適応障害は、ストレスが原因で心と体に不調をきたす病気です。適応障害と診断された場合でも、就労は可能です。しかし、支障をきたすほどの症状がある場合は働き方を変えるほかに、一定期間休むという方法もあります。今回の記事では、適応障害で休職や復職のポイントについてご紹介していきます。
この記事の目次
1.休職するときのポイント
適応障害の症状は、心と体のどちらかでなく両方に現れることが多いです。
症状によっては、仕事の量や勤務時間を調整することで就労可能な場合もあります。
しかし、症状が強いと仕事や日常生活の大きな影響が現れます。
症状が強くなる原因が職場環境によるストレスなら、一時的に仕事から離れる必要があります。
休職をする場合、どのような手続きがあるのか4つのステップで説明していきます。
休職をするときの4つのステップ
①就業規則を確認する
就業規則に休職についての項目があるか確認しましょう。
休職についての記載があれば、参考にできると思います。
ただし、会社は休職についての制度を定める義務はないため、就業規則には休職についての記載はない場合があります。
就業規則に記載がない場合は、上司や人事労務担当者へ確認しましょう。
②診断書の作成
休職には、精神科もしくは心療内科の医師の診断書が必要となります。
現在の健康状態で「就労は可能か」「休職が必要か」「休職するならどのくらいの期間休む必要があるか」など、医師の診察を受け診断書を依頼します。
医師が診断した休職期間内に改善が見られない場合は、新たに診断書の作成を依頼し休職期間を延長することも可能です。
③会社へ休職申請を行う
診断書ができたら、職場の上司や人事労務担当者へ書類を提出します。
直属の上司に提出するのが通常の流れですが、人事労務担当者へ相談しても大丈夫です。
休職に至った経緯などを伝える場合もあります。
事前に、紙面に書き起こしておくと話しやすいかと思います。
④休職届を提出する
休職申請を行い受理されれば、休職に入ることができます。
届け出は上司が管理しているため、記入して提出しましょう。
その際に、診断書に基づいて休職期間について上司と話し合うこともあります。
2.休職中の経済的支援
休職となった場合、休職中の収入源はどうなるか気になりますよね。
適応障害はストレスから離れることが治療とはいえ、生活していくためにはお金は必要です。
休職中に利用できる補償保険制度を利用することで、経済的な支援が受けられます。
①傷病手当金
主に傷病休職中の生活を保障するための制度です。
健康保険に加入している人は、正社員以外でも支給対象になります。
条件を満たせば、給与の一部に相当する金額が最長1年6ヶ月に渡り健康保険から支給されます。
傷病手当金として受け取れる金額は、企業によって異なる場合もありますが
「これまでの給料として受け取っていた金額の約3分の2」とされています。
②自立支援医療(精神通院医療)
自立支援医療とは、通院により内服処方やカウンセリング・認知療法といった医療を受ける必要がある場合に、医療費の自己負担を軽減する公的な制度です。
医療費の自己負担額が3割から1割に軽減されます。
詳しい内容は自治体の障害福祉課や病院の窓口で確認することができます。
③労災者災害補償保険(労災保険)
労災保険は勤務中や通勤でのケガで支給されるというイメージですが、適応障害の場合は職場環境のストレスが原因であることが大半のため、休業補償付という種類での支給が可能です。
詳しい手続きについては、会社の人事労務担当者や労災認定を行う公的期間の労働基準監督署の窓口に相談することができます。
④障害年金
障害や病気によって生活や仕事に支障が出た場合に支給される年金です。
「年金」というと高齢者が受け取るイメージですが、労災を申請し受理された場合、症状の度合いによっては年齢問わず受け取れる場合があります。
3.休職中の過ごし方
休職は治療の一環であり、回復するために心と体を休めるとともに環境整えていく期間とも言えます。
さて、どんな過ごし方があるのでしょうか。
①休養と規則正しい生活を送る
適応障害は、ストレスの原因から離れると回復していく病気です。
まずは、医師の指示のもとに必要な休養を取りましょう。
適応障害にかかりやすい人は、休むことに罪悪感を抱く人も多いです。
回復するためのステップとしてしっかり休養しましょう。
②内服治療やカウンセリングを定期的に受ける
定期的な通院やカウンセリングで体調と思考パターンを整えていくことは今後、社会生活に復帰するために必要です。
受診やカウンセリングでは、気分や体調の変化ついて、可能な限り報告できるようにしましょう。
自身の変化を伝えることで、次のステップに進むためのアドバイスを受けることができます。
また、言葉にすることで、自分自身が回復に向かっていることを認識できるようになります。
4.復職してからのポイント
環境の調整と治療で体調が回復したら、いよいよ社会復帰です。
復職後も環境調整と治療の継続は必要です。
無理のないように、職場の上司や同僚に協力を得ましょう。
①復職後の働き方を相談する
復帰後、もとの業務量をこなすことはストレスの原因となるため、調整が必要です。
給料が下がることを心配して、もとの業務量をこなそうと無理をする人も多いかと思います。
無理な業務は、症状の悪化を招く可能性があります。
経済的な不安がある場合は復職前に、復帰後の経済的サポートについて人事課や市役所へ相談してみましょう。
②疲れた時は休む
職場復帰すると、気を付けていてもストレスは溜まります。
疲労が積み重なっていくと、症状が悪化する可能性もあり体調の変化には十分気を付けま、しょう。
体調の変化があったときは、無理せずに休暇を申し出ましょう。
③困ったときは周囲に相談する
適応障害になりやすい人は、真面目で、1人で頑張る傾向がある人です。
せっかく、休職して体調を整えて復帰してもストレスを抱え込むことで再発してしまう可能性は十分にあります。
困ったときは抱え込まずに周囲の人に協力を依頼しましょう。
④生活の中にリフレッシュ方法を取り入れる
復職後も、安定して働き続けるために規則正しい睡眠や食生活とともに自分に合ったリフレッシュ方法を取り入れて、日々の生活を安定させることが大切です。
充分な休息とストレスの原因から離れる心がけと軽い運動や深呼吸を習慣にするといいでしょう。
そのほか、ご自身の興味のあることや趣味の時間をつくることもリフレッシュの方法としておすすめです。
⑤必要に応じて異動や転職も検討する
復職は、もとの慣れた業務に戻ることが原則ですが、業務や職場環境が休職の大きな原因であれば異動や転職を検討することも選択肢のひとつです。
ただし、今までと違う環境は新しいストレスの原因を作る可能性があります。
異動や転職は、家族や主治医とも相談し慎重に決めていく必要があります。
5.おわりに
適応障害に関わらず、休職することで生活を支える収入が少なくなるため休むことを躊躇する人も多いのではないでしょうか。
症状は、体からのSOSのサインです。
今は抑えることができても、症状が悪化する可能性もあります。
適応障害は、心と体の両方に症状が出てくる病気です。
休職する公的な支援もあるので、本当につらい時は休職という選択肢を選んでもいいのではないでしょうか。
引用参考文献
LITALICO仕事ナビ
①適応障害で休職する際の手続き・給料・過ごし方・復職時の対策を解説
②適応障害になったら仕事はどうする?休職・復職・転職を考えるときのポイントを解説
この記事を書いた人
大竹 加代子
大阪在住。身内の死をきっかけに、よりよい生き方を社会に広めたいと思い看護師となる。
整形外科・外科・脳外科・内科・循環器の急性期病棟を経て、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟へ勤務・現在に至る。
現役看護師として医療に携わる一方、こころの健康が身体の健康に及ぼす影響を実感し、こころと身体の健康を取り扱う看護師Wellnessナースとしてメンタルケア・認知科学の学びをすすめながら、適応障害の人のための電話相談やセミナー開催に向け取り組んでいる。
《経歴》
看護師歴25年
プロコミュニケーター
NLPマスタープラクティショナー
一般社団法人 日本ナースオーブ所属 Wellnessナース
保険外訪問看護 看取り対話師
《執筆》
株式会社 ELAN 様
看護師が解説!高齢者の骨折予防
看護師監修 介護側の食事指導
note 女性の適応障害に適応するブログ
《講座》
Wellnessチャートで賢くやせる/ウェルネス講座