前回は時間帯で介護負担を軽減できる訪問サービスについてをお知らせしました。
前回の記事
看護師が解説!介護負担軽減①介護負担を時間単位で軽減できる訪問サービス
介護保険の訪問サービスとは、要支援・要介護認定を受けた人が利用できるサービスです。 介護士や看護師、理学療法士などが自宅を訪れて、生活に必要なサービスや医療処…
今回は通所サービスについて。
通所サービスを利用することで、ご家族がどのように介護負担を軽減できるのでしょうか。
通所介護、通所リハビリのサービス内容を比べ、ご家族のメリットについて説明しています。
この記事の目次
はじめに
皆さんは仕事と介護をどのように両立されていますか。また、介護の合間に自分の時間をどのように確保されていますか。
平成29年就業構造基本調査によると、働きながら介護をしている人は、およそ346万人いるという結果が出ています。6年前の調査ですので、更に増加していると予想されます。
働いている人のうち、介護をしている人の男女別の有業率をみると
・男性 65.3%
・女性 49.3%
となっています。
年齢階級別にみると、男性は「55~59歳」が87.8%、女性は「40~49歳」が68.2%と最も高くなっています。
働きながら介護する人を年齢別に見ると、最も多いのが「40歳~49歳」の74.9%となっています。
正規雇用で見た場合、男性では約65%、女性は約73%以上が週1回以上介護に携わっており、男性の約4人に1人、女性では約3人に1人がほぼ毎日介護に携わりながら仕事を行っている現状があります。
また、連載一本目の「介護負担を時間単位で軽減できる訪問サービス」の1,家族が介護に使う時間で説明しましたが、要介護3からはほとんど終日介護をしているという結果もあります。
今回ご紹介する通所サービスは、介護を受けている方が通所サービスを利用することで、仕事を持っている方や、自宅で終日介護を行っている方の介護負担が軽減できるサービスです。
通所サービスには大きく分けて2種類あります。どのようなサービスなのか見ていきましょう。
通所サービスの特徴
通所サービスには通所介護(デイサービス)と通所リハビリ(デイケア)があります。
それぞれの特徴を表にまとめています。
| 通所介護(デイサービス) | 通所リハビリ(デイケア) |
---|
サービスの 目的 | ①身体機能維持と回復 ②安心できる社会交流の場の提供 ③楽しみや生きがいを感じてもらう ④清潔を保つ ⑤生活リズムを安定させる ⑥家族の介護負担軽減 | ①身体機能維持と回復 ②生活機能の維持向上 ③コミュニケーション能力の向上 ④清潔を保つ ⑤生活リズムを安定させる ⑥家族の介護負担軽減
|
種類 | ①一般型 一日を通して食事・入浴・レクレーションを行う。 ②認知症対応型 少人数制で手厚い介護が受けられる。 ③機能訓練特化型 機能訓練に特化しており半日型で食事や入浴は実施していない。 ④療養型 看護師のケアが常に必要な方(難病、ガン末期患者、気管切開を行っている方)が対象となっている。
| ①一般型 一日を通して食事・入浴・個別リハビリ・レクレーションを行う。 ②短時間通所リハビリ 1時間以上2時間未満のリハビリ提供時間内で個別リハビリと自主訓練を行う。食事、入浴サービスはない。
|
利用 条件 | 要介護1〜5 要支援の方は利用できない | 要支援1〜2 要介護1〜5 |
対応 職員 | ・生活相談員 ・看護師 ・介護職員 ・機能訓練指導員※ ※機能訓練指導員は必ずしもリハビリ専門職でなくて良い。 ※医師の指示書不要 | ・医師※ ・看護師 ・介護職員 ・理学療法士 ・作業療法士 ・言語療法士 ※医師の指示書が必要 |
主なサービスの内容 | ・入浴 ・食事 ・排泄介助 ・機能訓練 ・レクレーション ・看護師の健康チェック | ・入浴 ・食事 ・排泄介助 ・器具を使ったリハビリ ・口腔機能向上のためのリハビリ ・食事・栄養改善指導 ・看護師の健康チェック |
利用 時間 | ・3時間以上9時間未満 (一般的に9時から17時で提供しているところが多い) ・機能訓練特化型デイサービス(3~4時間で午前と午後に分かれていることが多い) | ・3時間以上9時間未満 (一般的に9時から17時で提供しているところが多い) ・短時間リハビリテーション(1時間以上2時間未満)もある。 |
通所介護と通所リハビリに共通していることは、自立した日常生活を送れるように、身体機能維持と回復を図ることを目的として「機能訓練」を提供しています。
共通していることに機能訓練がありますが、目的が違います。
機能訓練の目的
通所介護
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師などが、「体力と意欲の衰えを防ぐこと」を目的に提供する訓練のこと。
通所リハビリ
医師の指示に基づき理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職種が、「筋力や柔軟性、バランス感覚、反応速度、持久力などの身体機能を維持・回復、つまり生活機能を維持・向上すること」を目的に提供する訓練のこと。
通所リハビリで行う機能訓練は、リハビリテーションと言われています。
通所リハビリが提供するリハビリに、「生活機能の維持・向上」とあります。
これは、日々の生活を送るために必要な入浴、排泄などの基本的な動作や金銭管理、交通機関の乗り換えなど臨機応変が求められる能力のことです。
通所介護と通所リハビリは、介護を受ける方の状況に合わせ選択できます。
例えば、退院後間もなくリハビリが必要な場合は通所リハビリを選択し、自宅にいる時間が多く体力の衰えが気になる場合は通所介護を選択します。
両方を活用したいという場合、介護度が要介護1~5であれば両方を併用することが可能です。
送迎サービスについて
通所サービスを利用する際は送迎サービスがあり、自宅から通所サービスを提供する事業所の往復をしてくれます。仕事を持つご家族には心強いサービスです。
しかし、介護度や介護状況により、送迎車を待つ際に、介護を受けられる方の安全を確保するために、家族が待機することを依頼される場合もあります。
この場合は勤め先の理解、家族の協力が必要になることもあります。
それが難しい場合は訪問介護を利用し、通所サービスへの送り出しを依頼することも可能です。
訪問介護が必要な場合はケアマネジャーに相談しましょう。
通所サービスを利用するメリット
仕事と介護の両立ができる。
通所サービスを利用することで、仕事に専念でき、介護と仕事の両立が可能になります。
介護は費用がかかりますが、仕事を続けることで収入を維持しながら介護できます。
また、社会的立場を維持しながら介護を行うことができます。
休息を取ることができる。
平日は仕事をし、帰宅後に介護を行う方も少なくないでしょう。そういう方は土曜日も通所サービスを提供している事業所があり、そこを利用することで自分自身の休息をとることができます。
家族や友達と外食する、自分の趣味の時間にあてるのも良いと思います。
日常の介護を任せることができる
入浴介助、排泄介助、移動、車椅子などへの移乗介助など、介護の必要度に合わせて、介護職が行います。
管理栄養士の指示のもと、健康状態や食べる機能にあった食事形態を提案し、食事を提供してもらえます。
まとめ
通所介護と通所リハビリについて説明してきました。
通所サービスはご自身の仕事と介護の両立、終日介護の休息を可能にする重要なサービスです。
日中の通所サービスを利用することで、仕事に専念できるだけでなく、休息や他の用事を片付ける時間を確保することができます。
また、介護を受ける方の「身体機能を維持・回復」と「生活機能の維持・向上」を図ることができ、日々の介護負担も軽減できます。
介護を受ける方自身が通所サービスを気に入って頂けると、利用回数を増やすことも可能です。ケアマネジャーと相談し、介護を受ける方と介護をする方の要望に添える事業所を探してもらいましょう。
次回は小規模多機能型居宅介護について説明します。
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この記事を書いた人
郷堀有里夏
<プロフィール>
看護師経験30年。急性期病棟やICUを10年経験した後、施設看護や訪問看護、ケアマネジャーとして多くの介護を必要とする方々やそのご家族と関わる。
県外で勤務していた頃、母親が介護状態となり地元へ帰省する。
仕事と介護と自分の人生に悩んでいた頃、認知科学を学ぶ。
学びを通してわだかまりのあった親子間や家族間の葛藤を解消し、介護中に修復する事が出来た。そして、母親を施設から引き取り家族と共に在宅看取りを行うことが出来た。
自身の経験を通して、「健やかに自分らしく生きること」や「安心して介護や看取りが行える環境づくり」が重要だと感じ、心の介護専門家として講座やお話会を通じ情報を提供している。
<経歴、職歴>
(一社)日本ナースオーブ所属 Wellnessナース
看護師経験30年(訪問看護管理者、施設看護、介護支援専門員、救急センター、ICU)
保険外自費サポート ひかりハートケア登録ナース
<講座>
親にイライラしない介護コミュニケーション/ウェルネス講座
<その他の活動>
心から看る介護と認知症のお話会
後悔しない親の介護 / ブログ
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