年齢を重ねるにつれて、飲む薬が増えていくことがあります。
「こんなに飲んで大丈夫なの?」、「できれば薬を減らしたい」と感じている方もいるのではないでしょうか。
しかし、薬が増えたからといって、自己判断で勝手に減らすことはとても危険です。
今飲んでいる薬について、「本当に今も必要なのか」「同じような作用の薬が重なっていないか」「薬によって困っている症状(副作用)が起きていないか」などを確認し、自分に合った薬の使い方にしていくことが大切です。
今回は、無理なく薬を見直していくためのポイントを紹介します。
この記事の目次
1. ポリファーマシー対策は「薬の数を減らすこと」ではない
1) 薬が多くても、必要な場合がある
「薬を6種類以上飲んでいたらポリファーマシー」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」でも、薬の種類が増えるほど、副作用などの好ましくない症状が起こりやすくなるというデータが紹介されています。特に高齢者は、複数の持病を持ち、複数の医療機関を受診することで薬が増えていく場合もあります。
ただし、「6種類以上だから悪い」「5種類以下なら安心」という意味ではありません。
複数の病気を治療するために、それぞれに必要な薬が処方され、結果として薬の数が増えることがあります。逆に、薬の数が少なくても、同じような作用の薬が重複していたり、薬の組み合わせによって副作用が起きていたりすれば、見直しが必要なこともあります。
大切なのは、薬の数ではなく、その薬が今の自分に必要で、安全に使えているかどうかです。そのうえで、見直しによって必要性の低くなった薬や重複している薬が見つかれば、薬の種類や量を減らせる場合もあります。
2) 「昔から飲んでいる薬」も定期的に見直すことも必要
薬の中には、長く続ける必要があるものもあれば、症状が落ち着いたら終了できるものもあります。
また、年齢を重ねると、腎臓や肝臓の働き、体格や食事量などが変化します。そのため、以前と同じ薬・同じ量でも、薬の効き方や副作用の出方が変わることがあります。
「昔から飲んでいるから、このままで大丈夫」と決めつけず、現在の病気や体調に合っているかを定期的に確認しましょう。
3) 自己判断で薬を減らすのは避ける
「薬が多いから、自分で減らしてみよう」と判断することはとても危険です。薬によっては、急に中止すると症状が悪化するものがあります。また、自分では効果を感じていなくても、病気の悪化を防ぐために必要な薬もあります。
ポリファーマシー対策とは、ただ薬の数を減らすことではありません。現在の病気や症状、検査結果、生活状況などを確認しながら、医師や薬剤師などと相談して薬を整理していくことが大切です。薬を見直したいと思ったら、自分で調整するのではなく、医師や薬剤師に相談しましょう。
2. まずは「何のために薬を飲んでいるか」を整理する
1) 処方薬だけではなく、市販薬やサプリメントも一緒に確認する
薬を見直すための第一歩は、現在使っているものを把握することです。
病院からもらっている薬だけではなく、ドラッグストアで購入した風邪薬、痛み止め、胃薬、睡眠改善薬などの市販薬、健康食品やサプリメントなども確認します。
市販薬やサプリメントの中にも、処方されている薬との組み合わせによって、薬の効き方などに影響するものがあります。受診するときや薬局では、普段使っているものをできるだけ伝えましょう。塗り薬、貼り薬、目薬、必要なときだけ飲む薬なども忘れずに確認します。「毎日飲んでいないから」と忘れてしまいがちな薬も含めて確認することがポイントです。
2) おくすり手帳は一冊にまとめる
複数の病院や薬局を利用している方は、おくすり手帳を一冊にまとめておくと便利です。
たとえば、A病院では血圧の薬、B病院では腰痛の薬というように複数の医療機関から処方されていると、それぞれの医師が他院の処方を十分に把握できていないことがあります。
おくすり手帳を一冊にまとめ、受診時や薬局で提示することで、医師や薬剤師が薬の重複や飲み合わせなどを確認しやすくなります。最近は、紙のおくすり手帳だけでなく、スマートフォンなどを利用した電子版のおくすり手帳もあります。自分が継続して使いやすい方法を選ぶとよいでしょう。
また、「薬を飲み始めてからふらつくようになった」「眠気が強くなった」などの変化があれば、忘れないうちにおくすり手帳などにメモしておくと、相談するときに役立ちます。
薬の名前だけでなく、薬を飲んだ後の体調の変化も、薬を見直すための大切な情報になります。
3) 「何のための薬なのか」を知る
薬を整理してみると、「これは何の薬だったかな」という薬が見つかることがあります。
そのような薬があれば、薬の名前と一緒に「何のために飲んでいるのか」を確認してみましょう。「血圧の薬」「血液を固まりにくくする薬」「便秘の薬」という程度でも、何のために飲んでいる薬なのかがわかっていると薬を整理しやすくなります。
目的のわからない薬があれば、医師や薬剤師に「この薬は何の薬ですか?」と聞いてみましょう。
3. 薬を減らしたいとき、医師や薬剤師にどう相談する?
1) 「薬を減らしたい」ではなく、困っていることを伝える
薬を減らしたいと思っていても、「先生が必要だと思って出している薬だから、減らしたいとは言いにくい」と感じる方もいるでしょう。そのようなときは、「薬を減らしてください」と伝えるよりも、今困っていることや体調の変化を具体的に伝えるのがコツです。
たとえば、
「飲む薬が増えて、どれをいつ飲むのかわからなくなってきました」
「最近ふらつくことがあるのですが、薬の影響でしょうか」
「薬を飲む回数を、もう少し少なくできませんか」
といった相談の仕方があります。
困っている理由がわかると、医師や薬剤師も「薬そのものを減らすのか」「量を調整するのか」「飲む時間を変更するのか」など具体的な解決策を検討しやすくなります。
2) 「この薬は今も必要ですか」と聞いてみる
薬を見直すときに難しい医学用語を使う必要はありません。
「この薬は、今も続ける必要がありますか?」
「似たような薬はありませんか?」
こうした質問で十分です。
特に複数の医療機関に通っている場合には、「別の病院ではこの薬を飲んでいます」と伝えることも重要です。
薬の見直しで大切なのは、何種類減らせたかではありません。必要な治療を続けながら、安全で無理なく薬を使える状態に整えていくことです。
4. まとめ
・薬を見直すことで、必要性の低くなった薬や重複している薬を減らせる場合があります。ただし、薬の数だけで判断せず、今も必要な薬なのかを確認することが大切です。
・処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含めて整理し、何のために使っているのかを把握しましょう。
・気になる症状や薬を減らしたい理由を医師や薬剤師に伝え、相談しながら見直しましょう。
この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)