病気やけがは、ある日突然やってきます。
「入院が必要です。」
そう医師から伝えられたとき、病気や治療に対する不安だけでなく、「医療費はどれくらいかかるのだろう」「お金の準備ができなかったらどうしよう」と不安になる方も少なくありません。
身寄りがない方や、頼れる人が身近にいない方は、その不安を一人で抱え込んでしまうこともあります。
今回は、医療に関わるお金の制度や、困ったときに相談できる人や場所についてお伝えしたいと思います。
この記事の目次
1.入院にはどのくらいお金がかかる?
「入院すると、どれくらいお金がかかるのだろう。」
病気やけがで入院が決まったとき、多くの方が最初に抱く不安ではないでしょうか。
入院にかかる費用は、病気や治療内容、入院日数によって大きく異なります。
公益財団法人生命保険文化センターの調査では、入院時の自己負担費用は総額平均18.7万、1日あたり平均約24,300円という結果が報告されています。この金額には、健康保険適用後の自己負担分だけでなく、食事代や差額ベッド代、日用品代、交通費なども含まれています。
また、入院中に必要になるのは治療費だけではありません。
着替えや洗面用具などの日用品、テレビカード、病院までの交通費など、保険が適用されない費用も少しずつ積み重なっていきます。
身寄りがない方の場合は、家族に必要な物を持ってきてもらうことが難しく、病院で購入したり、サービスを利用したりする場面もあります。そのため、思っていた以上に出費が増えることもあります。
2.医療費より不安なのは「相談できる人がいないこと」
これだけ費用がかかるとなると、不安になるのは当然です。
家族がいれば、「使える制度があるかもしれないね」「保険会社に確認してみよう」「病院で相談してみよう」と、一緒に考えてくれることがあります。
一方、身寄りがない方は、その役割を一人で担うことがあるでしょう。
そのため、お金そのものよりも、「誰に相談したらよいかわからない」という不安が大きくなってしまうことがあります。
不安や心配は少しでも少なくしたいものです。一人で悩み続ける必要はありません。病院や地域には、お金のことを相談できる場所があります。
次の章で相談できる場所について説明します。
3.病院・地域にあるお金の相談ができる窓口
病院には、医療ソーシャルワーカー(MSW)をはじめ、医療費や退院後の生活について相談できる窓口があります。医療ソーシャルワーカーは、患者さんやご家族の経済的な不安だけでなく、介護や福祉制度、退院後の生活など、生活全体を支える専門職です。
地域には地域包括支援センターがあり、介護・医療・福祉の側面から地域の高齢者を支える役割があります。市区町村の福祉担当窓口にも様々な専門職が在籍しています。
どちらも無料で相談することができます。
「医療費の支払いが心配です。」
「仕事を休むことになり収入が減ってしまう。」
「一人なので何から始めればいいかわからない。」
このような相談は決して特別なことではありません。病院や地域に相談窓口があることを知っておいてください。そしていざというときには、ぜひ気軽に利用してみてください。
4.医療費を支える制度
医療費の負担を軽くする制度を紹介します。
代表的なものが高額療養費制度です。これは、同じ月に支払う医療費が高額になった場合、年齢や所得に応じた自己負担限度額を超えた分が、後で払い戻される制度です。入院や手術などで医療費が高額になったときの大きな支えになります。
現在は、マイナ保険証を使用することによって自動で限度額が適用されるようになっています。オンライン資格認定が対応でない病院を受診する場合は、限度額適用認定証を申請することが必要です。限度額認定証があることで、所得によって設定された自己負担限度額以上の請求はされません。
また、やむを得ない事情で医療費を一旦全額自己負担した場合には、療養費制度を利用できることがあります。緊急搬送で保険証が手元になく、一時的に全額負担をした場合などに、後から請求をすることで払い戻しを受けることができます。
医療保険に加入している場合は、傷病手当金という病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた給付制度が受けられます。被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
民間の医療保険に加入している方は、入院給付金や手術給付金などを受け取れる場合があります。退院後は慌ただしく、請求を忘れてしまうことも少なくありません。入院や手術が決まった時点で、担当者や保険会社に問い合わせてみることがおすすめです。
さらに、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合には、医療費控除の対象となることもあります。
このような医療費に関する様々な制度の疑問は、病院の相談窓口や病院内の医療ソーシャルワーカー、地域の包括支援センターや福祉担当窓口に相談することで、自分が利用できる制度を一緒に確認してもらうことができます。
制度をすべて覚える必要はありません。
「使える制度があるかもしれない。」
そのことを知っているだけでも、相談するきっかけになるでしょう。
5.今からできる備え
病気は、いつ訪れるかわかりません。
元気なうちから、加入している医療保険の内容を確認しておくことや、保険証券を整理しておくことは、いざというときの助けになります。
また、困ったときに相談できる病院の窓口や自治体の相談先について調べておくことも、備えの一つです。
制度は変わることがあります。
しかし、「一人で抱え込まず相談する」という備えは、これからも変わりません。
6.まとめ
身寄りがない方にとって、お金の問題は実際の医療費の問題だけに留まりません。
「誰に相談したらいいかわからない。」
その孤立感が、不安をさらに大きくしてしまうことがあります。
しかし、病院・地域には医療や生活を支える専門職がいます。医療費に関して利用できる制度もあります。
今回の記事では相談場所や、様々な医療費に関する制度をお伝えしました。
制度を一つひとつ覚えることが目的ではありません。
「困ったら相談できる人や場所がある。」「使うことができる制度がある。」
まずはそのことを知っているだけで、十分です。この記事の内容で、不安が軽減し、病気や治療に向き合う安心のきっかけになったら幸いです。
〈参考文献〉
・公益財団法人生命保険文化センター.2025(令和7)年度 生活保障に関する調査.2025
(参照 2026年7月29日)
・株式会社扶桑社.おひとりさま[老後生活]安心便利帳2026年版.2025年
この記事を書いた人
清水千夏
<プロフィール>
看護師経験15年(大学病院9年、訪問看護4年)
大学病院で、急性期(消化器外科、心臓血管外科、HCU)から退院支援部門まで幅広く経験を積む。その後、訪問看護ステーションに転職。
現在は立ち上げから関わっている訪問看護ステーションで勤務。0歳から100歳まで様々な年齢の方を対象に、住み慣れた自宅で暮らし続けるための支援を提供している。
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