皆さんは不動産をお持ちでしょうか?
お持ちの方は、その名義がどうなっているかご存知でしょうか?
既に名義が2人以上の共有になっている方、今は共有ではなくても将来共有になってしまいそうな方、そのままにしておくと将来困ってしまうかもしれません。
そこで今回は、不動産名義の共有化を防ぐことについて紹介していきます。
この記事の目次
どんな時に共有化が起こるか?
まず、不動産の共有状態はどういったことが原因で起こるのでしょうか。
①親から兄弟で相続したケース
親が所有していた不動産があり、親の死後、子供たちの誰かが単独でその不動産を相続するわけではなく、平等に分け合ってしまったりすると共有が起きてしまいます。
例えば不動産を複数所有していて、不動産それぞれを子供たちが単独で相続する、というのであれば共有状態にはなりませんが、財産のほとんどが自宅のみで預貯金もないような場合だと、自宅を共有状態で相続する可能性もあります。
また、複数不動産を所有していた場合でも、そのうちの1つが収益性の高い不動産で、そこから発生する収益を子供たちが平等に分け合うために共有にしてしまうこともあります。
②夫婦名義で不動産を購入したケース
新居を購入した夫婦が自己資金をお互いに出し合ったり、住宅ローンをお互いに組んだりすると、負担した割合に応じて共有名義で登記をすることになります。
ご夫婦の場合、万が一離婚してしまったり、夫婦のどちらかに前配偶者との子供がいたりして相続が発生すると、共有状態がより複雑なってしまう可能性があります。
共有名義のデメリット
では、不動産を共有名義にしていると発生するデメリットは何でしょうか。大きく2点あります。
①不動産の利用がしづらくなる
共有になると、1人で全てを持っている場合と違い、権利の制限が生まれます。
「管理」を行う場合には過半数の同意が必要であり、「変更または処分」を行う場合には共有者全員の同意が必要です。
ここで言う「管理」とは他人に賃貸すること、「変更」とは建て替えや増築、「処分」とは売却といったことを指します。
共有する不動産を全部売却する時には、共有者全員の同意が必要となるわけです。
仮に、母50%・長男25%・次男25%で不動産を共有していたとしたら、母と長男が売却に賛成し、不動産を共有したとしても、次男が反対したら売却はできません。
つまり、100%の同意を得ない限り、売却できないということになります。
(ただし、共有持分は自分の持分のみ単独で売却することが可能です。)
また、共有者の内の1人が認知症になってしまったらどうなるでしょうか。
その共有者は50%の持分を持っていたとすると、認知症になってしまうことで売却はもちろん、賃貸に出すこともできなくなってしまうのです。
②権利関係が複雑になる
母・長男・次男で共有している不動産があったとして、母が不動産を売りたければ長男と次男の同意を得る必要があることは先ほど紹介しました。
もし共有している母と長男次男の仲が良く、「いざとなれば同意は取れるだろう」と思っていた中、長男が死亡し相続が発生するとどうなるのでしょうか?
長男が結婚しており子供が2人いた場合は、長男が持っていた共有持分が長男の配偶者と2人の子に引き継がれます。
母は次男に加えて、長男の配偶者と2人の子供の同意を得なければならなくなりました。
「同意は取れるだろう」と思っていましたが、本当に取れるでしょうか。
母が長男の配偶者とはあまり仲が良くなかったとしたら、同意が取れない可能性もあります。
さらに、先ほど紹介した通り、自分の持分のみであれば単独で売却することが可能ですので、持分買い取りを手掛ける業者に売ってしまうかもしれません。
そうすると、今度は買い取った業者の同意を得なければならなくなります。
その内、共有者が意思疎通のとれていた身内ではなくなり、どんどん同意を得るのが難しくなっていきます。
共有者の所在が分からない
共有持分が承継・売却され続けた結果、近年問題視されているのが、所有者不明の不動産が増えている問題です。
共有者が死亡したとしても相続登記もされないまま放置され、売却されたのかどうかもわからないまま、いざ何かの利用を考えた時、また売却しようとした時に、そもそも共有者が誰なのか分からないので相談や交渉すらできず、結局何もできないといった事例が増えています。
2017年の所有者不明土地問題研究会によれば、「2016年(平成28年)時点の所有者不明土地面積は、地籍調査を活用した推計で約410万haあり、九州(土地面積:約367万ha)以上に存在する」という調査結果が出ています。
共有化を防ぐために
共有化の問題点を記載しましたが、次に共有化を防ぐための方法を考えていきましょう。
遺産分割時に共有にしない
遺産分割時に不動産を共有にしない方法です。
例えば相続人として自分と弟の2人がいる場合に親から不動産を相続するなら、話し合いによって自分か弟のどちらかの名義にして、不動産をもらわなかった方が代償金の支払いをする、あるいは不動産を売却して平等でお金でわけることなどを検討しましょう。後々の共有トラブルを防げます。
遺言書を書いておく
遺産分割時にお話合いがまとまらないことも少なくありません。
遺された子供たちのことを想い、遺言書の中で、「不動産を売却して金銭で分配するように」や、「長男に不動産を承継させ次男には金銭で遺す」といったように決めておくのも親心ではないでしょうか?
家族信託の活用
共有化の防止でも家族信託を活用することができます。
例えば収益性の高いアパートを所有していたとして、所有者に相続が起きた後、子供に平等に収益を渡したいという希望があったとします。
ここで、子供のうちの一人にこの不動産を信託します。
所有者がご健在のうち収益は所有者自身のものになりますが、相続発生後、信託を終了させることなく、収益を受け取る権利(受益権)を子供に平等に承継させます。
そうすれば、所有者不動産の名義は受託者単独のままで、収益は平等に受け取ることができるというわけです。
(ただし、受益権をその後どうするか、など最終的な不動産の出口を考えておかないといけません。)
いかがでしたでしょうか?
安易に不動産名義を共有にするのではなく、共有化の問題点と共有化を防ぐための対策を知った上でどう不動産を所有していくかを考えてもらえればと思います。
昨今は、不動産はともすれば負動産になるとも言われます。
なんとなく先延ばしにしがちですが、万が一の時、その不動産をどうするのか?どうしたいのか?ということについては、家族間で共有しておくことが重要です。
また、名義人の方が認知症になると売却はおろか賃貸に出すこともできないことが多いのは、当事者になって初めて知る方が多いようです。
今のうちにできる対策は何があるのか?
どんな選択肢があるのか?
ということは知っておいた方がいい情報です。
この記事を書いた人
金子 義勝(かねこ よしかつ)
<保有資格>
▮司法書士
<プロフィール>
■東京・札幌・大阪・広島・福岡・沖縄に拠点を展開する
みつ葉グループの東京オフィスにおいて、登記事業部に所属。
商業登記に関する業務を中心に不動産登記、相続案件に携わっており、会社経営者の生前の相続対策なども対応可能です。
生前対策は早めの対応が大切ですので、お気軽にご相談ください。