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介護のバーンアウトは甘えじゃなく「心身の限界サイン」

「自分さえ我慢すれば、この場は丸く収まる」

「自分の親なんだから、しんどいなんて言っちゃいけない」

優しい心と強い責任感を持つ人ほど、ある日突然、糸が切れたように動けなくなってしまうことがあります。

それが介護におけるバーンアウト(燃え尽き症候群)です。

令和の時代になっても、世間の一部には今もなお

「身内の介護を負担に思うなんて甘えだ」「昔の人はもっと大変な環境でもやり遂げてきた」と精神論を押し付ける風潮があります。

介護のバーンアウトは、決して「甘え」や「忍耐不足」などではありません。

それは過酷な状況で限界まで走り続けた心と体が発する、命がけのSOSなのです。

では、なぜ介護においてバーンアウトが起きてしまうのでしょう。

その構造的な原因を紐解くとともに見逃してはならない心身の限界サイン、そして燃え尽きてしまう前に取るべき具体的な防衛策についてお伝えします。

この記事の目次

1.なぜ介護は人を「燃え尽き」させてしまうのか

バーンアウトとは、持続的な精神的・身体的ストレスによってエネルギーが枯渇し、それまで使命感を持って取り組んできたことに対して全く関心を持てなくなったり、虚無感を抱いたりする状態を指します。

介護には人間の精神をじわじわと摩耗させる「三つの特徴」があります。

①終わりの見えない不安

一般的な仕事であればどんなに忙しくても期限があります。「今月末まで」「このプロジェクトが終わるまで」など。病気であったも「病気やケガが治るまで」などの終着点があります。ですが在宅介護は明確な終わりがないのが実状です。「この生活が、あと何年続くのだろう?」という終わりの見えない不安は、24時間365日介護者の心に付きまといます。

②努力と成果が比例しない絶望

人は、自分の行動によって状況が好転した時に達成感を覚えます。だからこそ頑張れますし、少々の苦難も乗り越えようと力を発揮します。ですが特に認知症の介護においては、どれだけ寝る間を惜しんで献身的にケアをしても、病状の進行を止めるのは困難な状況です。さらに理不尽に怒鳴られたり、疑われたり、徘徊や不潔行為に悩まされることも日常茶飯事として起こり得ることです。

「一生懸命やっても報われない」という状況は、穴のあいたバケツに水を注ぎ続けるようなものであり、人の心を急速に疲弊させます。

③「家族」という逃げ場のない関係性

仕事で介護をしているのであれば、勤務時間が終われば自分自身の生活に戻ることが出来ます。また、感情的な衝突が起きても「仕事」として割り切ることが出来ます。ですが家族間の介護ではそうもいかないことがよくあります。

「まるで別人のように変わってしまった」という悲しみを受け入れながら、同じ空間で世話をし続けます。そうしたとき、「優しくできない自分」「冷静に対応できない自分」に対する自己嫌悪感も、介護者を内側から追い詰める大きな要因となります。

2.これが見えたら危険!心身が欲する「限界サイン」

介護のバーンアウトは、ある日突然に起こるわけではありません。その状態になるまでに、心と体は何らかのサインを出しています。

「まだ大丈夫」「みんなこれくらい耐えている」とサインを無視し続けると、気づかないうちに進行してしまいます。次にあげるサインに心当たりがないか、セルフチェックしてみましょう。

身体的な限界サイン

睡眠障害:疲れ果てているのに眠れない。夜中に何度も目が覚める。またはいくら寝ても疲れが取れない。

慢性的な疲労感:朝目覚めたときから体が重く、動くことがつらく感じる。

食欲の異常:食欲がなくなる。あるいは過食してしまい体重が増減する。

原因不明の体調不良:頭痛、胃痛、動悸、めまいなどが頻繁にある。

【精神的な限界サイン】

感情の枯渇:以前なら楽しめていた趣味やテレビ番組に対して、何も感じなくなる。あまり笑わなくなった。感情が麻痺したように感じる。

イライラと感情の爆発:普段なら許せる些細なことに激しい怒りを感じたり、家族や被介護者に対して声を荒げてしまったりする。

涙が止まらなくなる:理由もなく涙が溢れ止まらなくなる。

激しい自己嫌悪:「どうして私はもっと優しくできないのか」と自分を責めてしまう。

【行動・思考の限界サイン

介護の放棄、ネグレクト傾向:介護の手を抜くことへの罪悪感すら薄れ、食事の用意や着替えの世話を「どうでもいい」と感じてしまう。

・希死念慮・逃亡願望:「いっそのこと、すべてを投げ出して消えてしまいたい」「このまま眠りについて、二度と目覚めなければいいのに」と考えるようになる。

3.「甘えてはいけない」を解き放つために

前述の限界サインに一つでも当てはまるようなら、今すぐに頑張る方向を変える必要があります。バーンアウトを防ぐために、実践するべき心の持ち方と具体的なアクションをお伝えします。

①介護の「合格点」を30点にする

完璧な介護はどこにもありません。部屋が少しくらい散らかっていても、食事が総菜やレトルトばかりでも、命に関わらなければそれでいいと思う「いい加減さ」が大切です。完璧をめざそうとすると介護が管理になり、緩めることが難しくなっていきます。

②「家族の義務」をプロに委ねる

「家族が最期まで世話をするのが良いこと」という美徳は、煩雑な介護においては犠牲が生じます。担当のケアマネージャーに辛い現状を隠さずに伝えましょう。ショートステイやデイサービス、訪問介護などの介護サービスを利用することは愛情不足ではなく、介護を継続するための必要不可欠な手段です。

③「介護者」ではない、自分の人生の時間を取り戻す

一日のうち、たとえ15分、30分でも「介護のことを一切考えない、自分のための時間」を強制的に作ります。買い物に行くタイミングで車の中でくつろぐ、お気に入りのカフェでお茶をする、好きな音楽を聴く、友人と話すなど。「介護者」という役割から離れる時間は、介護者の心の健康を維持するためにとても重要です。

4.心の声に耳を傾けて

「家で介護をしている」というだけで十分に頑張っています。介護のバーンアウトを引き起こすのは、心が弱いからでも愛情が足りないからでも、優しさが足りないからでもありません。むしろその逆で、限界を超えるほど相手を大切に思い、一生懸命大切に頑張ってきた証拠です。

車がガソリンなしでは走れないように、人の心もエネルギーが空っぽになってしまうと動かなくなります。「これ以上は動けない」となった時、心と身体を守るためにブレーキがかかっています。よって、素直に心の声に耳を傾けて、「助けて」と声をあげる時なのです。

声をあげることは恥ずかしいことでも情けないことでも、甘えでもありません。声をあげることで介護者自身の人生を守り、巡り巡って大切な家族やパートナーをも守ることにもなります。独りで抱え込まず、周囲や社会の仕組みに甘えてみてくださいね。


この記事を書いた人

看護師:栗巣正子 <経歴> 看護師歴 23年  大阪府堺市で、50床~2000床の病院勤務(内科、外科、手術室、整形外科、療養病棟)。 離婚後、鹿児島県鹿屋市にて、老人保健施設、透析専門クリニックに勤務 大手生命保険会社に、営業主任として3年勤めた後、地域密着型の内科総合病院に17年(介護保険病棟、療養病棟、急性期病棟、心臓内科、腎臓内科、肝臓内科、消化器内科、呼吸器内科、腹膜透析、血液透析、外来、救急外来、訪問看護)勤める。 現在は、派遣ナース、非常勤での健診スタッフ、訪問看護指示書作成等の委託業務、ナース家政婦登録 <資格> 正看護師/普通自動車免許/大型自動車免許/けん引免許/たん吸引指導者/ペットセーバー/労災ホームヘルパー(A)

看護師:栗巣正子

<経歴>
看護師歴 23年 
大阪府堺市で、50床~2000床の病院勤務(内科、外科、手術室、整形外科、療養病棟)。

離婚後、鹿児島県鹿屋市にて、老人保健施設、透析専門クリニックに勤務

大手生命保険会社に、営業主任として3年勤めた後、地域密着型の内科総合病院に17年(介護保険病棟、療養病棟、急性期病棟、心臓内科、腎臓内科、肝臓内科、消化器内科、呼吸器内科、腹膜透析、血液透析、外来、救急外来、訪問看護)勤める。

現在は、派遣ナース、非常勤での健診スタッフ、訪問看護指示書作成等の委託業務、ナース家政婦登録

<資格>
正看護師/普通自動車免許/大型自動車免許/けん引免許/たん吸引指導者/ペットセーバー/労災ホームヘルパー(A)

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