あなたは社会人になって最初に学んだことを覚えていますか?挨拶や礼儀、報連相、責任感、段取りなどいろいろあるかと思います。
わたしは看護学校を卒業後すぐ、看護師として社会人になりました。患者様の命と向き合う現場で、教科書通りにいかないことや正解のないことに戸惑った日々は今でも忘れません。
このコラムは、わたしが看護師になって最初に学んだことを通して、普段の生活にも活用できることをまとめました。皆様の心身の健康を整える上で少しでも参考になれば嬉しいです。
この記事の目次
1. 看護師になって最初に学んだこと
今でも忘れない、看護師国家試験に合格してから約1週間、看護寮への引っ越しをバタバタと終えて迎えた4月初旬のことです。人を助ける仕事に就きたいと思い看護師を志望しましたが、右も左もわからない状態で心の中は不安でいっぱいでした。
一通りのオリエンテーションを終え、初めて患者様のベッドサイドにいってみることになりました。教育担当の先輩看護師から、「まずは患者様のベッド周囲の環境整備をやってみよう」と言われました。当時は環境整備なんて単なる掃除、「そういえば看護学生の時に教えてもらったっけ」と懐かしい気持ちになっていました。
ウェットティッシュで机を拭き、ゴミ箱のゴミは空にし、患者様と雑談をしながら「掃除」をしました。後ろで見守ってくださっていた先輩看護師は、特に口をはさむわけでもなくニコニコしていました。病室を出てすぐに言われたことは、畳みかけるように「なぜ?」という質問でした。
なぜ、机の上にあるリモコンを右側に置いたのか。
なぜ、午前中にも関わらずカーテンを閉めたままなのか。
なぜ、お声がけの際にそんなに大きな声を出したのか。
もっとたくさんの質問をされたと思いますが、圧倒されてしまい何も答えることができませんでした。ご指導いただいた内容は、環境整備は単なる掃除ではなく、患者様にとって少しでも快適に過ごせるようにすることである、ということでした。
この経験から、自分自身の行動が患者様の治療をサポートするのか、障害となってしまうのか、ひとつひとつ意識するようになりました。環境整備はなぜこんなにも大切なのか、看護の母ナイチンゲールが現代の看護師に残してくれたことを次にご紹介します。
2. 看護の母ナイチンゲールが教えた環境整備
看護の母と呼ばれているフローレンス・ナイチンゲールは、19世紀にイギリスで医療・看護制度の大改革を行いました。徹底した衛生管理によって、戦地にある病院の衛生環境を整え死亡率を大幅に低下させるなど、たくさんの功績を残しています。他にも『看護覚え書』などを執筆したり、統計学を活用して医療改革の必要性を証明したり、世界初の看護学校設立や看護教育に関わったりと、その業績は多岐にわたります。今回は、ナイチンゲールがわたしたち看護師に残した数ある業績の中から「環境整備」についてお伝えします。
ナイチンゲールは、看護とは「患者が生命力を十分に発揮できるよう、最良の環境を整えること」と定義しました。特に重視した環境、5点は下記のとおりです。
①空気 新鮮な空気を病室に入れ、淀みをなくす
②明るさ 明るい光を当て、日光浴や外の景色を届ける
③音 無駄な騒音や物音を立てない
④におい 療養環境が清潔か、患者の体は清潔か
⑤暖かさ 適切な温度・湿度で過ごす
現在、日本の病院のほとんどは、このような環境が整っている状態です。しかし、病院にいる患者様は何かしらの事情がある方がほとんどです。例えば、ご自身でカーテンの開閉やリモコンを持てない方もいらっしゃいます。このような方は、環境を整えるためには誰かの介助が必要となります。
先述のエピソードで登場した患者様は、治療中のためベッドから離れることができない方でした。そのため、カーテンの開閉に介助が必要でした。左手は自由が利きますが、右手は動かすことが難しいのでリモコンは左側に置かないとテレビを視聴することができません。また、声のトーンも気を付けるべきポイントです。特に大部屋は他の患者様もいらっしゃるので、声の大きさ次第で他の患者様にとって騒音になりえるからです。
患者様が持つ生命力を十分に発揮していただくためには 、最良の環境を整えることが必要となります。環境整備は看護師の業務の中でも、患者様の回復や治療の根底となる大切なことなのです。
3. 住まいにも活用できる「環境整備」
環境整備をすることで人の生命力を十分に発揮できる、ということをナイチンゲールの教えからも現場の患者様からも教えていただきました。この教えは、病室だけでなく自分たちの住まいにも活用できるのではないでしょうか。先述の5点を参考にして具体的に考えてみたいと思います。
①空気
住まいの中の空気を効率よく入れ替えるためには、1時間に5~10分程度窓を開けるのが基本です。さらに部屋の対角線にある2か所の窓を開けることで空気の通り道ができるため、すばやく空気を入れ替えることができます。
②明るさ
日光を住まいに入れることで、住まいも生き物も健康になります。いくら照明で明るいからと言っても、自然光には到底及びません。カーテンやブラインドは、日中は開けて夜間は閉めるようにしましょう。
③音
心と体をリラックスさせるためには、賑やかな音ではなく静かな場所がよいです。
生活音や環境音など音と言っても様々あります。外部からの騒音は、窓やドアを工夫し、家具の配置を変えてみるなどをしてみましょう。
④におい
住まいで発生する嫌なにおいの原因は、雑菌の繁殖が主な原因と考えられています。例えば、生ごみや排水口、人間の皮脂や蓄積したカビが挙げられます。雑菌はさまざまな病気を引き起こす場合もあるため対策は必須です。におい対策の基本は、こまめな換気と掃除です。においが強い場所は念入りに手入れするのをお勧めします。
⑤暖かさ
日本は季節があり気温・湿度が時期によって大きく変動します。住まい環境においては、適切な温度・湿度に調整することで快適に過ごすことができます。必要時、空気清浄機や加湿器、エアコンなどを利用して調整します。夏は室温25~28℃、湿度50~60%、冬は室温18~22℃、湿度40~50%が目安です。
4. まとめ
このコラムでは
✓ 掃除と環境整備の違い
✓ ナイチンゲールが教えた環境整備
✓ 住まいにも活用できる環境整備
についてお伝えしました。
ナイチンゲールが教えた環境整備が、心身ともに健康に影響するということがわかりました。住まいの環境を整えることは治療に限らず、より健康に向かうためにも大切です。また、自宅療養している方、介護をしている方にも有用です。心身の健康を整えるために、ご参考くださると幸いです。
またこのコラムは、「健康と住まい」シリーズの総集編のようなものになります。他のコラムも併せて読んでいただけますと、より詳細をお伝えできるかと思います。みなさんの住まい環境を見直すきっかけになれば嬉しいです。ここまでご精読くださり、ありがとうございました。
<参考>
・福井医療大学リポジトリ 当院の環境整備の実際~病棟看護師の環境整備に対する意識調査から~
・ナイチンゲール看護研究所
この記事を書いた人
冨永美紀
母親の入院で関わった看護師に心を打たれ、看護師資格を取得。
看護師の現場で、臨場の場に立ち会うことで『生死』について興味が沸く。
恩師の紹介でお寺とのご縁が結ばれ、2020年から密教塾生となり修行の世界へ。
現在は仕事と修行を両立するため岐阜県へ移住し、夫と犬2匹と自然豊かな場所で暮らす。
<経歴>
看護師歴10年
・腎臓内科、糖尿病内科、内分泌科病棟
・救急救命センター
・自由診療のクリニック
・コールセンター
・訪問看護ステーション
・家事代行業