバコ同様に、ニコチンの有無に関わらず、種類によっては健康に害を与える可能性のある発がん性物質(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)を発生するものがあると報告されているそうです。
使用者本人、周囲への健康影響を考えると、禁煙をお勧めします。(厚生労働省、e-へスルネットより参照)
⑤ アルコール 控え目は薬 過ぎれば毒
アルコールは、生活に豊かさを与える一方で過剰な飲酒は脳卒中の発症リスクが上昇します。
アルコールの適量とは、ビールならロング缶1本(500ml)、日本酒なら1合(180cc)。
アルコール摂取が、日本酒約2.5合を超えると、脳梗塞のリスクが約1.7倍、脳出血のリスクが約2.2倍になるというデータもあり、「自分はお酒に強いから大丈夫」といってそれを過信してはいけません。
⑥ 高すぎる コレステロールも 見逃すな
糖尿病と同様に、高コレステロールも自覚症状がありません。心筋梗塞や脳梗塞といった、動脈硬化が原因となる病気になり初めて、脂質異常の危険に気が付くのです。
定期的な健康診断を受け、脂質異常症を指摘された場合は早目に内科受診をお勧めします。
⑦ お食事の 塩分・脂肪 控え目に
高血圧対策は、まず1日の塩分摂取量を10g以下に抑える必要がありますが、日本人の平均摂取量は14g。
外食がしょっぱい、と感じられない方は、塩分過多の可能性が高いと言われています。
また、料理で使用する醤油や塩などの調味料の量に気を付けましょう。
醤油などは、「かける」よりも「つける」方が摂取量を減らすことが出来ます。
塩分の変わりに、レモンやゆず、こしょうなどの、酸味や香辛料、だしの活用をするなどで工夫してみましょう。
脂肪量全体の摂り過ぎに注意し、特に肉の脂身やバターなどの摂取は控えめにします。
⑧ 体力に 合った運動 続けよう
カナダのカルガリー大学の研究結果では、コンピューターや読書などの座りがちな行動が多く身体活動をほとんど行わない60歳未満の人は、体を活発に動かしている人に比べ、脳卒中のリスクが7倍以上になるともいわれています。
⑨ 万病の 引き金となる 太りすぎ
過剰な糖質(炭水化物)は中性脂肪となって体内に貯えられるばかりでなく、内臓に付いた内臓脂肪から糖尿病や高血圧を引き起こす物質や血栓を作るホルモンが分泌されていることも明らかになっています。
⑩ 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
どんな症状が起きたら、脳卒中だと思えるかを知ることが大切ですね。
今回、脳卒中シリーズ第2回目にある「こんな症状は、脳からの警告!?」を参照にしていただけるとより理解が深まると思います。
ポイントは、「突然に」「片側の麻痺」「ろれつが回らない」「視野障害」の症状です。
2. まとめ
いかがでしたでしょうか。今回が最終章「脳卒中の予防」に関してでしたが、よりお読みいただいた方々が脳卒中に関する知識を得ることが出来、日常生活に活かすことが出来ると幸いです。
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この記事を書いた人
看護師:工藤 巳知子
北海道出身、看護師歴21年。
新卒で一般病棟勤務中、急変対応の経験不足を痛感したため手術室・救急外来へ部署移動。
上京後は大学病院の高度救命救急センター、民間病院の集中治療室(ICU /CCU)で12年。
その後、命を救う現場から病院と在宅を結ぶ訪問看護ステーションへ転向。営業やマネジメント、国際医療搬送を経験。
21年間、脳神経外科領域に関わり、現在は開業メンバーとして脳神経外科のクリニックに勤務中。
脳と意識、こころの探求を学びながら、フリーランスナースとして活動中。