ショートステイというサービスをご存知でしょうか?
介護をされていると、介護が中心・優先の生活になりがちですが、ご自身の時間を持ち休息するなどバランスが重要です。
本記事では介護生活の中で一時的に利用できる宿泊サービス、ショートステイについてお伝えしていきます。
この記事の目次
1.ショートステイとは?
①はじめに
最初にお伝えしますが、ショートステイは介護保険を使われていない方が利用できる有料ショートステイがあります。
保険適用外なので全額自己負担(10割負担)となります。
サービスは似ていますが、利用目的や金額など異なることから煩雑になるため、本記事では介護保険適応の方が使えるショートステイに的を絞ってお伝えします。
②どんなところ?
ショートステイとは一時的に宿泊できるサービスのことです。
正式名称を「介護予防短期入所生活介護」といい、自宅で介護サービスを受けている方が対象となります。
30日まで宿泊できます。宿泊中、介護支援である「食事」「入浴」「排泄」介助のサービスが受けられます。
また、リハビリテーションやレクリエーションもあります。
③どんな人が使えるの?
介護区分(要支援1,2,要介護1~5)の認定を受けている必要があります。
要介護1,2・・・という風に数が大きくなる程、より多くの介護が必要な状態です。
また、介護認定と聞くと高齢者が利用するサービスというイメージがあるでしょうか。
介護認定は65歳以上の方が対象ですが、40から64歳の方も対象になります。
40歳から64歳の介護保険受給対象者は特定疾患という病気をお持ちの方となっています。
特定疾病の一例
・がんの終末期や筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・パーキンソン(分類の条件あり)など
16種類の病気のことです。
④何日宿泊できるの?
最大30日まで利用可能となっています。
一番多く利用されている日数は2~3日の利用が41%となっています。
私が訪問看護をしている時も、使用されている方はおられました。
週末の金曜に出発され、月曜に帰宅されるというご利用方法でした。介護をしている方は週末一時的にも介護から離れご自身の時間をゆっくり過ごされていました。
⑤どんな目的で使うの?
利用目的は利用者本人と介護者双方の目的が考えられます。
利用者本人の目的
- 自宅での孤立感からの解消
- 心身機能の維持回復
- 特別養護老人ホームへの入居待ち
- 退院直後の一時的な利用
- 今後施設入所を視野にいれ施設という場所に慣れる為 など
介護者の目的
- 仕事(出張や夜勤などのシフト勤務)や冠婚葬祭などで介護が一時的にできない
- 家族の介護疲れ など
令和2年度の厚生省「短期入所生活介護」では、
- 家族介護者の負担が軽減された:94%
- 家族介護者が介護と仕事や家庭を両立しやすくなった:84.1%
とかなり負担が改善されていることがわかります。
2. 何日くらい泊まれるの?
①利用条件その1:介護認定期間による条件
「介護認定期間の半数を超えてはいけない」という条件があります。
介護認定期間とは介護認定を受けたあと、適切に介護サービスが受けられるよう更新期間が設けられています
例えば半年後に加齢やご病気で今より介護が必要になっても、同じ介護度では適切なサービスを受けられているとは言えないでしょう。
保険者(市町村)によって多少異なりますが、一般的には新規申請・区分変更申請時は6ヶ月、更新申請で12ヶ月となっています。
②利用条件その2:連続して利用する場合の日数条件
連続して利用する場合30日以上続けての利用は原則不可となります。
これは別のショートステイに連続して入所しても同じ連続日数に数えられます。
何らかの理由で30日以上利用の場合は、1回ご自宅に帰宅し、1日以上過ごしてから利用となります。しかし、やむをえない事情の場合、30日超えての利用が可能となります。
一番多い理由は、「特別養護老人ホーム入所までの待機」、他「介護家族が退院するまでの居場所として」となっています。その場合はケアマネージャーにまず相談となります。
そして必要書類をケアマネージャーが作成し自治体へ提出となります。
③その他の条件:認定区分による日数規定
介護区分が要支援1〜2、要介護1〜5の方でショートステイの利用日数は異なります。
これは介護度により使える単位数が異なるからです。
様々な介護サービス(訪問看護や訪問介護、デイサービスなど通所サービス、車椅子などの福祉用具のレンタル)も全てこの点数の範囲内となります。
以下に介護度別の単位数とショートステイだけを利用する場合(実際にはほぼないことですが)の利用日数の目安を紹介いたします。
下記の表にあるように、誰でも最大30日使用できるわけではありません。
何日利用できるかは、ケアプランを作成しているケアマネージャーへご確認ください。
| 単位数 | ショートステイ利用日数の目安 |
要支援1 | 5,032 | 6日 |
要支援2 | 10,531 | 11日 |
要介護1 | 16,765 | 17日 |
要介護2 | 19,705 | 20日 |
要介護3 | 27,048 | 28日 |
要介護4 | 30,938 | 30日 |
要介護5 | 36,217 | 30日 |
※ショートステイの1日の単位数を1,000単位で計算しています。実際は大部屋か個室か、認知症加算、療養食(通常の食事ではなく病状に合わせた特別)など様々な加算があります。
※引用1
3.費用はどれくらい?
実際に利用するにあたり、「費用はどのくらい?」と気になると思います。かなり細かく決まっていますので、おおまかな相場と内訳の種類をお伝えします。
相場は1日およそ3,000円〜8,000円となっています。
少し差がありますが、認定を受けている介護度や利用するショートステイの形態で変わってきます。
内訳はどうなっているのでしょう?費用は「基本料金」+「サービス加算料金」+「自費負担」の3段構造となっています。
では1つ1つ見ていきましょう。
①基本料金
基本料金は介護区分と利用するショートステイが単独か併設か、従来型かユニットか、部屋のタイプ等で異なります。
通常介護区分が大きくなる・従来型よりユニット型・多床室(大部屋)より個室が高くなります。
- 【施設形態】
-
併設型:特別養護老人ホームなど他大型施設に併設されているショートステイ
単独型 :ショートステイ専門施設
- 【設備】
-
従来型:病院のように廊下を挟んで部屋が並んでいる。同じホールに食堂やレクリエーションの部屋が併設されている。大勢の入居者を複数のスタッフが介護する。
ユニット型:1ユニットに1入居者が10人程度となり、専属のスタッフが介護する。
- 【部屋のタイプ】
-
多床室:2〜6名の大部屋
個室:利用者1人に対して1つのお部屋
このような種類があります。そして、併設型より単独型、従来型よりユニット型、多床室より個室のほうが料金は高くなります。例えば、要介護1の方が従来型多床室を利用されると1日約600円です。
要介護5の方がユニット型個室を利用すると1日約1,000円です(どちらも1割負担の場合)
②加算
かなり多く種類があるので、代表的な加算サービスをいくつかお伝えします。
送迎加算 | 片道184単位 |
機能訓練加算 (リハビリ) | 片道184単位 |
医療連携強化加算 (呼吸器や吸引必要など重症の利用者を受け入れる体制があること) | 58単位 |
療養食加算 | 1回8単位3回限度 |
認知症行動 心理症状緊急対応加算 | 1日2000単位、7日限度 |
利用者や職員の配置人数によっても異なる加算があります。
※1単位=約10円。1割負担の方は、例えば送迎往復368単位で約3,680円です。
その1割なので約368円かかります。
4.自己負担
こちらは自己負担金額なので、介護保険の負担割合は適応されません。
- 滞在費:ホテルの宿泊費に当たる部分。1泊2日なら2日分必要。施設により異なり2,000~5,000円程
- 食費:1食600円〜800円程
- オムツ代:施設利用料金に含まれているところもある
他レクリエーションにかかった費用や理容サービスを使われた場合その費用が発生することがあります。
以上①②③の合計金額となります。
5.費用補助
1個1個の単位は少ないかもしれませんが、積み重なると費用面が気になる方もおられるでしょう。
少しでも費用を抑え使いやすくするため、代表的な費用補助を3つご紹介します。
- a. 特定入所者介護サービス費
-
条件は介護保険をうけている事、そして住民非課税もしくは生活保護を受給し、貯蓄が一定金額以下の方が対象となります。1日の負担限度額は介護区分や利用するショートステイの施設・部屋により異なりますが、1日あたり1,000~2,500円程軽減されます。
- b.高額介護サービス費
-
1ヶ月に支払った利用者の負担金額が限度額を超えたときは払い戻される制度です。
一般的な負担限度額は月44,000円となっています。
- c.社会福祉法人等による低所得者に対する利用者負担軽減制度
-
低所得で特に生計が困難である方について、介護保険サービスの利用促進を図るために、介護保険サービスの提供を行う社会福祉法人等が、その社会的な役割の一環として、利用者負担額を軽減するものです。対象となるサービス(例えばデイサービス、ショートステイ、夜間対応型訪問介護など)を受けており、資産や年間収入の限度が決まっている方が対象となります。
4.まとめ
冒頭でもお伝えしましたが、ショートステイを利用することで、介護する方の負担が8~9割軽減されています。
家族や友人と旅行のために一時利用をするという方もおられます。
しかし、仕事が理由だと仕方ないと思われても、旅行や冠婚葬祭が理由だと罪悪感を感じられるようです。
介護は長期にわたることがあります。
介護の平均年数は平均5年1ヶ月、4年を超えて介護した人は約5割になります。
介護と仕事や家庭など介護者の人生のバランスを取るためにも、こういったサービスのご利用は1つの方法だと思い、紹介させていただきました。次回は有料老人ホームについてお話させていただきます。
・参照1:社保審-介護給付費分科会・短期入所生活介護「厚生労働省」/令和2年7月20日
・参照2:介護給付費実態統計/厚生労働省
・参照3:介護報酬の算定構造「厚生労働省」/令和3年度
・引用1:介護報酬一覧「厚生労働省」/令和3年改定
・引用2:生命保険に関する全国実態調査「生命保険文化センター」/令和3年年度
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この記事を書いた人
山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」