全身性強皮症は免疫の異常により皮膚や血管、内臓が硬くなる膠原病のひとつです。日本では約2.7万人の患者がいますが、その9割が女性であり30~50代に発症しやすい病気です。
アーティストであり作家のさかもと未明さんは全身性強皮症であることを公表し、病気との向き合い方、日常生活の工夫などを漫画にしています。実際、私自身も40代の強皮症の患者様の支援を通じて日常生活の工夫がいかに症状を和らげるかを知りました。
そこで今回は患者ごとに異なる多様な症状と日常生活における注意点をお伝えします。
全身性強皮症と向き合う方々のお力になれば幸いです。
この記事の目次
1.全身性強皮症の多様な症状について
全身性強皮症は全身性硬化症とも呼ばれており、皮膚や内臓が線維化し硬くなる病気です。多くの場合、手指が冷えて白や紫色に変化するレイノー現象を初期症状とすることが多く、その他に手指のむくみ、こわばり、皮膚のつっぱり感、関節痛を伴います。
皮膚の症状は『浮腫期』『硬化期』『委縮期』の3期にわけられます。
下記の表で進行の経過を確認しましょう
委縮期後は、皮膚硬化がゆっくり進む『限局性皮膚硬化型』と病状が数年で急速に広がり、ピークを過ぎた後は皮膚の硬化が改善していく『びまん皮膚硬化型』に分かれます。
進行すると皮膚の硬化が手指から腕、体幹へと広がり、肺や心臓、腎臓などの内臓が硬くなり重大な合併症につながるため、発症初期から数年間は定期的な受診を行い慎重に経過を見ていくことが重要です。
病気の程度や進行は患者によって大きく異なります。
将来どのような経過をたどるかを正確に判断することは難しいですが、自己抗体の種類によって進行の度合いが異なるため検査の結果に基づき、おおよその経過を予測することは可能です。検査結果を受け止めどう向き合っていけばよいのか、次にお伝えします。
2.全身性強皮症との向き合い方
全身性強皮症の発症年齢は30~50代の女性です。働き盛りであり、子育てに忙しい中で病気と向き合うことは非常に受け入れがたく、覚悟がいることだと思います。
実際にさかもと未明さんは、現実を受け止めて病気と上手く付き合うマインドに切り替えたと自身が執筆したWeb連載漫画で語っています。そして以下の点を意識するように伝えています。
病気を告知された後は、誰もが生活費、育児や仕事をどうしていくかを考えると思います。全身性強皮症は長い治療期間を必要としますが、指定難病に認定されているため公的な医療費助成制度や給付金が活用できます。
日常生活や制度については役所の福祉課や障害福祉課、または病院の医療相談室に相談すると、利用できる具体的な手当てや減免制度を案内してもらえます。
職場の上司や家族にも病気のことや治療の必要性を伝えておくと、業務量の調整や体調への配慮など協力体制が整いやすくなります。
全身性強皮症を宣告されたとき、多くの人は戸惑い、先の見えない不安や恐怖、絶望感に襲われます。このような時は一人で抱え込まずに経験や悩みを共有できる人とつながることが大切です。SNS、コミュニティ、家族会や支援団体など日常生活の工夫を伝え合い、病状を共有することで孤独を防ぎ前向きに治療を行うことができます。
強皮症の患者や家族、支援者がLINEを使って参加できるオンラインの交流、相談の場があります。
それが「強皮症患者さんのピア相談室」です。
この場には100名以上の患者やご家族が参加し、毎日たくさんの投稿がされています。
そして今度は情報を受け取る側から、発信する側へとシフトチェンジすることを是非お勧めします。自分の経験や工夫を伝えてサポート側に回ると誰かの役に立てているという自信が生まれ、前進している感覚が得られると思います。自身の体験は同じ悩みを持つ人が受け取り、必ず力になります。
「強皮症患者さんのピア相談室」の詳細は以下の情報サイトに記載していますのでご参照ください。
『ほっと強皮症』https://x.gd/Wk8o9
強皮症の患者の情報共有で最も多い注意点が『寒冷刺激』と『精神的な緊張を避ける』ということです。
この二つを避けるために日常生活でできる工夫を次にお伝えします。
3.強皮症の症状を緩和する日常生活での工夫
強皮症の日常生活では、冷たいものに触れることやストレスで緊張すると血行障害を引き起こし、レイノー現象が出現します。血流が低下すると指先に潰瘍ができやすく傷も治りにくいため、徹底した保温と防寒対策が必要になります。
外出する際や夏場の冷房の効いた部屋でも手袋やカイロを使用して体を冷やさないようにする工夫が必要です。冷蔵庫から食べ物を取り出す際も油断せずに手袋を使用しましょう。
睡眠不足や疲労の蓄積は強皮症の症状の悪化につながるため、体を休める工夫が必要です。
○睡眠時は低反発マットを使用し体圧を分散すると関節の痛みが和らぎます。また、抱き枕を使用すると横向きの姿勢で寝た際に関節の負担が軽減できます。
〇寝る前に38~40度のぬるめのお湯に浸かると体の芯から温まり、安眠につながります。
とはいえ、育児をしている方は休みたいときに休めないということもあると思います。体力を温存するために家事の負担を軽くする工夫をお伝えします。
〇買い物はネットスーパーや生協を利用すると便利です。冷凍野菜は生の野菜とそれほど栄養価に差はありません。上手く活用しましょう。
〇部屋が散らかっていても命にかかわることはありません。掃除は体調の良い日に行うようにしましょう。リビングはお掃除ロボットに任せて食器洗い洗浄機をフル活用します。お風呂はスプレーして流すタイプの洗剤を使うなど工夫をしましょう。
〇完璧に子育てをする必要はありません。どうしてもつらい時は子どもに動画を見せたりおもちゃを与えたり少しでも横になれる工夫を見つけましょう。
〇つらい時は夫や両親につらいので休みたいと素直に伝えることが大切です。地域の訪問家事、育児支援サービスを使用するという手段もあります。
〇軽いストレッチを毎日行うと皮膚や関節の硬化予防になります。手指も曲げ伸しや口を大きく開けて「あ・い・う・え・お」と無理のない範囲で手指や顔を動かしていくことが大切です。
全身性強皮症は「強皮」と書きますが決して皮膚が強くなる病気ではありません。皮膚も体も優しく労わるように毎日のケアを習慣にしましょう。
まとめ
全身性強皮症は女性のライフスタイルの中で最も活動的な時期に多い病気です。そのため、多くの人が病気を宣告された際に先の見えない不安や恐怖に襲われると思います。
すぐに現実を受け止め、病気と付き合うマインドに切り替えるのは難しいかもしれませんが決して一人で抱え込まずに悩みを共有できる仲間、支援者とつながることが大切です。
治療と日常生活での工夫、さらに仲間の力があればきっと少しずつ、病気と向き合うマインドに切り替わり前向きに病気と向き合うことができると思います。
<参考書籍 URL>
系統看護学講座『専門分野Ⅱアレルギー膠原病感染症』医学書院
『肺線維症に関する総合情報サイト』https://x.gd/FWvLr
『ヨミドクター』https://x.gd/GGeGT
『自己免疫疾患プラス』https://x.gd/eEnn4
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」
動画配信YouTube「看護師mikakoの更年期チャンネル」