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薬が増えすぎていませんか?シニア世代に多いポリファーマシーとは

「あなたのくすり いくつ飲んでいますか」

このような言葉が書かれたポスターを、薬局で目にしたことがありませんか。

年齢を重ねると、体の変化や病気の影響で薬を飲む機会は少しずつ増えていきます。それ自体は自然なことです。しかし、気が付かないうちに薬が増えすぎて、かえって体に負担をかけてしまうことがあります。

この記事では、薬が増えていく理由について、お伝えします。

この記事の目次

1. 気づいたら薬が増えていませんか

「薬が増えたな」と感じたことはありませんか。

・病院に行くたびに薬が増えている

・朝・昼・夕と何種類も飲んでいる

・薬の袋やシートが増えて管理が大変になっている

・いつから飲んでいるのか分からない薬がある

こうした状況は珍しいことではありません。最初は血圧の薬だけだったのに、血糖値の薬が追加され、さらにコレステロールの薬、骨粗しょう症の薬と増えていく。気づけば毎食後にいくつも薬を飲むようになっている。このようなことは多くの方に起きています。

実際に、高齢になるほど服用している薬の数は増える傾向があります。調査では、75歳以上では、約4人に1人が7種類以上、約4割が5種類以上の薬を飲んでいるといわれています。

年齢とともに体の変化に合わせて、薬が増えていくのは自然な流れです。また、眠れない、便秘がある、腰や膝が痛いといった日常のちょっとした不調も薬が追加されることにつながることもあります。「最近眠りが浅い」と相談すれば睡眠薬が処方され、「便が出にくい」と伝えれば整腸剤や下剤が追加される、といった具合です。このように一つひとつは必要な薬でも、知らず知らずのうちに薬の数が増えていきます。

ここで一度考えていただきたいことは、「今の自分の体に、この薬の量や組み合わせが合っているか」という視点です。 

2. ポリファーマシーとは?薬が多くなることで起こる問題

ポリファーマシーという言葉を聞いたことはありますか。

ポリファーマシーとは、薬の数が多すぎることで、体への負担やさまざまな問題が出ている状態のことをいいます。

ここで大切なことは、「薬の数が多いこと」そのものではありません。問題なのは、薬が多いことで副作用が起きやすくなったり、飲み間違いが増えたり、きちんと飲めなくなったりするといった状態です。

なお、「何種類以上ならポリファーマシーか」という明確な決まりはありません。その人の病気や生活の状況によって、必要な薬の数は違うからです。ただし、一般的には6種類以上になると注意が必要になるというデータもあります。

一方で、病気の治療のために6種類以上の薬が必要な場合もありますし、3種類でも体に合わず問題が起きることもあります。そのため大切なのは、薬の数だけを見るのではなく、本当に必要な薬か、重複していないか、飲み合わせに問題がないかといった中身を見ていくことです。薬を安全に使うためには、数だけで判断するのではなく、その人に合った処方になっているかを確認していくことが大切です。

また、薬が多くなると薬同士が影響し合うこともあります。同じような働きの薬が重なって効きすぎたり、飲み合わせによって作用が強く出たりすることがあります。痛み止めと別の薬が重なることで胃に負担がかかりやすくなる、あるいは複数の薬の影響で強い眠気が出てしまう、といったことです。

さらに、年齢とともに体の働きも変わります。肝臓の働きがゆるやかになり薬の分解が遅くなったり、腎臓の働きが低下して薬が体に残りやすくなったりします。その結果、以前と同じ量の薬でも効きすぎてしまうことがあります。「以前は問題なかった薬なのに、最近になって合わなくなった気がする」という変化は、こうした体の変化と関係していることがあります。 

3. 大切なことは「減らすこと」ではなく「見直すこと」

薬が増えていく背景には理由があります。

一つは、複数の病院や診療科を受診することです。内科で血圧の薬、整形外科で痛み止め、さらに別のクリニックで睡眠薬をもらう、といったように、それぞれの医師が必要と判断して処方されます。一つひとつは適切な処方であっても、全体として見ると薬の数が増えてしまうことがあります。特に、他の薬の内容が十分に共有されていないと、同じような薬が重なってしまうこともあります。

もう一つは、薬をきっかけに薬が増えていくケースです。たとえば、血圧の薬を飲んでふらつきが出たとします。そのふらつきを抑えるために別の薬が追加されると、眠気が出るようになり、その眠気に対してまた別の対応が必要になる、というように、薬が増えていくことがあります。もともとは薬の影響で起きた変化でも、別の症状として扱われることで、薬の数が増えてしまうのです。こうした変化は自分では気づきにくく、「なんとなく体調が悪い」「年齢のせいかも」と思って、そのままにしてしまうことも少なくありません。

ここで大切なのは、薬は減らした方がよいということではありません。必要な薬はきちんと続けることが大前提です。その上で、「今の自分の体に合っているか」という視点で見直すことが重要になります。

・いつから続いているのか分からない薬

・効果を実感できていない薬

・症状が改善しているのに続けている薬

このような薬がないかを確認してみることが大切です。 

4. 今日からできる見直しの第一歩

薬を見直す第一歩として、まずは自分の薬を知ることから始めましょう。

お薬手帳を見ながら、次の3つを確認してみてください。

①この薬は何のために飲んでいるのか

②いつから続いているのか

③今も必要な薬か

「なんとなく飲んでいる薬」があるかどうかを見るだけでも十分です。

また、診察のときに「最近ふらつきがある」「眠気が強い」「食欲が落ちた」など、薬との関係が気になっている症状を伝えることも大切です。こうした情報があると、医師や薬剤師は薬の影響を含めて判断しやすくなります。

薬は体を整えるための大切なものですが、その使い方によっては負担になることもあります。だからこそ、「減らすかどうか」ではなく、「今の自分の体に合っているか」という視点で見直していくことが大切です。

5. まとめ

・薬は年齢や体の変化に加えて、複数の病院や診療科にかかることで、気づかないうちに少しずつ増えていくことがあります。

・薬が増えると、副作用や体調の変化が起きやすくなります。

・大切なことは、薬の数だけで判断するのではなく、必要な薬を続けながら「今の自分の体に合っているか」を見直すことです。

この記事を書いた人

看護師:山田かおり 経歴〉 看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務) 看護教員養成研修 修了  認定看護師教育課程(認知症看護) 修了  医療安全管理者養成研修 修了  認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了 〈講座〉  認知症ケアに関する講座 多数  未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

ヤマダ カオリ

〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。

復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。

〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了

〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

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