シェーグレン症候群は主に涙腺や唾液腺が侵され『口が乾く』『目が乾く』といった粘膜の乾燥を生じる病気です。自分の体の組織を誤って攻撃する膠原病のひとつです。日本での患者数は推定6万8000人で30~60代の女性に多く、発症のピークは50歳だといわれています。
芸能界でもタレントの和田アキ子さんがシェーグレン症候群であることを公表し、自身の症状について番組内でお話をされていました。
現在はこの病気の根本的な治療は確立されていませんが、治療と生活の工夫を行うことで日常生活を送ることが可能になっています。
今回は、私の看護経験をもとに病気と上手く付き合うために日常生活でできることをお伝えします。
この記事の目次
1.シェーグレン症候群について
シェーグレン症候群は、唾液腺や涙腺などの外分泌機能が低下し、口の中や目が乾燥します。不快感が生じ、次第にやる気がしない、疲れやすいといった症状が出現し、日常生活に支障が出てきます。
こうした症状を経て唾液腺、涙腺のみに限局する『腺型』と全身の臓器に及ぶ『腺外型』に分かれていきます。
① 腺型(せんがた/せんけい)
約70%の患者は10~20年後も比較的に安定した経過をたどることが多いとされています。
初期症状で多いのが目の渇きと口の渇きです。目がゴロゴロする、涙が出にくい、口の中が粘つくといった症状が出現します。
初期はこのような症状を感じながらも「疲れているだけ」「年齢的な乾燥」と見過ごされることがあります。
②腺外型(せんがいがた)
シェーグレン症候群は7割の患者が10~20年経っても症状が変わりませんが、3割の患者に乾燥症状の悪化、以下のような全身の臓器に症状が及ぶことがあります。
こうした合併症を早期発見し、病状の悪化を予防するためには、初期の症状を見逃さないことが大切です。
しかし、初期症状でシェーグレン症候群かもしれないと気づくことは非常に難しいと思います。まずは口の中の渇きや目の渇きを改善するために歯科口腔外科や眼科、疲労感が改善しない時は内科受診するのが最初の一歩です。
受診後は医師が診察し、シェーグレン症候群を疑えば膠原病を専門としている医療機関に紹介されます。
病気を早期発見のためにも症状を細かくメモし、確実に伝えられるようにしましょう。
医師に伝えるポイントは以下の通りです。
このように膠原病専門の医師や医療職とつながり、治療の道のりを歩んでいくことが病気と上手く付き合うことにつながります。
2.シェーグレン症候群の治療について
シェーグレン症候群は根治が難しいため症状を和らげる対症療法が中心になります。
乾燥による二次的な障害や間質性肺炎などの合併症を予防するためにも必ず医療機関で継続的なアプローチをしながら経過をみていきます。具体的な症状についての治療は以下の通りです。
①目の乾燥
- [点眼薬]ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬など水分の分泌を促す点眼薬が処方されます。
- [涙点プラグ]涙の排出口を医療用のプラグで塞いで涙を目の表面に溜める治療法。
②口の乾燥
- [唾液分泌促進薬]唾液腺を刺激する内服薬が処方されます。
- [保湿ケア]口腔用のジェル、スプレー式の人工唾液で口腔内を保湿します。
- [漢方薬]喉の乾燥やイガイガした症状に効果のある麦門冬湯(ばくもんどうとう)が処方される場合があります。
③全身症状が出ている場合
シェーグレン症候群に現れる全身症状は免疫の異常な働きが原因です。主な治療法としては炎症を抑える副腎皮質ステロイドホルモンや免疫抑制剤の内服が中心となります。
- [関節痛や筋肉痛]軽度であればロキソニンやカロナールなどの炎症鎮痛剤、症状の程度によりステロイド剤や抗リウマチ薬が処方されます。
- [臓器の病変]肺や腎臓に重い症状がある場合は中等量~大量のステロイド剤や免疫抑制剤を使用して免疫の暴走を抑えます。
これらの治療を継続しながら、症状が安定していても2~3か月に1回程度、定期的な血液検査、尿検査、画像検査を行い、合併症の早期発見に努めます。この時、不安な点や質問があれば必ず医師に伝えるようにしましょう。
それでは、定期的な受診を前提として、日常生活ではどのようなことを行うと良いのでしょうか。
3.シェーグレン症候群のセルフケア
シェーグレン症候群と上手く付き合うために自分でできることは『口腔ケア』『目のケア』『環境整備』この3つです。
①口腔ケア
口腔ケアで優先されるのは、口の中を潤すことです。その理由は唾液が減少すると口腔内のバリア機能が低下し虫歯・歯周病・口臭・感染症のリスクが高まるからです。
喉が渇いたと感じる前に水やお茶を少しずつ補給します。外に出かけるときは水筒やペットボトルを持ち歩き、いつでも水分を補給できるようにしましょう。一度にたくさん摂り過ぎると胃液が薄まり消化不良を起こしやすくなります。寝る前には口腔ジェルやスプレー式の人工唾液を使用すると夜間に排尿で起きる回数を減らすことができます。
ガムを噛むと唾液の分泌が促され口腔内を潤すことができます。また、唾液の分泌が促進されると虫歯を予防することができます。虫歯予防に効果のあるキシリトールやリカルデントが入っているガムがお勧めです。
毎日歯磨きをする際、市販のフッ素入り歯磨き粉を使う、フッ素入りの洗口液でうがいをすると虫歯予防になります。
口の乾燥には耳下腺・顎下腺・舌下腺の3大唾液腺をやさしく刺激するマッサージが効果的です。時間帯は唾液の分泌が減る起床時や食事の前に行うと良いでしょう。
②目のケア
シェーグレン症候群の目のケアは潤いを補うこと、涙を逃がさないことが大切です。
点眼の回数が多くなると防腐剤が角膜を傷つける恐れがあります。眼科で処方されるボトルタイプの点眼薬には防腐剤が含まれている場合があります。
そのため防腐剤が入っていない人工涙液が推奨されます。人工涙液とは涙の成分に近づけて作られた目薬です。ドラックストアやオンラインストアで購入ができます。
外出する際は眼鏡を使用すると目の乾燥を防ぐことができます。花粉対策用の眼鏡が手軽に購入できます。
市販のアイマスクや蒸しタオルを目元に当てると、蒸気の作用で涙の蒸発を防ぐ脂の分泌が促進されます。そのほかにもパソコンやスマートフォンを長時間見るのを控えて定期的に目を休ませることが大切です。
③環境整備
口や目の乾燥を和らげるには部屋の湿度を50~60%に保つ必要があります。加湿器はタンクや本体に雑菌が繁殖しやすいためお手入れしやすいものを購入しましょう。
ホコリを溜めないためには静電気の発生を抑えること、空気の流れをつくることが必要です。テレビやパソコン周囲は化学雑巾やハンディモップでほこりを吸着させてから固く絞った雑巾で水拭きをします。また、定期的に換気を行い空気の流れをつくるとホコリが出やすくなります。
物がたくさん置いてあると掃除がしにくくホコリが溜まりやすくなります。 物を減らす工夫をしていきましょう。
私が在宅看護で関ったシェーグレン症候群の患者様は定期的に歯科受診を欠かさず口腔ケアに努めていました。外出時にはストロー付きの水筒を持ち歩き、ドライアイ眼鏡、マスクをつけて乾燥予防しながら、同じような病気を持つ方々との交流会に参加することを楽しみにされていました。そこでは自身の生活での工夫を伝えたり、他の人の話を聞いて真似したりと様々な発見があったといいます。
歌手として、タレントとして話すことが多い和田アキ子さんも「水がないと生きてはいけない」と口を潤すための水を手放さず、精力的に活動を続けておられます。
このように病気と付き合いながらも誰かとつながることで、社会の一員としての存在意義が高まるのだと思います。
まとめ
シェーグレン症候群は芸能人の方々の公表により認知されつつあります。有名人の方々が病気と向き合いながら活動する姿は、私たちに勇気を与え前向きに治療に取り組む意欲を与えてくれます。治療を続けながら自分でケアをしていくことは決して簡単なことではありませんが、自分自身も誰かの勇気になると信じて病気と上手く付き合うことが病気の安定につながっていきます。
参考資料URL
難病情報センター
For yourLife
アイシークリニック
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」
動画配信YouTube「看護師mikakoの更年期チャンネル」