女性が自分のからだに起きた女性特有の症状を周りの人に相談することは、ハードルが高くありませんか。
また、どのような検査をされるのかわからなくて、病院に受診することも二の足を踏んでしまいがちです。
この記事は、女性が婦人科系の症状を自分でチェックすることで、早めに専門家の診断や治療を受ける手助けとなればと考え、書き始めました。
第1回目は、気になる症状としてよく聞かれる「不正出血」をとりあげました。
不正出血は単なる生理の不調だけはなく、健康上のサインや深刻な病気の前触れとして現れることがあります。
自分自身の、女性の健康を守るために、不正出血に関する知識を深めてみませんか。
この記事の目次
1. 不正出血とは?
不正出血とは、ホルモンの異常や様々な病気により月経期間以外に性器から出血することで、正式には「不正性器出血」といいます(公益社団法人 日本産科婦人科学会より)。
ここでは聞き慣れている「不正出血」のまま説明していきたいと思います。
性器とは、子宮、卵巣、卵管、膣、外陰部のことです。
これらのいずれかから出血することを不正出血といいます。
不正出血と月経との違いは、量やにおいなどによって見分けることはできません。
月経期間以外に起きた出血はすべて不正出血となります。
そのため、月経期間以外に出血が見られた場合は、何らかの異常と考えて病院を受診するようにしましょう。
また、月経期間以外にという意味は、月経がある女性だけに関係するものではありません。
女性であれば、幼児期から老年期までのいずれのライフステージであっても起こり得るものなのです。
2. 不正出血が起こる原因は?
不正出血の中で多く見られる原因は、女性ホルモンの変動です。
心身のストレスや生活環境の変化、体重の増減などによって女性ホルモンは変動しやすく、それらが原因で月経不順や不正出血を起こします。
そして、女性ホルモンの分泌調整が未熟な若い女性やホルモンの分泌が不安定になる閉経前の女性は、不正出血が起こりやすいといわれています。
ライフステージの時期 | 不正出血の原因 |
幼児期 (1~7歳ころ) | 大腸菌などの感染、外傷、思春期早発など |
思春期 (8~18歳ころ) | 無排卵性出血、出血性素因 |
性成熟期 (18~40歳前半ころ) | 妊娠、無排卵性出血、子宮頚管ポリープ、子宮筋腫、子宮頸がん・体がん、 性行為感染症、経口避妊薬、卵巣出血等 |
更年期 (45~55歳ころ) | 無排卵性出血、子宮筋腫、子宮頸がん・体がん、子宮頚管ポリープなど |
老年期 (65歳以上) | 萎縮性膣炎、子宮体がん、外陰がんなど |
系統看護学口座 専門分野Ⅱ成人看護学[9]女性生殖器 医学書院2023年を参考に作成
その他、心臓や脳の病気で抗血小板薬を服用している方は、この薬の服用によって不正出血が起こることもあります。そのため病院受診した際は、おくすり手帳を見せて自分が服用している薬について伝えましょう。
3. 不正出血を自分でチェックする方法
病院を受診すると、必ず問診でからだの状態を確認されます。
一般的によく聞かれる質問として、次の通りです。
これらの質問をもとに、自分でチェックしてみましょう。
①不正出血の症状や状況 | ・いつ出血が起きたのか ・出血の量はどれくらいか ・出血の持続期間はどのくらいか ・どのような時に出血したのか |
②産婦人科の病気や検診の経験 | ・子宮や卵巣の病気をしたことがあるか ・子宮や卵巣の病気で手術をしたことがあるか ・性感染症に罹ったことはあるか ・子宮頚がんや体がんの検診は受けたことがあるか |
③月経歴や妊娠歴、出産歴 | ・初経の年齢はいつか ・月経周期は何日か ・最近の月経は何月何に日から何日間あったか ・月経の持続日数は何日か ・月経痛の程度はどうか ・妊娠の回数、出産の回数は何回か |
④産婦人科以外の病気やけがの経験 | ・以前または現在、治療した(している)病気やけがはあるか ・薬は服用しているか。どのような薬か ・経口避妊薬を服用しているか ・アレルギーはあるか |
⑤生活習慣や家族歴 | ・喫煙をどの程度するか ・飲酒をどの程度するか ・食事は規則的か ・ストレスがあるか ・家族に出血しやすい病気を持つ人はいるか |
系統看護学口座 専門分野Ⅱ成人看護学[9]女性生殖器 医学書院2023年を参考に作成
1) カレンダーをつけてみる
不正出血の時期、月経歴を説明するために、カレンダーをつけてみてはいかがでしょうか。
カレンダーをつけるポイント
- 出血がいつから始まったのか
- どのくらい続いているのか
- 出血の頻度
最近は、月経管理のできるスマートフォンのアプリもたくさんあります。
また、月経周期や症状などのデータを医師が診察時に閲覧できるアプリもあるようです。
うまく体調を説明できないという不安も軽くなりますね。
2) 出血の色や量をチェック
不正出血は必ずしも月経のような真っ赤な出血とは限りません。
おりものに血が混じる、薄ピンク色っぽい出血、黄色っぽい出血、茶色っぽい出血と様々です。
出血の色が様々な理由は、排卵、病気や炎症による特徴的な色(例えば膣や子宮の炎症や子宮がんではピンクや茶褐色の出血)であったり、からだの外に血液が出ていくまでにどのくらい時間がかかっているかによって異なったりするからです。
不正出血の観察ポイント
- 出血の量は通常の月経と比較して多いか少ないか
- 下着に少しつく程度なのか
- 月経に例えると何日目くらいの量なのか
- ナプキンやタンポンは何時間おきに交換が必要なのか
- レバーのようなかたまりが出るのか
- さらさらしているのか
3) 不正出血に伴う痛みや不快感をチェック
もしかすると、出血だけではなく、一緒に何か症状があるかもしれません。
- 痛みがある場合は、その部位(腹部、下腹部、腰、頭など)、どのような痛みか(チクチク、キリキリ、締めつけられる、激しい、重い感じなど)、どのような時に痛いか(空腹時、排泄時など)
- かゆみ、お腹の張り、だるさ、吐き気、めまい、便秘や下痢、頻尿など
4) 健康状態の変化や生活習慣の影響をチェック
過度な出血が続くと、貧血や体力の低下を引き起こします。
その他、人間関係の悩み、睡眠不足、ダイエットなど、女性ホルモンのバランスに影響を与える生活習慣のストレスも不正出血につながる可能性があります。
4. 婦人科系の検査をスムーズに受けるコツ
不正出血はからだの内側のどの部分から出ているものなのか、自分では判断することが難しいものです。
医師の診察で初めて、どこからの出血なのか、病気が原因なのか、女性ホルモンのバランスの変調が原因なのか、その他に原因があるのか、わかります。
基本的には、出血が見られたら病院へ受診することをお勧めします。
病院では、問診をすませると診察やいくつかの検査が行われます。
例えば、腹部の診察、超音波検査やMRIなどの画像検査、血液検査、内診です。
これらの検査の中で、医師が直接膣や子宮頸部を診察する内診は精神的にも身体的にもハードルが高いものですね。
1) 内診をリラックスして乗り切る方法
内診は自分では見えない位置で行われるため、どのような検査をするのか分からなくて不安を感じたり、痛い、怖いというイメージを持っていたりする方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私自身、子宮内膜症と子宮筋腫を抱えています。
どのような検査を行っていくのかを知ると心の準備につながった経験があるため、内診の検査について書いてみました。
①視診 | 外陰部に傷、湿疹、ただれ、腫れ、できもの、腫瘍など目に見える範囲で不正出血の原因になることをはないかを調べます。 |
②触診 | 膣の中を指で触診します。同時にお腹を上から押さえて子宮や卵巣の晴、抑えたときに痛みがないかなどを調べます。 |
③膣鏡診 | 膣鏡という検診器具を、ちつないに挿入し膣壁を広げて内部まで視診を行います。 膣内やおりものなどに異常がないかを確認できます。 器具を挿入することが患者の負担にならないよう、年齢や状態などに合わせて膣鏡のサイズを変えることもあります。 |
④膣分泌物採取・細胞診 | 膣内の織物を採取して、ウイルスや細菌などの有無を調べます。 子宮頚部や子宮内膜の細胞を採取して異常がないか調べます。 採取にはヘラや綿棒、ブラシなどを用います。 |
⑤経膣超音波検査 (経腟エコー検査) | 膣内に超音波機器(プローブ)を挿入し、超音波によって子宮や卵巣の様子を映像化します。 これにより、腫れや膣瘍病変の有無等を調べることができます。 |
系統看護学口座 専門分野Ⅱ成人看護学[9]女性生殖器 医学書院2023年を参考に作成
何回も内診を経験する中で、痛みができるだけ少なく、スムーズに検査を受けるための準備を紹介したいと思います。
- (1) 診察を受けやすい服装で受診する
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内診の時は、下着を脱いだ状態で内診台に座ります。個室になっているため、ズボンでもよいのでしょうが、脱ぎ着に時間がかかって焦ってしまうとリラックスできません。
下着を脱げば、そのまま内診台に座れるように、スカートがおすすめです。また、スカートでは腰まであるストッキングを履くことが多いかもしれません。しかし、ズボンと同じように脱ぎ着に時間がかかってしまうため、膝下のストッキングや靴下をおすすめします。
余談ですが、おなかの超音波検査をする可能性を考えるとワンピースよりは上下が別々の服の方が、血液検査をする可能性を考えると袖をまくりやすい上着の方が、よいかと思います。
- (2) 内診台にお尻をしっかりつける
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緊張すると足に力が入りお尻が内診台から浮き、お腹に余分な力が入り、痛みを感じやすくなります。お尻をしっかり内診台につけ、からだを内診台に預けると、比較的な全身の力が抜けやすいように感じます。
- (3) 深く息を吐く
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緊張して息を止めていると、痛みを感じやすくなります。内診台に座ったら、ゆっくり深く息を吐くことに気持ちを集中させると、器具の挿入も痛くないように感じます。
- (4) 使用する器具を小さめにしてもらうよう伝えてみる
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内診の検査方法③膣鏡診にも書きましたが、器具はその人の年齢や体格、膣の状態などによって使い分けています。「小さい器具にしてください」と頼んでも大丈夫かなと思っていましたが、勇気をもって伝えてみると案外すんなりと変更してくださいました。
5. まとめ
- 不正出血は、女性ホルモンのバランス変調などの原因によって月経期間以外に性器から出血することをいいます。どの年代でも、不正出血は起こり得ます。
- 自分の不正出血の色や量、性状をチェックすること、月経周期を知ること、生活習慣のストレスの有無を知ることで、産婦人科受診の時の説明に役立ちます。
- 内診の検査は緊張しますが、リラックスして検査にのぞむ方法を知ることで、スムーズに検査が終わると思います。
次回は、女性器特有の痛みについて、お伝えします。
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この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)